機動戦士ガンダム
                              MSイグルー
                              一年戦争秘録

                             「遠吠えは落日に染まった〜異伝」
                      【 モニク・キャディラック特務大尉秘録 】



                               『 戦場における運命 』


そのザクUの右脚部は激しく損傷していた。
突如現れたジオン軍の巨大戦車との戦闘により、損傷したのだが、おかしな話である、同じジオン軍の兵器であるザクUと巨大戦車が何故戦闘に及んだのか?
答えは、そのザクUが連邦軍に鹵獲され、使用されていたザクであったからだ、そのザクUが六機と連邦軍の61式戦車が二両と言う部隊と遭遇戦を繰り広げたのは、ジオン軍の試作モビルタンク『ヒルドルブ』であった。
激戦の末に、ただ一機のザクUだけが生き残るが、生き残ったとは言え左脚部に重大な損傷を受けており、ジオン軍の勢力圏である北米大陸のこの地から友軍の勢力圏へと脱出する事は不可能に思われた。
事実、そのザクUのパイロットにして部隊の隊長である、フェデリコ・ツァリアーノ中佐は生きて帰る事など考えていなかった。
目標は、ザクUのモノアイが捕らえているコムサイ、たぶん巨大戦車を輸送してきた機体に間違いはない筈だ、あのコムサイを破壊しなければ、自分の…いや部隊の勝利が、確定されないと信じ込んでいた。
5名のザクUのパイロットと61戦車の搭乗員達、全員が自分の愛すべき部下であった。
それを、あの巨大戦車が皆殺しにしたのだ、それを運んできたコムサイも同罪である、あれを破壊しない限り勝利者にはなれないし、死なせた部下達に申し訳も立たない!
ザクUはよろめきながらコムサイに向かって行く、その背後で巨大戦車ヒルドルブが死に切っておらずに、自分に向けて主砲を向けているということを知らずに…
「ペンター…マリオン…ミッチェル…ジャクソン…スチュアート…ゴルゴノフ…アドルファス…」
ザクUのコクピットの中で、ツァリアーノは死なせてしまったザクUと61戦車のパイロット達の名を呟く、奴らの陽気な言葉が思い出される、酒癖が悪かったが気のいい奴だったペンター、結婚したばかりのマリオン、寡黙だが常に信頼できたミッチェル、陽気な性格で場を和ましてくれたジャクソン、女たらしだが憎めないスチャート、生真面目だが親切だったゴルゴノフ、そして部隊の中で一番若く、女と言う者を知らずに死んだアドルファス…みんな俺の家族であった。
死んだ部下達の事を思い出した事により感情が昂ぶったのか、ツァリアーノはザクUの操縦をミスする、普通の状態なら姿勢制御コンピューターが自動的に体勢を立て直してくれたのだろうが、脚部に激しい損傷を抱えていた機体は、そのまま転倒してしまう。
その瞬間に、倒れこんだザクUが今まで立っていた空間に、ヒルドルブが放った巨弾が轟音と共に空間を切り裂いていった!
「なんだ!」
偶然が幸いする、戦場に置いて幸運と不運を振り分ける運命の何かが、ツァリアーノに手を差し伸べ、ヒルドルブのパイロツトの手を拒絶した瞬間であった。
「この死にぞこないがぁぁーーー!」
ツァリアーノのザクUが転倒したままで、120mmマシンガンの残弾の全てを巨大戦車へと叩き込む!
今度こそ巨大戦車は完全に沈黙し、その活動は停止した…巨獣の咆哮は沈黙し、息絶えたのである、ツァリアーノは転倒していたザクUを立ち上がらせて再びコムサイへと向かう、120mmマシンガンの弾丸は既に撃ちつくしている、しかし近距離まで近寄れば手持ちのヒートホークで止めを刺す事が出来る筈だ、ふらつくザクUをコントロールしながらツァリアーノは再びコムサイへと向かい始める、すでに邪魔者はいない…

