暑い日の帰り道


                                「 暑い 」


 あまりの暑さに項垂れて歩けば、かけている眼鏡に汗が滴り落ちくる。恨みがましい視線で顔を上げ、ジロリと青空を見てみれば、どでかい太陽がまだ5月の初めだと言うのに、ジリジリと強烈な日差しをばら撒いていた。その日差しは、気のせいだと思いつつも、何故か自分に対して集中的に照り付けている様に思えてしまう。だから学校帰りの足を止めて、思わず照り付ける太陽に対して大声で叫んだ。
「太陽のバカやろぉぉぉ――!! 」
 そして叫んだ後に気がつく、こんな事を叫んだとしても、何の解決にもならず、かえって暑さを増すだけだと言う事を、そしてポツンと呟くように一人ごちる。
「わたしゃ……アホか……」
 何やら一際強く照りつけてくるようになった気がする太陽の下、私は通学鞄を抱えるようにしながら、ヨタヨタと家路を急ぐ、家に帰れば冷たい麦茶が冷蔵庫で待っている筈だ。
 途中のコンビに立ち寄ると言う手段もあるが、財布の中身が泣けて来るほどに薄い現状では、ジュース一本! アイス一つ! の金額も惜しかったりする(と言うより、実際に買う金が無かったりする……情けない!)さながらオアシスを求める砂漠の旅人の如く、私はひたすら家路への道をヨタヨタと歩くしかなかった。
 そんなヨタヨタと歩き続ける私の前に、二股の分かれ道が出現する。右と左の分かれ道、右の道は木陰と言うか日差しを遮る場所があって、多少涼しいかもしれないが、家までの距離が少しだけ遠かったりする。対して左の道は木陰とかは無いけど、家までの距離は少しだけ近かったりする。
 はたして右と左の道、どちらを通って家に帰り着こうかと少々思案した末に、私はポケットから財布を取り出し、唯一残っていた10円玉を取り出して、ピーン!と指先で弾き、それを掌に受け止める。
 裏が出たら右の道、表が出たら左の道……よくよく考えれば、こんな事をしないで、何も考えずに思いついたまま、足が向いたままに右か左の道を歩けばよかったのだが、そんな冷静な判断が不可能なほどに、日差しがあまりにも強く、そして暑さに私は参っていた。
 そして掌にある10円玉を見た私は、その10円玉が示した道をヨタヨタと暑さに茹だりながら歩き始めた。


                              「 左の道 」

 掌の10円玉は表だった。
「はやいとこ家に辿りつかんかにゃ〜……」
 暑さでボケ始めた脳ミソが唐突に紡ぎ始めた猫語を口に出しながら、左の道へとヨタヨタと歩き始めた。そんな私の後方に車が停まり、警笛を鳴らす。
「んあ?」
 素直に警笛に驚く……ほどの気力は尽きていた。すでに暑さによって、トロトロに蕩けている脳ミソは、冷静な判断を無くし始めており、警笛に誘われるように振り向いた先視線の先には、乗用車に乗った男性が開け広げた車の窓から顔を出し、こちらの方に手を振っていた。
「はれ……拓也兄さん!」
 車窓から出ていた顔は、親戚の拓也兄さんの顔であった。【地獄に仏】と言うのは、こんな時の事を言うのだろうか?
 私はズルズルと這いずる様にして、車窓から顔を出している拓也兄さんの顔を、グワッシと掴んで言う。
「おねがい……家まで車で送って〜」

