『 ドラゴンクエストU 』             


                        【 犬になった王女の物語 】


                                  第一章

                              「 焚き火の夜に 」

バシン!
それがラーの鏡でもとの姿に戻ったムーンブルクの王女マリア姫が、俺にした最初の挨拶であった。
「元に戻してくれたありがとう、でも……」
憎悪に滾らせた瞳で、俺の方を見ているマリア姫……事情を知らない、サマトリアのトンヌラ王子が、眼をパチクリさせながらおたおたと、俺とマリア姫のやり取りを見ている。
思いっきり叩かれた、ヒリヒリとする頬の痛みを噛み締めながら俺は自戒する、叩かれて仕方が無かった。
あの日、俺は犬であったマリア姫を犯した……その正体が、マリア姫であるという事を知らずに、欲望の処理道具として俺に懐いていた(それは俺とトンヌラが、同じロトの血筋に連なる仲間であるのを知り、仲間になろうとしていたのだ)牝犬を犯した。
その後に入手したラーの鏡により、牝犬から元のムーンブルグの王女マリア姫が、俺を叩いたの当然であり、殺されても文句は言えないことであった。
「でも…」
そう言った後、マリア姫は口を紡ぎ……一息ついてから、笑顔をトンヌラ王子に向けて言う。
「この世界を救うための仲間に加えて頂けるでしょうか」
ニコリと笑顔を浮べるマリア姫、世界を救うと言う大儀の前に、あの事は忘れ去り、俺達の仲間に加わろうと言うのだ、ロトの血筋を持つ王女の決意の笑顔であった。
もちろんトンヌラ王子は、了解して俺に同意を求める、文句を言える筋合いではない、俺も王女のパーティーへの参加を認める……こうして、ローレシアの王子たる俺、サマトリアの王子たるトンヌラ、滅亡したムーンブルクの王女マリア姫の三名、ロトの血を引くもの達は集ったのである。

パチパチと焚き火が燃えている、その揺らめく炎と焚き火の横で眠っているトンヌラ王子とマリア姫の横顔を見る、炎に照らし出された二人の横顔を見ながら、今までの旅の事を思い出す。
パーティーを組んでも、マリア姫は俺に対して冷淡な態度をとり続け、最小限の口しか開かなかった。そして対照的にトンヌラ王子とは親しげに話をし、何時も一緒に居る場合が多い、これは仕方が無い事だろう、俺はそう思いその事を受け入れ、多少ギクシャクしながらもパーティーは山を越え海を越え、迷宮を探り洞窟を抜け、この地へと足を踏み入れたのである。
明日は、いよいよ敵の本陣への第一歩とも言うべき、ロンダルキア大迷宮へと突入する、今まで幸運にも勝ち続ける事が出来たが、これからはどうなるかわからない、敵の怪物達は強力なってきており、油断する事は出来ない……明日をも知れない命だから、最後にマリア姫に言いたい事があった。
もっと早くに言わなければいけなかった言葉……しかし、その一言を言う機会は無かった。
いや、機会はあったが言えなかった……言うのが怖かったんだ。
多分、今日も言えないだろうと思う、そして明日も……明後日も……永久に言えないだろうと思う。
それでも言いたかった。
だから、寝ているマリア姫に向かって俺は言う。
「ごめん…」
……
「ようやく言ってくれたんですね、ルーファス王子」
寝ていると思っていたマリア姫が、その寝た姿勢のままで返事をし、起き上がって俺のほうを正面から見る。
「あ…マリア姫」
さぞや驚いた、頓狂な顔をしていたのだろうと思う、俺の顔を見たマリア姫が、プッ!と噴出して笑う……それは、人に戻ってから、俺に対して初めて見せてくれた笑顔だった。
起き上がったマリア姫が、俺の方に近寄ってきて横に座り、独り言のように話し出す。
「ムーンブルク城が壊滅した夜に、私は幾十幾百と言う怪物達に犯されました…その上で、牝犬へと姿を変えられたのです…」
更にマリア姫は、ムーンブルグ壊滅の夜の事を話す。

怪物達に肉親を人質に取られて、その怪物の命じるままに城の井戸に、薬を投げ入れたマリア姫付の侍女…薬により、半身不随と化したムーンブルグ城は、あっけないほど簡単に落城し、その後に行われた怪物達による酒池肉林の宴、余興として引き出された彼女は、両親である国王と女王の生首の前で、怪物達に犯されたと言う。
牝犬に姿を変えられた後に、殺される事無く城から脱出する事が出来たのは、井戸に薬を投げ入れた侍女が、その身を挺して逃がしてくれたからであった。
ようやくに辿り着いたムーンペアタの街、しかし牝犬に姿を変えられた自分に出来る事などある筈も無い、ただ路地裏に捨てられたゴミを漁ったり、道行く人に愛嬌を振りまいては、一日の食を得て無為に日々を過ごすしかない、そんな時に現れた二人……牝犬と化した事により嗅覚が発達したせいなのか、それとも同じロトの血を引く者の嗅覚なのか、二人を見た瞬間に確信した、ロトの末裔である事を…
牝犬の身になった自分には、術を伝えるの事は出来ないが、信じる事が出来た……必ずや、自分を元の姿に戻してくれる事を、そして一緒に闘うと言う事を…だから、彼らの後を着いて回った。

