ラブホテルの情事


                                    
  


 郊外にあるラブホテル、休日の前後や夜間などは、順番待ちの車が連なる事も珍しくないが、平日の昼間となれば地下にある駐車場も閑散としているのは仕方がない事だ。
 そんな閑散とした駐車場に、一台の車が乗り入れられ駐車スペースに停車する。そして車を運転していた男の方は、素早く車から降り助手席にいる女の方に降りようにと促すが、女の方は戸惑うように降りようとせず、男に散々に促された末にようやくに車から降りてきた。
 車から降りてきた男女……男の方は、ごく普通の外回りの会社員風であるが、女の方は美しい女であった――目を引くとか、メリハリのある女優のようなタイプの美しさではない、内面の方から滲み出してくるような優しげな美しさ、ただその美しい顔には陰りがさしいるのだが、その陰りさえ魅力的と言える女性であった。
 年の頃なら二十……五,六歳と言う所だろうか、身に着けている服の感じから独身女性と言うよりも人妻と言うイメージがあり、薄く塗られている化粧の具合もそれを肯定している。
 ショートカットにし纏め上げられている髪は、少し乱れを見せ幾本かの解れ毛が、少し上気している額に張り付き、ただでさえ陰りを見せる表情をいっそう哀しげなものとしており、どこか乱れた服装の具合と共に悲壮な雰囲気を紡ぎ出している。
 そして男が部屋を案内するパネルで選んだ部屋へと、半ば引きずられるような格好で連れ込まれていった。


                                    


 ほんの一時間前に、自宅へとかかって来た電話……その電話に呼び出された彼女――永嶋律子は、指定されていた場所に止められていた車へと乗り込む事となった。
 車の中には、律子を待ち侘びていた男が乗っていた……三ヶ月前に、自分を犯した男であった。それ以来、執拗に何度も自分を凌辱している男、すでに誘いを断る術は無く、ガラス細工のように脆くなった家庭の幸せを守る為に彼女は、欲望に満ちた男の呼び出しを受ける度に、何度も肉体を嬲られ続ける事となっていた。
「今日は、良いラブホテルを見つけたんだ、そこでたっぷりと楽しもう……安心しな、ホテル代は俺が出してやるよ」
 そう言いながら、ブラウスの隙間へと手を伸ばし、豊満な乳房を握る。
「あうっ!」
 小さな呻き声を出し、身をよじって男の手から逃れようとする律子……その反応を楽しむようにしながら、男は車を目的のラブホテルへと発進させた。

 豪華……と言って良い室内の造りではあるが、それは何処か白々しく、何かを糊塗する様な厚化粧のイメージを感じさせた。
 そして豪華と言うよりは隠微で巨大なベッド、室内の証明は奇妙なほどに明るく全てを照らし出し、備えられている浴室はガラス張りであった。
「先にシャワーを浴びてこい」
 それが男が部屋に入った時に言った最初の言葉であった。

     

 抗う事を許されず、律子は浴室へと入り服を脱ぎ始める……当然のように、ガラス張りとなっている向こう側では、男がその様子を眺め笑みを浮かべながら見ている。
 服を脱いでいく手が鈍る……鈍るが途中で止める事は出来ない、服を脱ぐ手を止めると催促をするかのように、男がガラスの向うから近寄って来てガラスを叩く、そしてそれに促され再び服を脱ぐ事になる。
 やがて全裸となった律子が、シャワーを浴び始めると、男は浴室の中へと入って来た。ビクリッ!身体を強張らせ、その素肌を隠そうとするかのように両手で自分の身体を抱きしめ、浴室の壁へとあとづさる律子の腕を掴み、男は彼女と一緒にシャワーを浴び始める。
「あっ!うっうぅぅ……あふっ!」
 男の手が、乳房に触れ揉んで行く……流れる温水と一緒にその手が下へと伸び、股間に触れ恥毛を掻き回す様に洗いながら、股間の割目に指を侵入させ嬲る。
「くっ!くふぁっ!」
 その指が動かされ、嬲られるたびに律子は声を喘ぐような声を出し、身体を震わせながら指先に反応していく、自分の身体の上を這い回る腕や股間を嬲る指先を拒もうと、その腕や手を押さえようとするが、その動きは哀しくも儚く、押し止める事すら出来ずに嬲られ続け、その口から喘ぎ声を吐き出しつつ反応し続ける。

