【 豪雨乃刻〜弐 】
『 豪雨再び・・・ 』
「 雨の日の悪夢 」
「綾子、どうしたのよ?」
そう言われ肩を叩かれたのは、学校の事であった。
「えっ!んっ?」
振り向いた先には、親友の美也子が御自慢の眼鏡(何でも特注品でン万円以上したとか…)に、手を描けながら私の方を見ていた。
「ううん…なんでもないよ、ただ…」
「ただ?」
深い溜息…心の奥底にある不安を吐き出すように私は言う。
「雨は…いやだな…そう思ってね」
「ふ〜ん、雨は嫌いなんだ、綾子は…」
今まで私が見ていた外の風景…雨に霞むような風景へと、目を向けている美也子の横顔を見ながら、私は美也子に聞えないような、小さな声で続きを呟く…
「だって…思い出すから…あの日の事を…」
そう…雨の中、家に帰った私を襲った悪夢…汚された肉体と心…母と泣きながら、二人だけの秘密にしておこうと誓った出来事…
忘れようと努力し、忘れたと思っても、雨を見ると記憶が、いや…記憶だけでなく、犯された時の感覚すらが身体の中に蘇ってくる…そんな気がしてしまう。
だから、私はあの時から雨が嫌いになった。
不幸中の幸いと言う皮肉を言えるのなら、母が元・看護士…それも産婦人科の看護士であったというのは、笑い話にでもなるのだろうか?
(だからこそ、母はこの事を二人だけの秘密にする事を主張したと言う…母は知っていたのだ、強姦事件に巻き込まれた被害者の女性が、事件を告発したが故に、どの様な屈辱的な目に会うのかと言う事を…医師による被害者女性の治療と言う名の検査と、それを確認する警官の残酷な質問…治療に立ち会った事がある母、その被害者女性を再び凌辱するような状況を何度も見たという)
ともかく母と話し合った末に、この出来事は全て忘れ(忘れられる筈がないのに…)二人だけの秘密にしておく事にする、乱暴された身体の傷と事後処理は、膣洗浄を含めて母が全てをしてくれた…その他の処方も、母が昔の伝手をたどって、手に入れてきた薬等を使い、全て済ませる事が出来た。
あの日から約三ヶ月…体の傷は、妊娠等と言う最悪の結果を迎える事もなく、順調に癒えて行っている、だが心に付けられた傷痕は、いまだに癒える事無く私の心を蝕んでいた…多分、それは母も同じであろうと思う。
ちなみに父は、当然の事ながらこの事実を何も知らないでいる…
だから、あの日を思い起こさせる雨は嫌いだった。
そして、その嫌いな雨は放課後までやむ事はなかった…
「 悪夢再び… 」
雨で煙るような道を家路へと急ぐ、早く家に帰り着きたい…足早に家へと向かう私の前に車が停まる。
ビクッ!と身体が反応し、車から離れようとした時に、スモークガラスの窓が開き、男が顔を出す…忘れたくても忘れる事が出来ない男の顔、あの時に私を犯した男の顔であった。その場から逃げ出したいのに、身体が強張り動けなくなる、そんな私に対して車の中から男は言った。
「話があるんだ…車に乗ってくれないか?」
そう言って男は写真を取り出し、私に見せる…見せられた写真は、目の前の男に犯されている女性の姿が写し出されていた。
もしも、その写真に写し出されていたのが自分だったら、その場から悲鳴をあげて逃げ出し、今度こそ警察に駆け込んで全てを話したかも知れない…だが、その写真に映し出されていたのは母の姿であった。
母は、自分に起こった事は何も語らなかった…ただ、私に対して…
『ごめんね…彼方を守ってあげられなくて…本当にごめんなさいね…』
その言葉を繰り返し、私を受け止めながら、傷付いた私を必死になり癒してくれようと、今も気を使い続けている、その母が写真の中で男に犯されていた。
押し潰されたような格好で、両足を掴み上げられ犯されている姿…縛り上げられた末に、背後から胸を揉まれて犯されている姿…そんな写真が何枚も、私の目の前に突きつけられる。