「そうだったのか…」
マリア姫の話を聞いて、俺はその身に起こった想像以上の悲劇を知る。
「ええ…でも、あんな酷い事をされると思っていませんでしたけど…ふふふ…」
酷い事……俺は、牝犬になっていたマリア姫を、牝犬の姿のままの時に犯した、欲求不満と言うか性欲が満タン状態だったと言うか…もしかしたら、心のどかの部分で牝犬の正体がマリア姫だと知っていたからなのかも知れない、ともかく俺は彼女を犯してしまったのだ。
「悲しかったし、傷つきました…同じロトの血を引く貴方が、こんなにも酷い人だったと思って……」
俺は言葉を繋ぐ事が出来なかった。
「人に戻った時、貴方を殺そうと思っていたのを知っていましたか?」
俺は、頭を上下に振り肯定する…知っていたと言うよりも、感じていた…マリア姫の殺意を…
「でもね、一緒に旅をしているうちに、貴方と言う人の本質がわかったような気がしてきました、だから決めたのです…貴方が、あの事を悔いて謝罪したなら…赦してあげようと…」
「ごめん…」
俺は、再び謝る…それだけしか出来なかった。
項垂れる俺の頭を掴んで持ち上げ、正面から俺の顔を正視したマリア姫は、口を開き言葉を発する。
「私は、貴方の謝罪を受け入れます…そして貴方に対して、今までに私が行った無礼な態度を謝罪します…受け入れてくれますか?」
俺は、正面から見据えられているマリア姫の顔を、はっきりと見ることが出来なかった。俺の両の瞳から湧き出す涙が、視界を揺らし歪ませたからである。
「俺…いや、私も姫の謝罪を受け入れます…」
ようやくに、俺は言葉を紡ぎだす事に成功する、歪んだ視界の中…マリア姫の顔が、大きくなったような気がした次の瞬間に、俺の唇が柔らかい物に塞がれた。
その柔らかな物が、マリア姫の唇だと気がついたのは、その柔らかな感触が消えた後の、マリア姫の言葉であった。
「本当は、嫌ではなかったのです…怪物達に犯され汚されたこの身体を、たとえ牝犬だったとしても受け入れてくれる人が居た事は、嬉しくさえ思えました…あの時の続きをしてくれますか?」
俺は、今度は自分の方からマリア姫の唇の柔らかさを求めた、そしてマリア姫は俺の求めに応じてくれた。

寝息を立て寝ているトンヌラ(後になってマリア姫から聞いた話では、食後に一服盛って寝ていて貰ったそうだ…女は怖いと実感した)の横、焚き火の炎だけが、周囲を照らし出している、その闇と光の狭間の空間で俺とマリア姫は、互いを求め合いながら、一つに生物の様に絡み合う。
俺の身に着けている装備も、マリア姫の法衣を始めとする装備も、すでに全てが脱ぎ去られ全裸で抱き合っていた。
取れた頭巾から溢れ出した髪が、のたうつ様に広がり乱れ絡みつく、その髪を掻き毟るように愛撫しながら、俺はマリアの裸体を抱きしめる。
炎に照り返しで紅く染まっているマリアの肌、炎の火照りであろうかそれとも、マリア自身が自ら熱く火照っているのか判断できないが、その肌は熱く絡み付いてくる、俺はその肌に舌を這わせ臭いを嗅ぐ、少しすえた様な汗の臭いと舌先に感じる塩の味が、更なる昂ぶりを俺に命じてくる…この女を犯せと、しかし俺は昂ぶりを抑え、逆らうようにマリアの裸体を優しく愛撫し続けた。
「あっ!ああぁぁーーー!」
マリアの声が俺を誘う、俺はそれに応え愛撫を繰り返し、乳房に手を伸ばし揉み上げて行く、硬く盛り上がって来た乳首の感触を指先に味わさせた後に、その掌を下へと下ろしていく、目指す場所へと……
「くっくぅぅ〜んっ!」
マリアが甘えたような声を出す。なんだか牝犬であったときの事を思い出すが、すぐにその考えを追い出す。
すでに湿り気を帯びているマリアの股間、そこに這わせた掌にぬるりとした生暖かい湿った感触が纏わり付き、俺の身体に染み込んでくる様に感じる。
「いくよ…」
俺は、そう言うとマリアの中に、俺自身を挿入した。
「あっ!」
低い途切れるようなマリアの声、その声を俺は聞きながら、さらに俺自身をマリアの中に深く埋め込み、突き動かし始める。
「んっ!んぁっ!あうっ…ん…」
マリアの膣内で蠢かせる俺自身の動きに合わせて、マリアが声を出し悶え、俺を抱きしめながら反応する、俺はそれがとても嬉しかった。
温かいと言うよりも、熱いマリアの肌と膣内の感触に俺は夢中になり、貪るように肌を合わせ、俺自身を埋め込み突き動かし続ける。
胸を揉めば柔らかな乳房は俺の掌を包み込んでくれる、唇を合わせ口を吸えば差し込んだ舌に、マリアの舌が絡みついてきて、俺の口の内へと一緒に戻ってくる、柔らかき肌を抱きしめれば俺を受け入れて抱きしめ返してくれる、全てが愛しくて仕方が無く、夢中でマリアの身体中を愛撫し続けながら、その胎内の一番奥深くの部分に俺自身から吐出された、塊を注ぎ込み続けた。
自分のすべてをマリアの膣内に、注ぎ終わった後でも、俺は埋め込んでいる代物を抜く事無く、繋がったままの状態でマリアを抱きしめ、その身体の感触を全身で感じ続けた。
マリアもまた、それを受け入れている、膣内に放たれた熱い感覚と、まだ膣内の存在する塊の感触は不快ではなく、充足感を持ち安心できたからだった。

これなら忘れる事ができるかも知れない……マリアは、ルーファス王子に抱きしめられ、そして抱きしめたまま思い出す。
あの夜、故郷であるムーンブル城が壊滅した惨劇の夜を…


                                    第一章・終了

                                  第二章〜「 ムーンブルクの紅き夜 」へ続く…
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