コムサイのコクピットの中で、その様子を見ていたオリヴァー・マイ技術中尉とコクピットの計器盤に拳を叩きつけるモニク・キャディラック特務大尉は、同じ事を考えていた。それは不運と言う事を、もしもあのザクUが転倒しなければ、ヒルドルブが放った砲弾はザクUを粉砕し勝負は逆転していたであろう、しかし現実は偶然の出来事により勝敗は決してしまった。
「コムサイにはザクに対抗できる装備はありません、脱出をすべきです」
キャディラックはマイの言葉に従うべきであったが、壮絶とも言えるヒルドルブの最後を見た彼女に逃げるという選択肢は消えていた。
負犬と軽蔑したソンネン少佐の闘い、狼は腐っても狼であったのだ、2年前に初めて出会った時と同じ狼であったのだ!
「考えがある!」
そう言うなりキャディラックは、パイロットスーツのヘルメットを被り直し、コムサイの計器に向かって必要とされる処置を手早く確実にしていく、確かにコムサイには対MS用の装備は無い、しかしまったく武装が無いと言う事はでは無かった。
固定武装としてコムサイの機首に搭載されている二基のバルカン砲を直撃させれば、迫り来るザクUを撃破することは可能な筈だ、ただしバルカン砲は前方に固定されているので、コムサイ自身を動かして射軸をザクUの方に向けなくてはならない、幸いにコムサイが不時着した場所はコンクリートサンドと言われる程に砂が硬化している地帯であり、各部に設置されている姿勢制御バーニアを使えば不時着状態のこのコムサイでも、機体を動かして機首に装備されているバルカン砲をザクUに向けることは可能だろう、しかしよほどタイミング良くバーニアを噴かせなくてはならない、まず成功率は良くて半分以下と言うところだ。
マイとしては、脱出する事を勧めたかったが、計器をチェックしているキャディラックの姿を見ると、それに従うしかない、そしてマイもヘルメット被り直し作業の補佐を開始した。

ザクUは、ようやくにコムサイの傍らまで辿り着く、そして腰に下げていたヒートホークを構えると、燃料タンクへ止めの一撃を加えるために取り付こうとした瞬間!突如コムサイが機体の各部にある姿勢制御バーニアが轟音を上げ噴射され、コムサイを急激に機動させたかと思うと、その機首を強引にザクUへと向けた!
――まずい!――
それは、戦場で鍛え上げられた勘であった、残量が少ないバーニアを思いっきり噴かせ、その場で緊急回避のジャンプをするが、右脚部の損傷により素早く機動できない!
――くそっ!間に合うか――
ガンガンとザクUの機体に直撃音が響くが、それはすぐに止む、何とかジャンプがギリギリで間に合ったのだ、いままでザクUがいた空間をコムサイから発射されたバルカン砲が薙ぎ払ったいるのがモニターで確認できる、しかしバランスを欠いたジャンプをしたせいであろうか、持っていたヒートホークを取り落とし、丸腰状態となってしまった。

失敗した!
絶妙のタイミングで吹かすことに成功した姿勢制御バーニアにより、ザクUをバルカン砲の射線上に置く事に成功したものの、ジャンプされて逃げられてしまう。
何発かは命中したようにも見えるが、致命傷を与えたとは思えない、もはや打つ手は尽き果てたのだ、こうなっては脱出をするしか道は残されていない
「キャディラック特務大尉、脱出しましょう!」
マイが隣のパイロットシートに座ったままのキャディラックに声をかけて、脱出を促す!
そして自分も脱出をするため、シートベルトを外そうとした瞬間、ズシン!としたショックがコムサイを揺すり、そして次の瞬間にコムサイのコクピット、その正面の風防ガラスの向こうにザクUのモノアイが紅く輝くのを見た。
そして、次の瞬間に激しい衝撃受けてマイは意識を失った…

武器の全てを失ったザクUであったが、最後に残された武器が一つだけあった、それはザクUの腕である、モビルスーツが戦車や対地攻撃機などの通常兵器と違う最大の点、それは自在に動くマニピュレーター…腕である、これがモビルスーツの持つ最大の強みといえる、たとえ全ての武器を失ったとしても、コクピットをこの腕で叩き潰せば勝てる!
最後に残されたバーニアを吹かしコクピットに取り付く、モノアイで内部を確認するとパイロットシートに二名の兵士が座っている。
「これで俺達の勝利だ!」
そう吼えながらツァリアーノは、ザクUの腕をコクピットへ振り下ろした。


                                  『 南極条約 』


このまま倒れていたいと言う気分であったが、耳に飛び込んでくる悲鳴でオリヴァー・マイ技術中尉は意識を取り戻す。頭がガンガンするし、身体も各部が痛い上に、そして怪我でもしたのか身体が自由に動かない…いや、身体が動かないのは縛れているからだと気がつく、そして耳の飛び込んでくる断続的な悲鳴…
『キャディラック特務大尉の悲鳴なのか?』
痛む頭を動かして、周囲を見回したその先に、全裸で四つん這いさせられて背後から男に犯されている、モニク・キャディラック特務大尉の姿をマイは見つけ出した。

