Fate/stay night

           hikari





 混沌の井戸……その水面の下、穢れの水底から私は、憧れにも似た眼差しで何時も見ていた……それは二つの光……
 穢れの中から見上げる二つの光は、ゆらゆらと眩しく揺れ動く……そのひとつは月の光を思わせる優しく穏やかな光……もうひとつは太陽の光のように眩しく輝いている光……
 ふたつの光は、現れては消え、消えては現れ、私の前を交互に流れ行く、それは私が見上げる事しかできない光であり、穢れと汚辱に満ちた私の手には、永遠に届かない存在でしかなく、私の穢れを浮き上がらせるだけの光……
 なぜ……私は……その光ではないのか……
 なぜ……私は……穢れでしか無いのか……
 なぜ……私は……見る事しか無いのか……
 なぜ……私は……
 なぜ……
 答えの無い想い……その二つの光の眩しさに目を眩ませながらも、私はその光に見入られ続ける。
 その二つの光は、私に憧れを与え続けてくれるから……そして同時に、微かな妬みも与え続けてくれる……そんな光だったから……
 私が望んでいた事……それは、穏やかで静かな春の陽だまりのような暖かい日々と、私のそばにいてくれる人……だけど、現実に私が過ごしている日々は、血と肉の宴の末に行なわれる惨劇の片方の主役、そして永遠の孤独でしかなかった……

                                  ★

 暗く湿った地下に造られた部屋へと、私は回廊を下って行く、微かな魔法光に照らし出される回廊の壁には、呪詛の言葉と断末魔の叫びが染み込み、それが血のように滲み出している。
 その回廊の突き当たり、固く閉ざされた扉を開けた先、淫蟲が無数に這い回る中に、一人の少女、遠坂凛と言う名の少女……私の血を分けた実の姉が、その手足を禁呪布により縛められ、その魔法使いとしての力の術を封じられた状態で、まるで吊り下げられたマリオネットの様に、暗闇の中で宙吊りにされていた。
 宙吊りにされている姉さん、その足元に置いてある蟲避けの香、私にとって悪臭にしか感じられない臭いが、周囲に群がる淫蟲達から、宙吊りにされている姉さんの身体を辛うじて守り続けている。
「姉さん……ご機嫌は如何かしら?」
 その悪臭漂う中で、姉さんに私は問う。
 その問うた私の顔を見て、姉さんは驚いたような……そして、同時に憐憫の表情を浮べて私を見る。
 ああ……私は鏡を見たかった。
 そして、私がいまどの様な表情を顔に浮かべているのかを見たかった。
 堪らなく見たかった……私の顔は……笑っているのだろうか……喜んでいるのだろうか……もしかして……ないているのだろうか……どの様な顔をしているのか……私は堪らなく見たかった……

 禁呪布により、魔法使いと言う力ある者から、無力な少女へと貶めている姉さんの姿……それでも、持って生まれた性格なのか、その凛々しくも美しい顔を私に向け、正面から問いただす。
「桜、私をどうしようと言うの?」
 それは愚問に属する質問だった。私は穏やかな笑みを浮べながら、姉さんのしなやかな黒髪へと手を伸ばし、その黒く艶やかな髪に指を絡ませながら、その耳元へと唇をよせ……その形の良い耳に、私の唇に触れさせながら囁くように言う。
「姉さんは……とてもずるいから……」
 そう言った私の顔を、驚いたような……そして、やはり憐憫に満ちた表情を浮べ見返す姉さん……
 そう、姉さんは……ずるい……何でも持っているのに、私が欲しかった唯一の物すら持って行こうとしている。
 ……そんのは……イヤダ!