「いや、車に乗ってくれなかったら、それは別にいいけど…この写真が、近所の家のポストに明日の朝、入ってると言う事になるだろうな…」
「お母さん…」
噛締めた唇から血が流れる…見せられたのが、自分の写真だったら、警察へ走って行き、いま見ている男の車のナンバーや車種を通報してやるのに…私を守ろうとし、私を受け止めてくれたお母さん…私は、男に言われるまま…車へと乗り込んだ。
激しい雨が車体を叩いている、助手席に座つている私の足へと、運転している男の手が伸び、太腿を擦るように撫で回す。
「やめてください!」
足の上を這いまわる手を掴み、私は叫ぶように言う。
「ふん!まあいいさ…お楽しみは、後でと言う事でな…ほら、着いたぞ」
あっさりと、男は手を引っ込める、そして車をホテルの駐車場へと乗り入れた。
この様な場所へきた経験は無い、だけどこの場所がどの様な場所かは、充分に知っていた…ラブホテル、男と女が交わる場所だと言う事を…
男に引き立てられる様にして入った部屋、ある意味で言えば豪華で贅沢な作りと言えるが、それは悪魔で特定の目的を楽しむために特化された部屋であり、通常の感覚では異常な作りの部屋と言えた。
その部屋の、巨大なベッドの上に綾子は、その身体を投げ出された。
「さてと…俺がしたい事が何か位、解るよな、綾子ちゃん?」
自分の名前を呼ばれ、驚いたような表情を男へ向ける綾子に、男は顔を近づけながら言う。
「名前くらい、幾らでも調べられるさ、あんたみたいにカワイ娘ちゃんの事なら、なおさらにね」
男の手が、綾子の方へと伸び、胸のスカーフへと手が掛かる。
「いやっ!」
ビクッ!身体を反射的に動かし、男の手から逃れようとした綾子に向かって男が、静かな…だが、明らかに脅迫を含む口調で言い放つ。
「いま着ている制服が、ビリビリに破かれたら困るだろ?」
男の言葉に綾子の動きが止まり、掴まれていたスカーフが抜き取られ、ベッドの下へと落ちる。
「ここまで来たんだ、もう抵抗は無駄だと解ってるんだろ?大人しく相手をしてくれたら、コンドームを使ってやるよ…でも、抵抗したら生で出す事になるぞ…どちらがいい?」
ガタガタと身体を震わせる綾子、記憶と言うよりも感覚が蘇る…あの時、この男に犯された時に、身体の中に染み込み広がって行った、汚らわしくおぞましい恐怖の感覚が……
綾子が着ている制服へと、男の手が掛かる…身体を強張らせながらも、その手から逃れようとしない綾子、そして綾子は男に聞いてしまう。
「ほ…本当に…使ってくれるの…」
仕方のない選択であったのかも知れない、母の写真を見せられ、この部屋へと連れ込まれてしまった自分、すでに抵抗しようとも犯されてしまうと言う運命からは、逃れられない事は、明白でありである…だったら少しでも苦痛の少ない、少しでもましな運命を選んでしまうのは、仕方が無い事だったかも知れない、たとえその選択が結果的に、更なる悲劇と過酷な運命を自分に与える事だとしても……
「ああ、ちゃんとアソコに入れる時は、コンドームを使ってやるよ、嘘を言う気はない」
全身を強張らせていた綾子の身体から力が抜け落ちる、それを確認するかのように男が、綾子が着ている制服を脱がし始めた。
両手を上へと持ち上げるように命じられ、それに大人しく従う…スカートもホックを外されたうえで、ジッパーを下ろされスルリと脱がされる、靴下も一緒に脱がされ、下着だけとなった私の身体が男の目の前に晒されている……
「やっぱり、でかくてイイおっぱいだぜ…」
男の手が胸へと伸び、まだブラジャーに包まれている乳房を揉む、身体の上へと覆い被さって来る
「あうっ!」
口から出るのは嫌悪の呻き声、そして蘇る悪夢の記憶と感覚