ザクUの組まれた腕が、コムサイのコクピットを叩き潰す。ただし宇宙船でもあるコムサイの頑丈なコクピット周りは、ザクUの一撃では完全に破壊する事は出来ない、続けざまに二檄目を加えようとした時に、ザクUの機体に限界が来た。
両腕を振り上げた姿勢のまま、ザクUはその機能の全てを緊急停止し、再起動不可能状態に陥ったのだ。
「くそっ!」
ツァリアーノは悪態を吐きながら、ザクUの再起動を試みるがコンソールパネルは、全てレッド表示を示し再起動不可能を提示したままである。
「白兵戦かよ!」
ツァリアーノは機体に備え付けられているサバイバルキットと自動小銃を取り出し、コクピットの開閉スイッチを入れるが反応が無い、仕方なくシートの下にある爆発ボルトによるハッチの強制排除を行い、ようやくにコクピットから脱出する事に成功した。
ザクUの機体を滑り降りながら、叩き潰したコムサイのコクピットへと入って行く、最後にザクUのモノアイで確認した二名のジオン兵の生死を確認するためである、もしも生きていたなら止めを刺してやるつもりであった。
半壊したコクピットのパイロットシートに座ったままの状態で二名のジオン兵は気を失い倒れていた。
「はっ!さすがは宇宙人だけあって、ゴキブリ並みの生命力だな、しかしそれもこれまでだ!」
ツァリアーノが手に持った自動小銃を構え、パイロットシートで意識を失っているジオン兵に弾丸を射ち込もうとした時に気がつく、パイロットスーツの上からでもわかる胸の膨らみに…
「女なのか?」
油断無く自動小銃を構えたまま、ツァリアーノがジオン兵に近づき頭部を覆い隠しているヘルメットを脱がす。そして、その下から現れたモニク・キャディラック特務大尉の意識を失っている素顔を見つけた。
ふと、死なせた部下の中で一番若かったアドルファスの事を思い出す…まだ女を知らないと言っていた奴、この作戦を無事に終了させたら女を奢ってやり、脱童貞パーティーを開いてやろうと部隊の皆で画策していたのだが、今はそれも適わぬ事となった…
ツァリアーノは構えていた自動小銃を降ろし、意識を失っているキャディラックの美しい顔を見ながら呟くように言う。
「アドルファスよ…せめてもの供養だ、俺を通して女て奴の素晴らしさを教えてやるよ…」
軍人であるツァリアーノなら、その様な事を考える事は無かったであろう。しかし部下を全滅させられたツァリアーノは軍人である事を既に辞めていた、だからツァリアーノは幾らでも残酷になる事も狂気に身を委ねる事も簡単に出来た。