 シャワーで濡れたままの身体……その状態で、男は律子をベッドの上に押し倒し、その肉体を本格的に貪り始める。
「あっ……うっくっ!…いやっ…いやぁぁ……」
 微かに漏れ出す抗いの声、その声を聞きながら男は律子を貪り犯す……濡れた肉体が重なり合い、互いの肉体が濡れ動きながら、離れては重なり、重なっては離れ、その動きで付着した水分は蒸発して行くが、新たに湧きで来る汗が互いの肉体を濡れたままにし、滴る水滴が激しい動きをする度に飛び散りばら撒かれ続ける。
 端整に整った優しげな顔が歪む……苦痛のためか、それとも湧き上がって来る快感を堪える為か、ベッドのシーツを掴み上げ、触れる肉体の湿りを擦り付けながら、溢れ出しそうになる声を必死の飲み込もうとするように、握り締めた手を口元へ持って行き、口を押さえるが、漏れ出す声を完全に飲み込む事は出来ずに、その口からは喘ぎが漏れ出して行く……
「うっ!うっっ…あうぁ!ひぃぃっ!」
 その喘ぎ声を昂りに変えながら、男が更の律子の肉体を責め苛み、貪り続けて行く……握り絞められ、揉み上げられた乳房が歪に変わり、膨らんで浮き出して来た乳首が男の口に含まれて、その口中で転がされ刺激される。
「ひっ!はぁうぁっ!」
 柔らかくふくよかな乳房から、やや緩みが出始めている腹部へと嬲り移動して行く、臍の穴が押し広げられその中を舌先で執拗に責められる……夫がした事も無い責め……その新たな感覚に肉体は反応を見せ、痙攣するかのように引き攣りながら硬直し、全身が激しく動揺し大きな声が吐き出される。
「あっ!ああぁぁーーーっ!」
 その吐き出された大きな声に満足しながら、男は責めを更に下の方……下腹部へと移動させ、口に恥毛の感触を感じた瞬間に、その恥毛を口の中に頬張りながら引っ張り上げ、幾本科を毟り取る。

     

「あぎっ!」
 恥毛を毟り取られる痛みに、半ば責めを受入れ始め、快感に流されかけていた律子の理性と羞恥心が戻り、泣く様な声で哀願をする。
「いやっ!いやぁぁ……おねがい、もういや…やめてください、おねがい……」
 男は聴きたかった言葉を聴き、それに満足する……そして、噛切った恥毛を女の顔に吐き出した後で、股間へと再び顔を埋め責め始める。
「あうっ!うぅくぅぅ…あっはぁ!」
 哀願が止み、再び律子の喘ぎ声が漏れ出す……今度は、その声に対して男は満足を覚えながら、ゆっくりと嬲りあげ念入りに準備を施した場所へと、自分のペニスを宛がいながら囁く……
「触れているのがわかるだろ、これをどうして欲しいんだ?言えよ、言ったらその通りにしてやるよ」
 濡れてじっとりとした汁を滴らせ始めている秘所、そこを突付くペニスの硬い感触……律子は言いたくない、言ってはいけないと思っていた言葉を漏らしてしまう。
「入れて……おねがい、もう…いやぁぁぁ……」
 肉の欲望が、理性を捻じ伏せ、恥辱の言葉を吐き出させる……秘所を突付いていったペニスが、ゆっくりと膣の中へと減り込んで行く……
「あっ!ああぁぁ…あっあぁぁーーー!」
 膣に押し込まれるペニス、その押し込まれるペニスによって、突き出されるようにして口から漏れ出す喘ぎ声、何時の間にか女は男に抱きつき身体を強く押し当てる。
 抱きついてくる律子の肉体を、男は受け止めながら深く腰を突き入れ動かし続ける。互いの唇が求め合うように重なり、舌が互いの口の中で絡み合い、互いを愛撫しあいながら離されては、再び求め合いそして重ねられる。腕が互いの身体を求めて動き、律子の爪が男の背中を立てられ、それに応えるように男の掌が乳房を押しつぶすように揉み上げ、膨らんだ乳首をしゃぶる。
 二つの肉体が一つになりながら二つに分かれ、その二つに分かれた肉体が再び一つに重なり合う……それが何時果てるとも無く繰り返された末に、男が呻くような声を漏らし、腰をいっそう深く深く突き入れ最後の瞬間を迎えようとする。
 今までに何度も胎内へと射精され続けている……それでも女は、朦朧とした快感の中で、許しを請うかのように哀願した。
「あうっ!あぁぁ…おねがい、外で…膣にはださな…あっうくっ!」
 男はその言葉を聞きながら、律子の一番深い場所に欲望を吐き出し……最後の一滴まで、注ぎ込み尽くした……


                                    