 姉さんの髪へに絡ませた指先、その指先を髪を絡ませまま強く後ろに引く
「はぁぐぅ!」
 仰け反りながら、微かに声を喘がせ、苦痛に顔を歪める姉さんの姿……そんな苦痛に喘ぐ姿でさえ、姉さんはとても綺麗で美しかった。
「ねえ……どうして姉さんは……」
 姉さんは、私の持っていない物を全て持っているの……
 問う言葉は最後まで口に出す事が出来ず、その代わりとでも言う様に、私の手は姉さんが着ている服の下へと忍んでいく
「ひぃう、桜!」
 咎める様な姉さんの声、その声に誘われる様に、私は忍ばせた手を服の下で蠢かす……淫蟲の様に淫らに、姉さんの柔らかな肌の感触を確かめるように……
「はぁんっ!」
 触れている肌に指を滑らせ、指先を進ませる場所は、姉さんの乳房……
「ああっ……姉さんの胸は、とても柔らかい……まるで指に吸い付くように感じるわ」
 乳房へと這わせた指先、少しだけ力を入れて、その柔らかく吸い付くような乳房を揉む……指先を伝わってくる感覚に、私の心と身体は喜びに震える。
「くぅぅ……やめなさい桜!」
 姉さんは、胸を私に触れられて、どの様に感じているのだろうか……嫌悪だろうか? 快感だろうか? その感覚に耐えながら姉さんは私の名を呼ぶ、それを嬉しく思っている私がいる……大好きな姉さん……でも私から大切な人を奪うずるい姉さん……
「はぁうっ!」
 乳房へと辿り付いた指先を、乳首へと忍ばせて嬲りながら……そのまま服を緩やかに捲りあげる。
 捲りあげられた服の下から、姉さんの乳房を包み込んだ、意外なほどに質素で白いブラジャーが現れる。
「くっ……桜!」
 手足に絡みつき、姉さんを戒め続ける禁呪布、それを何とかしようと足掻く姉さんの姿、そう……もっと抵抗して、抗い足掻いて、大人しくされるがままの姉さんなんて、姉さんじゃないから……そうじゃないと私が……楽しくないから……
「私よりちいさいけど……綺麗ね……姉さん」
 ブラジャーに包まれた姉さんの乳房を見ながら、私は笑みを漏らし言う……私よりは、大きくは無い、だけど白くて綺麗な姉さんの乳房……男の人は、こんな綺麗で清楚な乳房が好きなのだろうか……私の様に、淫らな肉と脂肪の塊の様な乳房では、あの人は喜んでくれないだろう……
「みせて……姉さんの綺麗な胸を……私のと、どう違うのかを見たいから……ねえ……姉さん……私に見せてちょうだい」
「うっ……」
 ブチリ! と、胸を覆い隠しているブラジャーを私は引き千切る。
 チン! 跳ね飛んだブラジャーの留金が、奇妙に軽く乾いた音を立てて床に落ちた。
 引き毟られて、私の手の中に納まる姉さんのブラジャー、そのブラジャーの香をかぎながら、私はカップの内側へと舌を這わせ、姉さんの乳房の味を染み込ませた布地を舌で味わう。
「姉さんの香と味……こうなのね……ああっ……いい香……そして美味しい……」
 鼻で嗅いで堪能し、舌先で味わい舐める……一瞬だけ、その香ばしくも官能的な味を与えてくれるモノを投げ捨てるのを躊躇するが、私は白いブラジャーが床へと放り出し、もっと香ばしそうで美味しそうな姉さんの乳房……その隠されていた部分が、もっと良く見えるように服を捲り上げ、その胸を外へと曝させる。
 そして私は見る……柔らかな紅色をしている乳輪、そして膨らみだしている乳首……まだ先端が少々陥没しているけど、とても綺麗だ……まだ何も知らないだろう……男の人に見せた事も、触れさせた事も無いであろう、汚れを知らない乳房と肉体……私とはまるで違う肉体……
「うふふふ……」
 思わず私は、笑いを漏らしてしまう……姉さんに聞えるように……だって、こんなに綺麗な姉さんの胸や身体を、思う存分に汚せるのが嬉しくて、それを姉さんに教えたくて、だから私は姉さんに聞えるように……姉さんに聞かせてあげるように、笑いを漏らし続ける。
「桜!」
 身体をくねらせ、歯噛みをしながら私を睨む姉さん、その顔には私を哀れむような表情はもう消えていた。その顔にある表情は、激しい敵意と憎悪の感情……それが私に注がれる……ああ……とてもステキだ。
 私が本当に見たかった姉さんの表情、私を妹としてではなく、哀れみの対象としてではなく、憎悪の対象として、ただ一人の人として私を見る姉さんの表情……それが憎悪の表情だとしても、私は嬉しさを隠す事が出来ずにいた。
「まだ膨らんでいないのね。いま膨らませてあげるから……」
「やめなさい桜! やめ、あうっ!」
 剥き出しとなっている姉さんの乳房、その乳房の上にある小さな膨らみへと、私は唇を近づけ、その膨らみを口の中に含み……優しく舐めしゃぶる。
「くぅひぃ……さく…ら、だめぇ……」
「ん……んふぅぐぅ……はふぅぅ……ちゅぅぅんぶぅぁ……」
 身体を動かし、私の唇に挟まれ飲み込まれた乳首を引き抜こうとする姉さん……口の中で膨らんでくる姉さんの乳首、その硬くコリコリと膨らんでくる乳首に舌を絡め、私は優しく吸い嬲り……軽く歯をたてる。
「あひぃ!」
 乳首へと食い込む私の歯、どの様な感覚が、姉さんを貫いたのか……私は、その感覚を知っている。
「姉さん……膨らんだようね……」
 乳首から唇を離した私の問いに、姉さんは返事をしてくれず……羞恥に赤く染まった顔を背けた。