                   ******************************

ザクUのモノアイが紅く輝く、それが自分の意識の中にある最後の光景であった。
頭部を小突かれる衝撃で、モニク・キャディラック特務大尉は意識を取り戻し、そして状況が最悪である事を知った。
自分の頭を小突いていたのは、連邦軍兵士が持っている自動小銃であり、その銃口は目覚めた自分に向けられていた。
「南極条約は遵守してくれるのでしょうね?」
とりあえず捕虜となったのは間違いない状況だ、だとしたら自分の地位を確認して置かねばならない、南極条約で締結された捕虜(特に上級士官に対する)の取り扱いに遵守した扱いを受ける権利が自分はある筈だ。
連邦兵が自動小銃を突きつけながら指示を出す。隣のパイロットシートで、意識を失っているマイを担いで、コムサイの外に出ろという指示であった。
すでに手足を縛られ拘束されているマイを担ぎ上げて、コムサイの機外へと自動小銃を突きつけられながら出る、そしてコムサイの機体により影となっている場所へ座らせられ、尋問が始められる、所属部隊及び階級それと、あの巨大戦車…試作モビルタンク・ヒルドルブの事と作戦目的などを尋問されるであろう、キャディラックはそれらの尋問に対して虚実を交えながら、自軍にとって不利にならない様に返答しなければならなかったし、胸に下げていたドッグタッグ(認識票)は、すでに連邦兵に回収されているので、それに添った形での受け答えをしなければならい、なかなかに頭を使う事でもあった。
「ジオン公国 総帥府所属モニク・キャディラック特務大尉…」
所属国家と官姓名…これ以上の事を答える義務は、捕虜となった自分には無い筈だ、南極条約でもそのことは明記されている筈である、ただしこれからの筧として尋問に対して慎重に返答しなければならないであろう。
連邦兵は、どこか醒めたような表情を見せながら、キャディラックの返答を聞くが、突きつけていた自動小銃の方向をキャディラックからマイの方に向けて言う。
「これからお前に対する質問に、正直に答えなかった場合、あのジオン兵の身体に鉛の銃弾をプレゼントする事にする、それを肝に銘じておけ」
連邦兵の言葉にキャディラックは愕然とする、この連邦兵は何を考えているのだろうか、捕虜に対する取り扱いを大いに逸脱しているだけでなく、常識でも考えられない言葉であった。
「貴方、気は確かなの、捕虜に対してその様な行為をする事は、捕虜に対しての残虐行為を禁止している南極条約で禁止されている筈よ!」
ヒステリックに叫ぶキャディラックに向けて、自動小銃が三点バーストで発射され、キャディラックの周囲で土煙をあげて弾ける。
「きゃっ!」
自動小銃の発射音と弾ける銃弾に対して悲鳴をあげるキャディラックを見ながら、連邦兵は独り言のように言う。
「ペンター…マリオン…ミッチェル…ジャクソン…スチュアート…ゴルゴノフ…アドルファス…皆良い奴だった、俺の家族のような奴らだったんだ、それを御前らは皆殺しにしやがった!」
「そっそれは、お互い様でしょう!貴方達だって、ヒルドルブのソンエン少佐や、補給基地の兵士達を殺したわ!」
キャディラックの反論に連邦兵は、表情を激変させて叫ぶ!
「貴様ら宇宙人野郎の命が千あっても、俺達地球人の命一つ分の値打ちもねえんだよ!」
それは強烈な差別意識の発露だったかも知れない、スペースノイドとアースノイド…互いに差別しあい、相容れない二つの人種の宿命だったのかも知れない
「さて、尋問の開始だ…まずは、御前の身長、体重とスリーサイズを言って貰おうかな?」
再開された尋問、しかし最初にされた質問はキャディラックの予想外の質問であった。
「身長?体重?スリーサイズ?」
思わず聞き返すキャディラックに対して連邦兵は頷く、そして同じ質問をしてくる。
「そうだ、御前の身長と体重、そしてスリーサイズを言え、下手な見栄でサイズを大きく言わないようにな、後で見た時にガッカリするのは嫌だからな、くくく…ちなみにこれは、俺の趣味だ」
自分が言った下手の冗談が面白かったのか、連邦兵は笑いながら銃口をキャディラックに向けて言う。
キャディラックは、この連邦兵が狂っている事を確信した。そして自分がこの先どの様な目に合わせるのかも、おぼろげながら想像する事が出来たが、その想像を否定しながら、取り敢えずは抵抗の無意味さを感じ取り、質問に答える事にした。
「身長は167cm、体重は…52kg、バストは…」
さすがに言い淀むキャディラックであったが、無言で向けられている銃口が次の言葉を強制的に言わせる。
「…バストは86cm、ウェストは59cm、ヒップが85cmよ!」
最後に吐き出すようにしてスリーサイズを言うキャディラックの目に、屈辱の為だろうか涙が滲み出す。
事実、エリートとして士官学校を卒業後すぐに、総帥府に配属されたから、このような屈辱的な目にあった事は無かった。
「ほ〜ジオンのエリートさんは、なかなか男好きする身体を持っているようだな、その身体でジオンのお偉いさん…ギレンの野郎にでも抱かれていたのか?」
言われた瞬間に頭に血が上る、自分が言われる分にはまだ我慢が出来たが、敬愛するギレン総帥を侮辱された事は我慢ならない事であった。発作的ともいえる行動で、キャディラックは銃を向けられている事も構わずに連邦兵に飛びつくが、強かに銃の台尻で打ち据えられてその場に這い蹲る結果となった。
砂地の地面に這い蹲るキャディラックの後頭部に、自動小銃の銃口が突きつけられ、ゴリリと後頭部に押し付けられる。
「最後の質問だ…」
その姿勢のままで、連邦兵は言う。
「お前…処女か?」
キャディラックは、目を閉じ歯を食い縛り、その質問に答えようとしない、この男は自分を結局は殺すであろうと確信した彼女は、これ以上の屈辱よりも、栄光あるジオン公国の士官として死ぬ事を選びだしたのだ。
何時までも答えようとしないのに業を煮やしたのか、連邦兵は銃口を後頭部から離すと、うつ伏せになっているキャディラックに言う。
「どうやら自分が死ぬ覚悟は出来ているようだな、だが仲間が死ぬのを見る覚悟はあるかな?」
そう言うと、連邦兵は意識を失ったまま倒れているマイに向けて自動小銃をむけて言う。
「最初に言ったよな、お前が答えなければ、あいつが死ぬと…」
「やめてぇ!」
足に縋り付いてくるキャディラックを乱暴に蹴り飛ばして、そして銃口を向けながら連邦兵は再び問う。
「最後にもう一度聞くが、お前は処女か?」
自分が死ぬ覚悟は出来ていた。しかし目の前で、開戦からの仲間である…たとえ、何時も喧嘩ばかりしていた相手てであろうとも、殺されるのを見過ごすのは、自分が死ぬことよりも嫌であった。
「…処女です…」
キャディラックは、質問に答えた後…嗚咽を漏らし泣き始めた。