「はぁ〜……涼しいにゃ〜」
「まあ、国産の中古車だけど、カークーラー位は付いてるからね」
 何故か猫語で涼しさを満喫する私に、何処か苦笑を含んだ拓也兄さんの言葉が返って来る。
 拓也兄さん……もともと遠縁ながら親戚筋で、比較的近所に住んでいると言う事もあって、昔から家族ぐるみで親しく接しており、かく言う私も小さな頃から親しんでおり、お兄ちゃんと呼んでいたりする、ついでに言うならその頃から密かに憧れいたりするのは、私の最大級の秘密だ。
 ちなみに拓也兄さんが、この場所を通りかかったのは、買物からの帰り道で偶然であったらしい、確かに後部座席には、買い込んで来たらしい品物が、ビニール袋に入って雑然と置かれている。そんな中で私は、先ほどから一つの品物に目が引き付けられていたりするのだが……
「だいたい5月だってのに、この暑さが悪いんだよ、これは夏の暑さだと! まったく異常気象と言うやつだよ! と言う事なので、後ろにあるジュースを貰います!! 」
「あっ! おい、ちょっと待て!!」
 拓也兄さんが止める間もなく、私は先程から狙いを点けていた、後部座席に置いてある缶ジュースへと手を伸ばし、素早くプルを開いてゴキュゴキュと一気に飲み干す!
 たぶん冷えたのを買って来たばかりなのだろう、まだ冷たさの残る缶ジュースを乾いた喉へと流し込む……生き返るにゃ〜
「はれぇ?」
 素早く一本目を飲み干して、拓也兄さんが止める間もあればこそ二本目に口をつけた時に気がつく……
「これぇ、ジュース……違う?」
 あきれた様な顔で私の顔を覗き込んでいる拓也兄さん……
「ああ、こりゃジュースじゃなくて、カクテルサワーだ……て、やめんか!」
 カクテルサワー……早い話が、お酒の一種だ。缶がカラフルでジュースぽかったので、カクテルサワーだとは気がつかなかった。
 とりあえず口をつけたからには、二本目も飲まねばと、ゴキュゴキュと飲み干す。
「はわぁ〜……でも、甘くて美味しいにょ〜……けけけけぇ〜!!」
 なんか心が浮き浮きしてくる。そして私を見ている拓也兄さんの顔がグルグルと回りだし、分裂し始めた。
「にゃはははぁ〜、たくやにいやぁん……なに二人にふえてるにょ?」
 何となく、自分が酔っ払っている事に気がつくけど、とても気分が良くてハッピーになってくる。
「おまえ、酔っ払ったな」
「よってなんかにゃいよぉ、だから三本目ものみゅ!!」
 更に空けられる三本目のカクテルサワー!……それを飲乾した時点で、私は心地よい眠りへと旅立った。