「きなさい……」
 私は淫蟲達を呼ぶ、私の肉と血を舐め育った……私の子供達とも言える存在に命令を下す。
 蟲避けの香により、私と姉さんの周囲に群がっていた淫蟲達が、その輪をゾロリと縮めていく……
「ひぃ……くぅ!」
 周囲に群がり集まり来る淫蟲達のザワザワと蠢き、そちらの方へと髪を掴み上げ、姉さんの顔を向かせる。
「姉さん……私の初めてはね、この蟲達に捧げたのよ……」
 私は、床に置いてあった蟲避けの香を持ち上げる。
 間桐の魔術……すでに淫蟲と同じ体質へと変化している私には、耐え難い香が肉体へと染み込み、胎内に巣食う淫蟲達が激しくのたうち暴れるのが解かる。
 その苦痛に耐えながら、私は持ち上げた蟲避けの香を、姉さんの前へとかざし……それを投げ捨て言う。
「おまえ達の思うようにしなさい……」
 そして淫蟲達は、姉さんの方へと這いずって行った。

 跳び跳ね、這いずり、粘液に塗れた淫蟲達が、姉さんの下半身へと群がって行く……それを恐怖に満ちた表情を顔に貼り付け見ている姉さん…
 最初に姉さんへと辿り着いた淫蟲が、スカートに歯を立てる。
「ひぃぐ!」
 身体を揺すり、噛み付いてきた淫蟲を振り払おうと足掻く姉さん……だけど淫蟲達は、さらに姉さんへと……ニーソックスに……スカートへ……服へと群がり、衣服を噛み裂きながら、その下にあるモノを目指して蠢き這い回る。
 足から身体へと這い回る淫蟲達……その嫌悪する感触と、これから自分の身に起こるであろう事態を想像し、恐怖と絶望に表情を引きつらせながらも、その噛締めた口元から悲鳴を吐き出さないのは、勝気な姉さんにとって最後のプライドなのかも知れない、だがそのプライドは間違いだと私は思う。
 悲鳴を上げて、誰でもいいから……たとえ無駄だと知りながらでも、サーヴァントや愛しき男の名前でも呼び、助けを求めて叫べば、多少ともなりとも恐怖と苦痛は緩和されるのに、姉さんの資質がそれをさせないでいり……私は、そんな姉さんが大好きだ。
 スカートが噛み裂かれて、切れ端へと変化して床へ落ちる、そしてその下に隠されたブラジャーと同じ様な質素な白いショーツが、淫蟲達の前に曝される、淫蟲達は本能的に知っている……その下にあるのが、軟らかで湿った場所である事を……
「やめなさい、やめなさいよ!」
 私に言っているのか、それとも淫蟲達に言っているのか、這いずりながら張り付いて来る淫蟲達のおぞましさに、さすがに声が荒くなり始めている姉さん、もうすこしで完全な悲鳴へとそれは変わって行くのだろうか?
 這い寄る淫蟲は、最後の布切れを噛み裂きながら、剥き出しとなったその部分へと迫って行く……
「いやぁ……やだぁ、くぅ! このぉ、離れなさいよ!」
 淫蟲達が、剥き出しとなった姉さんの股間へと群がる。淡く生えている姉さんの茂み、その茂みの草に噛み付いた淫蟲が、ぶらりと垂れ下がり蠢く……
「くくくっ……ふふふ……」
 股間からぶら下がる淫蟲の姿、それを振り払おうと腰を足掻かせる姉さん、陰毛に噛み付いたまま揺れ動く淫蟲……その姿が面白く、私は声を出し笑ってしまう。
「ひぃぎっ!」
 淫蟲の一匹が、姉さんの襞に歯を立て噛み付く……そして姉さんの口から、初めて悲鳴が漏れ出す……ああ姉さんの悲鳴……その惨めな悲鳴……吐き出される苦痛の悲鳴……屈辱に満ちた敗北の悲鳴……そうだ……この声が、私が聞きたかった姉さんの声だ……
 股間へと群がる淫蟲達、やがて淫蟲達は求めていた箇所へと、その身体を次々に潜り込ませて行った。