                                    『 凌辱 』

「…処女です…」
その答えをツァリアーノは満足げに聞く、そして心の中で呟く…
『アドルファス、上等な供養の相手が見つかった』と…
銃口を向けたままツァリアーノは、キャディラックに命令をする。
「立て」
泣きながら立ち上がるキャディラックを、ツァリアーノの一つしかない眼で値踏みをするように見る、そして次の指示を出した。
「着ているパイロットスーツを脱げ」と…

ある程度は覚悟していた事であった、だからこうなる前に死ぬ覚悟を一度は決めたのであるが、その機会は失われてしまっていた。
キャディラックは、パイロットスーツを脱ぎ始める、すでにマイを殺さないためではなく、自分が殺されない為にだ、不思議なものである、一度死に機会を逃してしまった彼女は、今度は逆に死と言うものを極度に恐怖し始めていた。
その恐怖が支配し始めた精神は、連邦兵の命じた屈辱的な指示に身体を従わせた。
パイロットスーツのファスナーが引き降ろされ、それに従いその中身が露出していく、簡易宇宙服としての機能も持ち合わせているパイロットスーツの下には、通常の軍服を着込んでいるのが普通であり、キャディラックもヨ−ツンヘイムで普段来ている軍服を着用している、ただし下半身の方は普段着用しているスカートではなく、スラックスを身につけているだが…そして、彼女はパイロットスーツを脱ぎ終えた。
パイロットスーツで隠されていたキャディラックのボディラインが、軍服越しだが露になる、それを見たツァリアーノは、口笛を吹いた後で更に指示を出した。
「それじゃ、その軍服の下の方だけを脱いでもらおうかな、もちろん下着も一緒にだ」
ビクン!とキャディラックの身体が強張るように震え、そのまま凍りついたように固まり、動かなくなる、それを見たツァリアーノは、自動小銃を構えるとキャディラックに向けて発砲する!
「ひっ!」
その場にへたり込むキャディラックを見ながら、ツァリアーノが大声で再度命令する。
「脱げ!」
弾かれた様に立ち上り、スラックスと一緒に下着も脱ぎ捨てて、下半身を丸出しにした格好で立ち尽くすキャディラックの姿を見ながら、男は笑い出す…そして、笑いながら、手に持っていた自動小銃を放り出し、キャディラックに襲い掛かった。
「あっ!ひぃっ!いやぁぁーーー!!」
襲い掛かられたキャディラックは、反撃をする暇も無く組み伏せられ、剥き出しとなった下半身に手を伸ばされ、乱暴に弄られた。
「処女だそうだが、本当にそうか今から指を入れて調べてやるよ」
ツァリアーノは、恐怖で乾き切っているキャディラックの秘所へと掌を這わせ、指先を膣口に捻じ込むように侵入させ、膣孔の中で抉るようにしながら蠢かせる。
「痛い!痛いぃぃぃ―――!やめてぇ、おねがいやめてぇぇ!」
すでにモニク・キャディラック特務大尉と言うジオン公国のエリート軍人は存在してない、ただ男に組み伏せられて肉体を犯される女が存在するだけであった。
膣口に突き入れた指先の抵抗感が、この女が正直者…処女であった事を教えてくれる、膣孔で蠢かしていた指先を引き抜き、その指先をキャディラックに見せながら言う。
「お前は意外に正直者だったんだな、確かに処女のようだ…ほれ、指先に血が付いている」
突きつける様にして見せられた指先、その先端部分が血で赤く濡れている、それを見た瞬間にキャディラックは呻くような泣き声を出し始めた。
「うっ…ぐぅぅ、うぐっ…ああ…えっぐぅぅぃぃ…」
『良い泣き顔だ…』
咽び泣く顔を見ながら、そう思う…そして、湧き上がってくる欲望…気がついた時には、軍服の上着を引き裂き、その白い乳房を剥き出しにしていた。
「いやっ!いやぁぁーーーやめて、たすけてぇ!」
引き裂かれた軍服から剥き出しにされた乳房が揺れ動き、男を誘うようであった。そしてツァリアーノはその誘いに乗り、その乳房にむしゃぶりつき、その白い乳房に歯形を刻み込んだ。
乳房に走る痛み、キャディラックは必死に抵抗をする、覆い被さってくる連邦兵の身体を叩き、顔を引掻こうとするが、逆に顔を何発も叩かれてしまう。
「ひっ!ぎぃあ!あぐっ!」
唇が切れ血が滲む、纏め上げられていた髪が、叩かれた衝撃で解け乱れ顔にかかり、汗で顔に張り付く、圧倒的な暴力により捻じ伏せられ抵抗を封じられたキャディラックの乳房を、ツァリアーノは再び揉みあげて乳首を舐る…抵抗は既になくなっていた。