「あっ!ああっ、いやっ!やっぱり、いやぁぁ――!!」
悲鳴と抗いの叫び、胸におかれた手を退かそうと、押え付けられている身体を動かそうとするが、覆い被さっている男の身体は、俺を許さない
「今更、遅いんだよ!さっさと観念しな!」
引きむしられるブラジャーが、放り出され床へと落ちて行く…露になった乳房、かって男に刻み込まれた凌辱の傷痕は、ようやくに消え去り白く柔らかな乳房へと戻っていたが、その乳房へと男は改めて傷痕を刻み込み始めた。
「ひぃぃ!」
乳房へと喰い込む男の指、それが爪を立てて乳房の中へと沈み込んで行く、再び傷つけられる白い乳房…
「あっ!くぅ…あうっ!」
まるで女に苦痛を与えた分だけ、自らが快楽を得られるとでも言うように、男は女を責め苛み嬲り続ける、身体を押さえつけながら乳房を嬲り、そして下半身へと手を下ろして行く
「大人しくしねえと、ゴムをつけてやらねえぞ!」
男の言葉に、綾子の抵抗の動きが一瞬止まる、その隙をつくかのように男の手が、スキャンティの中に潜り込み、激しく股間を嬲りまわす。
「痛い!いやぁっ!やあぁぁ―――!!」
男の乱暴な動きの前にスキャンティが引き裂かれ、ただの布切れへと変る、そして剥き出しとなった股間が男の手により更に蹂躙され、嬲られ続ける。
「あっ…いやぁっぁぁ…やあ…」
恥毛を巻き込み、それを引き千切りながら蠢く手、伸ばされた指先が割目へと伸びて、襞を押し開き小さな肉芽や穴に触れながら、中央の穴の中へと指を捻じ込ませ、捏ねる様にしながら蠢かせて行く…そして…
「約束どおりに、ゴムは着けてやるよ…」
綾子の上から、少し身体を浮かせ、ガサゴソと股間へ何かを装着するような動きを見せる男…そして、その自らの男根へと装着した物を、綾子の眼前へと突きつけた。
「ひっ!」
綾子の眼前に曝け出された男根、それに装着されていたのは確かにコンドームではあったが、通常のコンドームではなった。
コンドーム…その目的の第一は避妊である、そして装着した状態でも快感を少しでも減じる事がないようにと、材質は改良され続け究極まで薄く作られるようになっていた。
だが、男が男根に装着しているコンドームは、まるで違っていた…
装着されているコンドームには、何個ものイボ状の突起物が付けられていた、それだけではなくリング状の段差や、波打つような突起物も付けられている、しかもそのコンドームの色すら極彩色と言う代物、ただでさえグロテクスな男の男根を、更にどぎつく彩るような異形のコンドーム…それを装着した男の男根が、驚きと恐怖で固まってしまった綾子を押し倒しながら、その股間へと一気に挿入されて行く…
「いぎっ!」
三ヶ月前に綾子は、いま自分を犯している男に犯された、心の傷はともかく乱暴に引き裂かれ、傷つけられた股間は何とか癒えていた…その言えた股間を、綾子は同じ男に再び犯され引き裂かれる、しかも前よりもグロテクスで巨大な男根によって…
ただ快感を求める為なら、普通の薄く丈夫なコンドームを使用した方が遥かに良い、だが男はわざわざこのコンドームを選んで使用した、それは見て!聞いて!感じたかったからである、この少女が…綾子が、三ヶ月前に処女を奪われた時、苦痛と絶望に泣き叫びながら、のたうつ姿を見て、その悲鳴を聞き、抗う抵抗感を再び身体全体で味わいたかったからであった。
そして男は満足していた…何も装着せずに直接捻じ込む快感以上の喜びを感じながら…
「ひっ!ひいぅ!あぁぁっぁ――!」
突起物が、綾子の膣壁の内部を刺激する、SEXと言う行為に慣れ親しみ、快感を感じ取る事が出来るほどに女であれば…いや、たとえ男を知り尽くした女にとっても、その刺激は苦痛以外の何物でもなく、官能の溜息など吐かせる筈が無かったであろう。