                              「 ホテル 」


「んっ……ん〜……あれっ?て、イタタッッ……!」
 多少ふらつくような感覚の中、意識を取り戻した場所は、薄暗い部屋の中……しかも何故かベッドの上だった。ベッドの上に起き上がって、何でこんな場所にいるのかを冷静に考えようとしたら、頭が妙に痛みだす。
「ようやく目が覚めたか、この大虎娘が!」
 何か聞き覚えのある声がした方を見たら、椅子に座っている拓也兄さんがいた。
「何で拓也兄さんがここにいるの? それにここどこ?」
「なんも覚えていないのか、お前はぁぁ――!! 」
 頭に響く拓也兄さんの大声、そして途切れ途切れだった記憶が繋がる。
「え〜……と、確か学校からの帰り道で拓也兄さんに出会って、車の乗せてもらって……」
 そこから先が記憶に無い、考え込んでいる私に向かって、椅子から立ち上がった拓也兄さんが近寄ってきて、頭をゴツン!と叩いた。
「いたぁ――! 何すんのよ、痛いじゃない!!」
「『何すんのよ、痛いじゃない!!』じゃねぇ! お前は忘れたのか、車に積んでいたカクテルサワーを3本も飲んで、酔っ払った事を!!」
 言われて思い出す。確かに拓也兄さんの車に積んであったカクテルサワーをジュースと間違えて飲んだような記憶が……
「言われれば、そんな記憶が在るような無いような……んで、ここどこ?」
「ほ〜……何処だと思う」
 あらためてグルリと周囲を見渡す。どうやら自分の家では無いようだし、かと言って拓也兄さんの家と言う感じもしない、見渡した視線に写し出される様子から想像した場所を私は言ってみる。
「どこかのホテル?」
 見渡した先に写った風景、それは友達とキャーキャー言いながら読んだ雑誌の中にあった、ラブホテルだとかの室内写真のイメージに似ていたりする。
「ああ、そうだ……国道から少し離れた場所にあるラブホテルだよ、ここらじゃ割と有名だから知っているだろ」
「拓也兄さん……私をホテルに連れ込んで、何をする、ニャウ!」
 最後まで言う前に、再び頭を拳固で殴られる。
「誰が、お前のようなガキを好き好んで連れ込んだりするか! 酔っ払ったままのお前を、そのまま家に連れ帰れるか? それとも酔っ払ったお前を車に乗せたまま、酔いが醒めるまで街中をうろつけるか?」
「痛いよ、拓也兄さ〜ん」
「ほら、目が覚めたんなら、さっさと帰るぞ」
 殴られた頭を押えながら、すでに部屋を出る用意をし始めていた拓也兄さんを見る。確かに、酔っぱらった状態の私を自宅に送り届けたら、大騒ぎになっただろう。そして酔っ払ったままの私を連れて街中を車で走っていて、それを誰かに見られたりしたら、更に大変な事になり兼ねない、酔いが醒めるまでホテルで休息を取るという選択は、最善ではないが次善と言う感じで、悪い選択肢ではない、だけど拓也兄さんの物言いに少しだけカチン! と来るものがあった。
「ガキじゃないもん」
「はあ?」
  私の言葉に、拓也兄さんは素っ頓狂な反応を見せる。いったい何を言っているんだ……そんな反応だ。
「私、もう子供じゃないもん!」
 そう言うなり私は、ベッドの上に立ち上がり、着ている制服を脱ぎ始める……小さな頃から大好きだった拓也兄さんに、女性として見て貰えず、子ども扱いされた事が悔しい!
 もしかしたら、まだ少し酔っているのかも知れない、それが私をこんな行動へと駆り立てたのかもしれない、突然の事に呆然としている拓也兄さんの前で、私は次々に着ている服と下着を脱ぎ捨てて行った。
「おい、ちょっと待て」
「子供の裸なんだから、拓也兄さんは平気なんでしょう!!」
 静止する拓也兄さんの声が聞こえるが、服を脱いで行く行動は止まらない、制服の上着を脱ぎ捨て、下に着ているブラウスも放り出す。スカートもホックを外し、そのまま下の方へと一気に擦り下げる様にして脱ぎ捨てる。そしてブラジャーに手をかけて、それを外した瞬間に、拓也兄さんが大声で怒鳴る。
「やめないか! いい加減にしないと怒るぞ!!」
 その声を聴いた瞬間に、ベッドの上にへたり込んでしまう。
「拓也兄さんは、いつも私を子供扱いして……小さな頃から、拓也兄さんの事が大好きだったのに、子供! 子供って!!」
 ああ……まだ酔っていると言うのが自分でも解かる。解かるけど言葉は止まらない、小さな頃から何度も言おうとして、結局言う事が出来なかった想い、いま言わなければ永遠に言う機会が無くなってしまう……そんな気がしたから、私は言う……私の想いの全てを、自分がお酒の力を借りなければ、この事を言えない程に弱虫な人間なんだと自覚しながら、吐き出すように大声で叫ぶ!
「なあ、お前が酔っ払ってベッドで寝ていた時、俺が何していたか……わかるか?」
 ポン! と、頭の上に拓也兄さんの手が優しく置かれる。
「解かる訳ないわよ!私は何も解からない子供だもの!!」
 すでに自分で自分が何を言っているのか、なんだか解からなくなって来ている。頭の上にのせられた手を、振り落とそうとするように頭を振り続ける。
「腕立て伏せ……」
「えっ?」
「ただひたすらに腕立て伏せをして、むらむらと込上げて来る物を、必死に押さえ込んでいた」
「押さえ込んでいた……て?」
「好きな娘が、無防備な姿で眠っているのを、冷静な心境で見ていられる筈が無かろうが! だから腕立て伏せをして、そんなむらむらと湧き上がってくる欲望と言うか……ナニを必死に押さえ込んでいたんだ」
 キョトンとした表情になった私は、自分の方を指差しながら聞く……
「好きな娘て……もしかして、私のこと?」
「他に誰もいないだろうが! それくらい解かれ!!」
 今度は卓也兄さんが怒ったような大きな声を出し、私に背を向ける。その姿と言うか格好が、何だかとても可愛く見えてしまう。
「へぁ〜、拓也兄さんは私の事が好きだったんだ……何時から好きだったの?」
 背を向ける拓也兄さんの背中に、ぺたりと抱きつく……当然の事ながら、ブラジャーを外したはずしたままで、二つの膨らむを圧しつけるようにしてだ。
「おい……」
「ねえ、教えてよ」
 更にグイッ! と乳房を背中に押しつける……しばしの沈黙、そして……
「おまえが中学になった頃からかな、ほら中学入学の御祝いをしたろ、その時にガキだと思っていた子供が、実は女の子だったんだと気がついて……そんな所だ」
「だったら私の勝ちだね、だって私が拓也兄さんの事を好きになったのは、幼稚園の頃からだから」
 何だか嬉しくて、胸だけではなく、身体全体を拓也兄さんの背中に、ギュ〜と押しつけてしまう。
「なあ、そろそろ離れてくれないか」
「どうして?」
「この体勢じゃ、腕立て伏せをして押さえ込む事が出来ないんで、限界を超えそうだ」
「私は……限界超えてもいいよ、拓也兄さんとなら……」
 一瞬、拓也兄さんの背中がピクン! と動く、そして……
「ばか、いまの一言で限界を超えちまったぞ」
 そして身体に絡めていた私の腕を、ゆっくりと外しながら、私のほうを振り向く
「うん、超えていいよ……」
 拓也兄さんは、私を抱きしめながらベッドへと倒れこんでいった。