烈しい抵抗の声は、すでに出せなくなっていた…ただ、微かな哀願の声を搾り出すように言い、男の慈悲を請うだけとなている、たとえその哀願が無駄だと知りながらも…
乱暴に残りの部分の軍服を引き裂いて、全裸に引き剥いたキャディラックをツァリアーノは、四つん這いにさせてしりをこちら側に向けるように命令する、言われるままに四つん這いになり、尻を向けるキャディラックの姿を見ながら、ツァリアーノはズボンとトランクスを脱ぎ捨てた。
「良い尻じゃねえか、白くて柔らかそうで…吸い付くような手触りだぜ…」
ぺたりとキャディラックの剥き卵のような尻に手が触れ、縦横に撫で擦るながら股間を嬲る、膣口に指先が触れてクチュクチュと押し開き、縦に広げ横に広げ少しずつ孔を広げていく、そして顔を押し付けて舌先でベロンと舐めあげて行く
「ひっ!ひぃぃ…はひっ!」
悲鳴なのか、喘ぎ声なのか、どちらとも言えず、また同時にどちらでもある様な、奇妙な声を出しながら、キャディラックは堪え…そして脅えながら次の瞬間を待っている、次の瞬間…自分の胎内に突き込まれるであろう肉の塊の感触を…
ツァリアーノが顔を尻から上げ、そそり立つペニスを膣口にあてがう、先端にぬるりとした感触を感じ、口の周りをテラテラに粘液で光らせながら言い放つ。
「アドルファス、お前の供養だ!」
次の瞬間に、ズンとした衝撃と共にキャディラックの膣口にペニスが突き込まれた。
「うげぇっ!」
それは痛みと言うよりも、下半身に突き込まれたペニスにより内臓が突き出され、口から吐き出されたような感覚であった。そして次の瞬間に肉を裂かれた激痛が頭に駆け上がってきた。
「あぁぁあっあ―――いぎゃあぁぃぃ―――!!」
口から吐き出される絶叫!はたして本当に自分が出しているかも判らなくなるほどの叫び声、ただ身体を貫く激痛が現実である事を知らせ続けていた。
ナイフで、しかも刃が無い鈍らのナイフで身体を引裂かれていく激痛、肉体を引裂きながら、それが胎内の奥に奥にと侵入してくる、その肉の凶器の感触が、烈しい痛みと共に生々しく刻み込まれていく…
「ぎゃあっぁぁーー!!いっいぃ!ひぃいぎぃぃーー!!」
 裂けるかと思われるほどに大きく広げられた口からは、意味を成さないぶつ切りの音が吐き出され続け、血走り見開かれた瞳からは、涙が零れ飛び散る…
自分の肉体の一部が、肉を引き裂きながら女の胎内に侵入していく感覚、そして耳に飛び込んでくる絶叫、その声を聞きながら激しく腰を突き動かし、さらに肉の凶器を埋め込んで行き、更なる悲鳴を吐き出させながら、背後から覆い被さりながら乳房を揉み身体を縦横に嬲り尽していく…
 激しい腰の動きにより、入口である膣口しか濡れておらず、内部はまだ乾ききっていた秘部から破瓜の血が流れ落ちて、太腿を伝い落ちていき、砂の大地に破瓜の血を染み込ませていく
「ははは、アドルファス!女だぞ、女だぞ…こんあ良いもんを知らずに死にやがって、殺しやがって!」
キャディラックを犯しながら、脳裏に死んだ行った部下達の顔が次々に浮かんでくる、どいつも良い奴だった…怒りが再び湧き上がり、その怒りはより激しくキャディラックの身体を責め立てる原動力となった。
胸を揉む手に力が入り、その豊満な乳房に爪をたて皮膚を突き破る、乳首を指の間に入れながら引き千切るようにしながら引き伸ばし強引に嬲る、白いうなじに舌を這わせながら肩口を噛み歯型を刻み込み血を滲み出せる、その度にキャディラックは悲鳴を上げ身体を震わせ足掻き続ける、激しい責めから逃げ出そうと自由な両手で地を掻くが、後からがっちりと押さえ込まれた格好では逃げる事も適わずに、ガリガリと固い砂地に爪を立てるこ事しか出来ず、その立てられた爪も何枚かは剥れて、血を滴らせている、すでに反撃と言うことは考えられなくなっており、この場から逃げ出すことしか考えられない、もちろんツァリアーノはキャディラックを逃がす気など無く、絶命するまで…いや、絶命した後もその屍を犯し続ける気であった。
「いやぁぁ―――!もうやぁぅぅ、助けて、誰か助けてぇぇ――!」
悲鳴をあげ続けながら足掻くキャディラックに救いの手が現れる可能性は無かった。
「よし、出してやるぞ、しっかりと地球人の精液を味わえ!こにお宇宙人野朗が!」
接合している箇所を中心にして、尻に腰を打ち付けるように激しく動かす。