 ベッドの上……仰向けに横たわる男が、律子に事後の始末を付けさせている。
 横たわった男のペニスを口に含みながら舐めあげ、付着している精液と愛液の残滓を舐め取っているが、口の中に含んだペニスはムクムクと膨らみながら硬さを取り戻し、再び欲望が形となって吐き出されるのを予感させている。
「おい、早く始末をしないと何時まで経っても終わらないぞ、もう少ししたら子供が幼稚園から帰ってくるんだろ」
 確かにあと二時間もすれば子供が幼稚園から帰って来る……律子の口の動きが早くなり、舌の動きがペニスに絡み付く、グボッグボッ!と言う淫らな音が室内漏れ聞こえだす。
 必死に奉仕をし続ける律子の視線と、自分に奉仕をする律子を見る男の視線が一瞬重なる。慌てて目を伏せ奉仕を続ける律子の姿を見ながら男は笑みを浮かべ、律子の頭へと手を伸ばし股間に顔を押し当てる。
「んぐっ!ぐぅっふぐぅっ!」
 呻き声を上げる律子の口中に男の欲望が吐き出される。その全てを嚥下させようとするかのように男は、呻き声を上げ続ける律子の頭部を押さえつけ、快感に腰を震わせながら欲望を吐き出し続けた。
 やがて欲望を出し切った後に、押さえ付けていた頭部を男は離す……押さえ付けられていた律子の頭が、ゆっくりと持ち上がり男を見る……飲み切れずに唇の端から垂れだしている精液、その残滓を付着させた律子の哀しげな顔を、男は嘲笑うかのように見返した後、律子の身体を抱え上げると浴室の方へと向かった。

 流れ出るシャワーを浴びつつ、男は律子の身体を再び弄りように嬲る。
 背後から抱きしめながら、廻した右手で乳房を揉み、残る左手を口の中へと入れ舌を指で嬲り、開け広げた口の中にシャワーの温水を飲み込ませ、咽させる様子を楽しむ……口から引き抜いた指先を身体に這わせながら、乳房を揉んでいる手と一緒に下半身の方へと下ろし、背中に口付けをしつつ尻の割目を押し広げ、剥き出しにした肛門にキスをする。
「あひっ!」
 柔らかな肛門の粘膜にされるキス……舌が肛門を舐めしゃぶり、そして指が中へと侵入して行く
「いぐっ!ぎぃひぃぃっ!」
 侵入した指が中で捏ねられ、そして引き抜かれる。
「こちらは、この次だ……綺麗にしておけよ、いいな」
 侵入させた指を舐めながら、男は言う……そして、滝の様に流れ出るシャワーに、座り込んだ律子を残して、男は浴室から出て行った。

 服を身に着ける律子、その一部始終をベッドの上に寝転がりながら見ている男……やがて身繕いを済ませた律子が、いまだに服を着ていない男に近寄り言う。
「もう、おしまいにしてください、忘れますから……お金が欲しいなら、何とかしますから!」
 涙を見せながら叫ぶ律子を、面白そうに見ながら男は言う。
「最初の時に言ったろ、俺は奥さんに一目ぼれしちまったんだ、恋愛感情を金でどうにかできるはずが無いだろう」
「やめてください!私は、あなたの事が嫌いです!触れられるだけで、寒気がします」
 律子の手が、男の顔へと叩きつけられ甲高い音を立てるが、男はその手を掴む。
「痛いな、でもそんな事は無いだろ、さっきはあんなに感じて、いい声を出しながら愛し合ったじゃないか」
「いやっ!放して、その手を放して」
 捕まれた手を振り解こうとする律子、だが逆にベッドに寝そべっている男の方へと引き込まれてしまう。
「やっぱり二回くらいじゃ駄目だ……もう一回付き合ってもらおうか、愛してるぜ奥さん……」
「あなたと言う人は……あっ、やめて!はなしてぇ、いやぁぁーー!」
 再びベッドに押し倒される律子、抵抗の声を上げながらも服を引き剥がされ、再び犯されていく律子……やがて抵抗の声は、啼く様な哀願の声へと変わり、何時しか喘ぐような押し殺した声へと変わって行き、濃密な肉の交わりの音が再び聞え始めた。


                                    


「おめでとうございます。妊娠三ヶ月目と言う所ですよ、奥さん」
 そう医者言った瞬間、傍らに居た夫は律子の身体を抱きしめ、喜びを露にする。だが、当の律子は足元が崩れ落ちて行くような感覚を体験していた。

      


 体調の不良を感じない訳ではなかったが、それは自分の上に降りかかっている事に対する悩みと問題によって引き起こされている事だと思っていた。
(と言うよりは、そうだと思っていたかったのかも知れない……)
 だが不意の立ち眩みを起こし倒れこんでしまう。その時に休みを取っていた夫が傍にいた事は、ある意味不幸と言えた。
 身体を気遣う夫に連れられ、訪れた病院で告げられたのは、自分が妊娠していると言う事実……二人目の子供を妊娠したことを無邪気に喜ぶ夫であったが、律子にとってそれは喜ぶべき状態ではなかった。
 妊娠三ヶ月……それは、あの男に初めて犯された時期と一致しており、その直後にも何度も犯されていたのである。無論の事、何も避妊の処置などする筈も無く……
 犯された直後に、自分なりに洗浄とかはしたが、はたしてそれで充分であったか確証は無い、確かにその前後に夫に求められ、自分が犯された事を悟られまいと考え、求めに応じてSEXをした覚えもあるが、本当に妊娠した子供が夫の子供であるか、確証することは出来なかったのだ。
 無邪気に喜ぶ夫の姿……それを見ながら律子は、破局の時が音を立てながら近づいて来るのを感じずにはいられなかった。



                                         つづく



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