                                 「 ごめんね 」


「ひゃうっ!」
 包み込まれるようにして胸を拓也兄さんの大きな掌で揉まれる。
「失敗したな」
「えっ、なに?」
「いや、どうせだったら自分の手で服を脱がして、じっくりとお前の裸を見てみたかったなと……」
「卓也兄さんのエッチ! あっ!!」
 胸に触れている手が大きく動く、そして乳首を強く摘まれる。
「んっ、あっ! 拓也兄さん……痛いよ、乳首をそんなに強く摘まないで」
 離される乳首、その代わりにとでも言うように、顔が近寄り唇が乳首を食み、口中に含まれた乳首の先端が舌先で転がされる。
「んっ……んふっ!」
 何だか笑い声が出てしまう……私の乳首を吸う拓也兄さん、何だか赤ちゃんのようで可愛い、だからもっと胸を吸われたいし身体を触ってほしい
「ねぇ、もっと……して、おねがいだから、好きだから、おねがい……して……」
 拓也兄さんを求める私の声、そして拓也兄さんはその声に応えくれ、一際強く乳首を吸い、柔らかく乳首に歯を立て刺激する。
「あっ! ああぁぁ――っ!!」
 赤ん坊のように胸を吸っていた唇が、何時の間にか胸から離れ、下の方へと降りて行く、ショーツの両端が摘まれて、そのままずり降ろされて行くのがわかる。そして露になった股間へと唇が触れ、伸ばされた舌先が私の恥毛を掻き分け、その間に隠されている場所へと触れた。
「ひうっ! そこは、ああぁぁ……くふっ!!」
 舌先が触れる度に身体がピクピクと反応してしまう。そして反応を示す度に、身体から何かが溢れ出してくるのが解かる。私の股間を舐める拓也兄さんの舌、何時の間にか湿ったペチャペチャという濡れた音が、私の耳に届き始める。
「あふぅ、んあっ! ひぃくぅぅ――っ!!」
 身体の反応は止め処も無く強くなっていく、そして股間を舐め責める拓也兄さんの頭を、強く股間へと押し付けるように手が動く
「いい……はやくきて、はやく、おねがい! はやくぅぅ!!」
 いったい何に、はやくきてほしいのか……その言葉を唇に出している私にも解からない、だけどきてほしい、はやくきてほしいと私はひたすらに、それを拓也兄さんに求めた。
「いくよ……」
 股間から離れる舌先と唇、そして囁く様な拓也兄さんの声
「うん……」
 小さな声で私は応える。
「くっ!」
 私の中へと入ってくる物のへの感覚、それが私の身体を押し広げながら、私に埋め込まれ続ける。
「はぁっ! くぅぅ――っ!!」
 肉が千切れる様な痛み、その痛みの感覚にすら嬉しさを感じる。
「もっときてぇ! 痛いけど、もっときてぇぇ――!!」
 痛みにも似た快感、快感にも似た傷み……それに私は満たされ、それを身体全体で受け入れ続け、拓也兄さんの身体にしがみつき、その背中に爪をたてる。
「あっ! ああぁぁ――っ!! 」
 声だけが吐き出され続け、満たされて行く快感に身体を震わせる中、胎内に迸る熱い感触を受け止めた瞬間、私は満足し……幸せを感じた。

 車がゆっくりとホテルの駐車場から出て行く、車の中から外を見れば、あれ程までに照りつけていた太陽は西へと沈み始めている。
「太陽さん……バカなんて言ってごめんね」
 沈みかけている太陽に向け、私はそっと謝る……もしも、今日がこんなに暑くなかったら、拓也兄さんに私の想いが届く事は無かっただろう。
 だからその事に感謝を込めて私は、沈んで行く太陽にあやまる……車を運転している拓也兄さんは、そんな私の言葉に首を少しだけ傾げながら、頭を撫でてくれた。


                       おわり


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