「あぁぁ!!いやっ、やめてぇぇ!そんなの、いやぁぁーーー!」
キャディラックの悲鳴、それが合図とでも言うようにツァリアーノは膣孔の奥深くに、己の欲望の汁を吐き出し充満させ続けた…
「へへへ…たっぷりと出させて貰ったぜ…宇宙人の姉ちゃんよ…」
熱い塊が胎内で広がっていく…それを感じながら、キャディラックは微かに残っていたジオン軍人としての誇りが消え去るのを感じた。
引き抜いたペニスは、まだ硬度を失う事無くそそり立っている、尻を持ち上げた格好で、うつ伏せになったまま無様に倒れ付しているキャディラックを蹴り飛ばし仰向けにさせると、ツァリアーノはその身体の上に覆い被さる再び犯し始める。
「アドルファスの供養は済んだ、今度は俺が楽しませてもらうぜ…」
男の言葉にキャディラックは脅える、犯されるのはもう嫌だった、あんな苦痛は味わいたくなかった。
「いやぁぁ―――、もうういやぁぁっ!お願いし、もうやめて、お願いしますから!」
必死の哀願を繰り返しながら足掻くキャディラック…その引きつり脅えきった顔を見ながらツァリアーノは言う…
「そうか、もう嫌なのか…だったらこれ以上犯るのは、勘弁してやるから、その代わりにお前さんの胸で、俺を満足させるんだ、そうすればこれ以上は勘弁してやるよ」
「えっ?胸で…?」
 男の言った言葉の意味が理解できないのか、キャディラック思わず聞き返す。
「ちっ!パイズリしろってんだよ、パイズリ!それくらいわかるだろうが!」
男性経験は無くても、知識としてそのような行為があることは知っている、否も応も無かった…犯される事に比べれば、まだましな行為に思えた。
「わかりました、それで勘弁してくれるのですね…」
「勘弁してよるよ…でもな、パイズリで満足できなかっら、その時は尻の穴を犯させてもらうぜ!」
そしてキャディラックは、胸による奉仕を始める、満足させなければ尻の穴を犯すという男の言葉に脅えながら、必死になり両の乳房で男の男根を挟みこんで奉仕する、豊満な乳房に挟み込まれたペニスが、ちょうど目の前で蠢くのが見て取れる。
「おらっ!舌で舐めるくらいの芸をしなと、満足しないぞ!」
頭上から浴びせかけられる罵声に脅えながら、舌先でペニスをチロチロと舐めながら、両の乳房で挟み込んで、少しでも早く、この屈辱の行為を終わらせるために、キャディラックは必死に奉仕をしペニスを刺激した…
両の乳房に挟み込んでいるペニスが、ビクビクと脈打つように蠢くのがわかる、もう少しで、射精するはずだ…そうすれば、男は満足する筈だ、必死になりさらに刺激を与え、一刻でも早く、射精を促そうとした瞬間にツァリアーノは、両の乳房の間からズルリとペニスを引き抜いた。
「残念!時間切れだ…」
「そんな、もう少しで…いやぁぁーーーーぐっ!!」
 ツァリアーノは、硬く屹立した男根を見せつけながら、今までパイズリをさせていた女を蹴り飛ばして悲鳴を中断させる、そして倒れている女の腰を掴み上げたかと思うと、まだ出血が続いている膣口から血と粘液、そして漏れだしてきた自分の精液を掬い取ると、キャディラックの肛門に塗りつけ、指先を肛門の中に差し込む
「けひぃぎぃぃーーーー!!」
突き入れられた指先が肛門を押し広げる、そしてパイズリによるか硬く勃起したペニスをその孔に突き入れた。
「がぁぁぎゃぁぁーーー!!」
処女を奪われた時に吐き出した以上の悲鳴をキャディラックは吐き出す、それは悲鳴と言うよりも断末魔の叫びの様であった。本来出口である場所に、逆方向から何時も出しているのと、違いの無い太さの異物が逆流して侵入してくるのだ、それは想像できる範囲の痛みではなかった。
「力を抜け!半分も入ってないぞ!」
ツァリアーノが指先を肛門に差し込んで押し広げ、さらにペニスを突きこんでいく、ジリジリと肛門に沈み込んで行くペニス、それとともに避けていく肛門からは、血が滴り落ち始める。
「ぎっぃぃ…いあ!抜いぃてぇ…ぎぎぃぃ――…!!」
キャディラックの呻くよう哀願を無視し、ツァリアーノは更にペニスを沈み込ませて行き、ついには完全に突きこむ、そして腰を揺り動かしピストン運動を開始し始める。
「ひっぎぃっ!あぁあぎぃぃ!いだぁい!いがぁぁーーいぃぃ――!」
呻き声、叫び声、悲鳴、哀願…あらゆる声を縛りだしながら、キャディラックは尻の穴を犯され続ける、何時果てるとも無く…