 禁呪布により、宙吊りとされている姉さんの身体がギシギシと揺れ動く、股間へと潜り込もうとして来る淫蟲達を、入れさせまいとするかの様に、辛うじて動かせる部分を爆ぜるように動かし、必死の抗いを見せる姉さん……
「ぐっ! ぎぃひぃぃーー!」
 すでに耐える事もせずに、その開け広げられた口から吐き出される悲鳴、その明け広げられた口にすら、淫蟲達は潜り込もうとしている。
「ぐぅぶぅぅ、うごぉあぁぁあ―――!」
 口の中へと侵入して行く淫蟲達……反射的に閉じ合わされた姉さんの口によって、一匹の淫蟲が噛潰され、精液にも似た体液を撒き散らしたが、残りの淫蟲達は姉さんの中へと潜り込みこんで行った。
 ……何匹も…何匹も……
 口とアソコ……淫蟲達は、次々に姉さんの胎内へと潜り込んで行く、時おり間違って別の穴へ潜り込んだ淫蟲が、その身体を震わせながら強引に潜り込もうと暴れている。その度に姉さんは、口の中に潜り込んできた淫蟲を吐き出すような声を漏らし、身体を痙攣させ身体を揺らせ暴れる……
 貪欲な淫蟲達は、潜り込む場所を探し回った末に、本来なら人の肉を好まない筈なのに、姉さんの足や剥き出しなっている乳房に噛り付いている奴もいた。
 淫蟲の小さな鋭い歯に噛み裂かれるニーソックス、その下にある素足も無事に済む筈も無い、噛みついた淫蟲の歯型が何個も刻み込まれ、痣となり噛み痕から血が滲み出し、肌を赤く染めて行く……それは足だけではない、乳房へと噛み付いてくる淫蟲もいた。
 乳房へ噛み付いた淫蟲が、乳房にぶら下がる。離すまいと必死に噛み付いている場所からは、血が滴り落ちて姉さんの白い肌に血の雫を垂らして行く……それが、とても綺麗で美しく見えてしまう。

                                    ★

 ボコボコと蠢く姉さんの腹部、だけど姉さんは苦痛を感じなくなっている。胎内へと潜り込んだ淫蟲達が、姉さんの肉体に苦痛にも勝る快感を与え始めているから……
「姉さん……」
「あぁぁ……あふぃはぁ……ひゃくぅ……りゃぁぁひいいきぃ……」
 すでに私の訪いかけに応える事無く、突き上げるような快感にその全てを委ね、うわ言の様に快楽の声を漏らし続ける姉さん……その姿は、かっての光り輝くような姉さんからは、想像も出来ない淫らで惨めな姿……
「返事は、してくれないの……姉さん……」
「あふぅぅ……ふひゃ、ぶぅふぅ……」
 見開かれた姉さんの眼は何も見ていない、そして大きく開け広げられた口からは、だらしなく大量の涎を溢れさせ、それが頬を伝い落ち身体へと滴り、濡らして行く……
 私が口を開き血を舐めたような紅い舌で、頬を伝い落ちて行く姉さんの涎を掬い取りながら、それを飲乾す。
 そして、胸へと伸ばした手を動かし、その柔らかな乳房を強く……優しく……弱く……乱暴に……何度も揉みあげた。
「あっ……あうぅぁ……」
 微かに呻くよな言葉を発する姉さん、晒されている下半身に群がる淫蟲……そして蠢き続ける腹部を見れば、胎内で蠢いている淫蟲達が、どのように姉さんに快楽を与えいるのかがわかる。
 その快楽に、全ての理性を喰われ尽くされ、理性の欠片すら感じさせない姉さんの表情……光を失いどろりとした瞳は、何を見ているのだろう?
「姉さん……士郎さんを見ているの?」
 私は問うて待つ……姉さんと、そして応えてくれる筈の無い問いの答えを……私が壊してしまった、大切な光の欠片を見ながら……
「姉さん……誰を見ているの……」
 何度も私は問い続ける……返ってくる返事など、もはや永遠に無いという事を知りながら……
「姉さん……」
 それでも……だから……私は……問い続けるしかなかった……
「姉さん……」
 永遠に……
「姉さん……」
 と……


                                             The END



                                          成人向け書庫へ戻る