「おらっ!いい気持ちだろ?もっと鳴けよ!もっと欲しいと叫べよ!」
男は綾子の腰を引きつけ、深く男根を挿入しながら、罵る様に綾子を犯し続ける…その顔に苦痛の表情を見出す為に、その口から助けを求める悲鳴を吐き出せる為に、その肉体が自分の男根を拒否する感覚を味わう為に…
「 更なる行為 」
「おっうっ!」
男がようやくに果てる、そして突き込んでいたコンドームを装着した男根を、綾子の胎内から抜き取った。
「あ…あぅぅ…いぃひぁあぅ……」
その肉体を男の欲望に食い荒らされた綾子が、ベッドの上で大きく身体を開いた姿で呻く…憔悴し切った顔、不思議に傷一つ無いが、その代わりとでも言う様に白く傷一つ無かった乳房には歯形と傷痕が付けられている、そして下半身…特に蹂躙されつくした股間からは、裂けた部位から流れ出た鮮血が、シーツに紅い染みを広げている。
そんな綾子の姿を見ながら、男は男根に装着していたコンドームを取り、キュッ!と縛りベッドの脇に放り出しながら言った。
「さて…第二ラウンドを開始しようか?」
ベッドの上、憔悴し切っていた綾子が、その姿勢のまま、頭を振り哀願する。
「いや…いやぁぁ…もうやめて、おねがい…もう、いやぁぁぁ――――!!」
何処にそんな力が残っていたのだろうか?
綾子は、ベッドから飛び降りると、その場から逃げ出そうとする…だが、無理であった。
最初の数歩は身体が持った、だが次の数歩で足がもつれ…部屋の出口へと行くまでに、転倒してしまう、それでも這いずるようにして出口へ向かおうとする綾子の足首が掴まれる。
「ははは…まだまだ、生きがい良いみたいだ…楽しめそうだな」
両の足首を持ち、ズルズルと綾子をベッドへと引きずって行く男…
「いや…いやぁぁ―――!!」
床に爪を立て、引きずられまいと足掻く綾子であったが、床に立てた爪の一つが剥がれた瞬間に、一気にベッドの上へと放り上げられ、そのっまうつ伏せの姿勢で押え付けられ、後手にされ、その腕をスカーフで縛り上げられる。
「さて…あっちの穴は、約束どおりにゴムを着けてやったんだ、もう一つの穴の方は生で犯らしてもらうぜ…な〜に、安心しな間違っても妊娠なんてしないからよ…くくく…」
綾子は、男が言っている意味を理解する事ができなかった、だが男がベッドの脇に放り出した使用済みのコンドームを手に取り、その中身を自分の尻へと垂らし出した時に気がつく、男が何をしようとしているのかを…
「なにを…いや、そんな事しないで!そんな事は絶対に嫌!やめてぇぇ――!!」
尻へと垂らされた精液…その精液が一番念入りに塗り込められた場所は、綾子の尻の穴…肛門へだった。
アナルSEX…聞いた事はある、想像した事もある…だが、自分には受け入れる事が出来ない行為であった、たとえ強姦された結果だとしても…
「やっめて!そこ違うから!そこは違うのぉぉ!」
男の手により、丹念に塗り込められる精液…嬉々としながら、男はその行為を進めて行く、押し開いた尻たぶの間に隠されている、薄い色をした部分…キュッ!と窄まり、皺を集めひくつく様に蠢くその部分、指先で触れれば敏感に反応し、まるで別の生物の様な動きすら見せる…男はその部部へ、何も装着していない自分の男根、その先端部分をそっと押し当てた。
「いやぁぁ―――!!」
自分の尻の穴へと触れられた男根の感覚、そのおぞましさに悲鳴を張り上げる綾子…それが合図であった。
「ぎぃっあぁ!」
一気に男根が、肛門へと突き立てられる…だが、性器とは違い、入れる為の器官では無く、逆に出す為の器官である肛門、男根はその全体の半分…いや、三割程度しか挿入されず、亀頭部だけが辛うじて埋め込まれているという状態であった。
「おらっ!力抜け、入らないじゃねえか、力抜けってんだよ!」