                                   『 報告書 』


オリヴァー・マイ技術中尉が意識を取り戻した時、最初に見たのは男に犯されている、モニク・キャディラック特務大尉の姿であった。
思わず出しそうになった声を飲み込んで、キャディラックを犯している男に気づかれないように周囲を見回し、状況を冷静に推測する。
少し先に落ちている自動小銃が見える、あれを手に入れれば、この状況を何とかできるかも知れない…縛められている身体を動かすと、簡単に拘束している紐が緩みだしてくる、幸いに男はキャディラックを犯すのに夢中らしく、こちらの事を忘れているようだ、この隙に何とかしなければならない、南極条約で禁じられている捕虜に対する残虐行為を兵器でしている奴だ、このチャンスを逃せば生き残ることは絶望的になるだろう。

胸を使って男のペニスを扱いているキャディラックの姿を横目で見ながら、何とか腕を縛めていた紐を解くことに成功する、しかし足の方を解くのは身体を大きく動かさなければならず、男に発見される可能性が高くなるので難しい、自動小銃までの距離はそんなに無いのだ、足を縛られたままでもチャンスを狙っていけば何とかなる距離の筈だ…

凄まじい絶叫が耳を振るわせる、どこからあのような凄まじい声を出せるのだろかと思ってしまうが、チャンスがやってきた。
男は、キャディラックの尻の穴を犯すのに夢中だ…今しかチャンスは無い!

マイが、足を縛られたままの格好で、飛び跳ねるように投捨てられたままの自動小銃に飛びつく、キャディラックの尻を犯す事に夢中になっていた男は、虚を付かれた形になり尻を抱え込んだまま、自分に向けられた自動小銃の銃口を見る事になったが。
「キャディラック特務大尉から離れるんだ!」
マイの言葉は、逆に男の行動を促した。
自動小銃を構えるマイに向けて、ツァリアーノは咆哮を出して突進していく、次の瞬間に自動小銃は火を噴き、突進してきたツァリアーノを射殺した。

ツァリアーノの突進は、一種の自殺だったのかも知れない、銃を向けられた時にキャディラックを人質にとれば、何とかなった筈なのに、それをしなかった。
部下を亡くし、軍人である事を辞め、復讐の為と言う名聞の下に行った非道の行為、すでに味方の元へ帰還する意思を無くしていたツァリアーノにとって、自分に向けられた銃口は、死ぬのに格好の出来事であったのだろう、そしてマイの腕を縛っていた縄が簡単に解けたのも、計算の内であったのかも知れない…
無論の事、マイもキャディラックにも、ツァリアーノの心の内が判るわけでもない、死者は何も語らずに、その屍を曝すだけであった…

その後、救出されたモニク・キャディラック特務大尉とオリヴァー・マイ技術中尉は、この事を秘密にし報告書には、デメジエール・ソンネン少佐が操縦する試作モビルタンク ヒルドルブが六機のザクUと二両の61式戦車を撃破したと言う事が、事実を変えて報告された。


                                                           終




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