男の手が、剥き出しとなっている綾子の尻を叩く
「ひっ!痛いぃ!いやぁぁ、いたぁいよぉぉ――っ!!」
バシバシと叩かれる尻が、猿の尻のように紅くなる、そして男は捻じ込んだ亀頭部を軸に、強引に挿入させて行く、ジリジリと埋め込まれて行く男根…半分ほど捻じ込んだ時点で、男は逆に亀頭部を残して引き抜く
「あっ…くふぅ…」
尻全体を覆いつくすような圧迫感が消え、思わず息をつく綾子であったが、次の瞬間に勢いをつけた男根が、更に深く体内へと捻じ込まれた。
「あぎぃぃ――!!」
再び悲鳴を張り上げる綾子、その背には汗が滲み出し背中だけではなく、身体全体がテラテラと濡れた様になっている。
「もう少しだ…もう少しで、全部入るからな…一気に行くぞ、行くからな!」
「いあやぁっ!もうぅいやぁぁ、やっめてよぉ、いやだぁぁ――!!」
男の尻を責める汚い言葉と、それを受け入れさせられる綾子の悲鳴…男は、ゴムを使用した事で得る事が出来なかった快感を、綾子の尻を犯すと言う事で埋め合わせようと快楽を貪る、逆に綾子は苦痛のみを与えられ続けて行った…それでも終わりはやってくる、男にとって快楽の絶頂が、綾子には苦痛の絶頂が……
完全に綾子の尻の穴へと捻じ込まれた男根、引き裂かれた肛門から垂れた鮮血が尻と太腿を汚し、シーツへと垂れて行く…そして、無理な挿入により漏れ出し汚物も…その中で男は絶頂へと達する、そして綾子の腸の中へと欲望を吐き出した。
ズルリ…尻の穴から引き抜かれる男根、その汚れた男根をブラブラさせながら男は、抱え込んでいた尻を放すと、グッタリしたままの綾子の頭へと向かう。
涙…涎…汗…半死半生と言う上場を浮かべている綾子の顔を持ち上げた男は言う。
「最後に、綺麗にしてもらおうかな?それで全部終わりにしてやるよ」
綾子の眼前に突き出された、汚れた男根…後手を縛られたままの姿勢で、綾子は突き出された男根を口に含む、そしてそれを舐めあげる…綾子の頭の中には、すでに抵抗も抗いも無くなっていた…ただ、早く全てを終らせてしまいたかった…
舐めあげられる男根…男はこの日、三度目に絶頂を味わい、欲望を綾子の顔面に吐き出した…
「 あと一度… 」
綾子が、車から降ろされたのは家の近くであった。
「それじゃ、あと一回…お付き合いたのんだぜ」
そう言って男は、車を走り去らせる…あと一回、男の言葉によれば、男はもう少ししたら外国へ行くという事であった。
だから、その前にもう一度、自分の相手をしてくれたなら、全ての記録を…今日撮影した物も含めて、すべて返してやろうと言ったのである、断れる筈も無い…綾子は、男の言葉を信じる他に道は残されていなかった。
雨はまだ降り続いていた…家に入り、あの日と同じ様に言う。
「お母さーん!タオル持ってきてー!!」
母に悟られては駄目だという思いがある、だから出来るだけ平静に振舞う。
「お帰り、綾子…雨、大丈夫だった?」
差し出されたタオル、それを受け取り、顔を隠すようにしながら母と簡単な、平静を装った受け答えをする、そして自分お部屋へと階段を上がって行く
自室のベッドの上、今日…自分の身に起こった出来事を思い出すと、涙が出そうになる、大きな声で叫び出したくなる…だが、それは出来ない、母に気取られるわけには行かない…お母さんを心配させる訳には…
「あと一度だけ…」
綾子は呟く、なんの保障も無いその約束を信じ、それだけを唯一の希望として…
外は雨…降り続く雨は、あの日の様に降り止む兆しを見せなかった…まるで、永遠に降り続けるかのように…
其の弐〜「豪雨再び…」 終わり
其の参〜「降り止まぬ豪雨…」へ つづく
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