こきつねナイヤと俺


                                 第一話 
           『 ナイヤがやってきた! 』



                             『 恩返し子狐 』


 ナイヤが、俺の住んでいる家へとやって来たのは3週間ほど前の事だった。

 久しぶりの休日の午後、溜め込んでいた洗濯物と部屋の掃除を終わらせた後のひと時を、ごろりと横になりながら過ごしていた時に、不意に鳴らされる玄関チャイムの音、無視する訳にもいかずに出た先に、古風な衣装に身を包みこみ、背中に風呂敷包みを背負った子供が立っていた。
「こんにちわ、恩返しに来ました!」
 ぺこりと頭を下げ、大きな声で挨拶をする小さな人影、そしてクルンと持ち上げた頭には、大きな狐の耳がくっついており、その小さな身体のお尻の辺りからは、これまた大きくもふわんとした尻尾が飛び出ていた。
 人は意外の物を見た時に、その行動が停止してしまう事がある。まさしく、この時の状態がそれであり、俺は状況を把握できずに固まり、そんな固まったままの俺の横を通り過ぎて、そいつはトコトコと部屋の中へと上がり込んだかと思うと、背負っていた荷物を下へ降ろした後に、玄関先で固まったままの俺の方へと振り返り、ニコリとした……本当に邪気の無い笑顔を浮かべながら自己紹介をし始めた。
「ぼく、ナイヤといいます。これからよろしくお願いします」
 固まりがようやくに解けた俺は、フラフラとした感じで奴に近寄って、その頭からぴょこんと出ている大きな狐耳と尻尾を思わず引っ張て確かめてしまう。
「いたい、やめてくださいよ、いたいです」
 摘ままれた耳と尻尾に手をやりながら、ナイヤと名乗った狐耳の子供が抗議の声を出す。その声によって、ようやくに正気へと戻った俺は、初めて言葉を口に出すことが出来た。
「お前、何なんだ?」
 それがナイヤとの奇妙な同居生活において、俺が発した第一声であった。

 俺の曾爺さんにあたる男が、山の中で罠に掛かった子狐を助けた事が、すべての始まりと言う事だったらしい、その助けられた子狐は、古くは陰陽師として名高い安倍晴明の母とされる葛の葉狐に連なる妖狐であり(ただし罠に掛かった時は、まだ子狐だったので妖狐の力は使えずに逃げ出せなかったそうだ)数日後に助けられた礼をしようとしたらしいが、曾爺さんは直後に事故で他界してしまっており、残された家族も既に別の土地へと移り住んでしまった後……結局は助けられた恩返しをする事が出来なかったらしい、そして年月は過ぎ去って幾百年余り……その助けられた子狐も立派な大人の妖狐となり、妖狐の最長老として山の中で暮らしていたが、よる年波には勝てずに余命僅かと悟った時に、子狐時代に助けられながら、その恩を返せなかった事を猛烈に悔やみ出す。
 いや悔やんだだけなら良いのだが、悔やんだ末に、その妖狐の力を使って、自分を助けてくれた男の先祖にあたる俺と言う存在を探り出したのであった。
 自分が元気ならば、自らが赴いて恩返しをしたいと考えていたが、余命僅かの身ではそれも敵わずに、その代わりにと妖狐一族の中でも、自分の力を一番色濃く受け継いでいた子狐のナイヤに、恩返しをするようにと言い含めて、俺の所へとよこした……と言うのが、ナイヤの言い分であった。
「あのな、もう少しましな冗談を言え!」
「冗談ではないです。本当の事ですよ」
 プーとほっぺたを膨らましたナイヤが、怒った様な目で俺を見るが、そんな話を信じられる筈も無く、床に置かれた風呂敷包みの荷物と、ナイヤの着ている着物の襟を掴んで持ちあげる。
「わっ!なにするんですか、はなしてください」
 プランと吊り下げられたナイヤが、手足をじたばたさせながら抗議の声を上げるが、そんなのを聞く気もない、そのまま部屋の外へと放り出そうと瞬間、ぽぽぉぉん!と言う音と共に、ナイヤの姿がかき消え、手に持った風呂敷包みと掴んでいた着物の襟だけが手に残り、着物の中身であるナイヤの姿が消えていた。
「なっ!」
 驚きながら、もぬけの空になっている着物を、思わずバサリと降った瞬間に、その着物の下から小さな影が転がり出てきた。
 転がり出てきた小さな影、それは犬……いや、大きなふさふさとした尻尾と、まだ丸みを感じさせているが、少し尖って突き出している口、そして大きな瞳と大きな耳、枯草色の毛並みを身に纏った子狐の姿であった。
 この時点に置いても、俺はまだ信じられなかった……と言うか、信じられる筈が無く、ただ呆然とした眼差しで、転がり出てきた子狐の姿を見続ける。
 そして子狐は、消えた時と同じ様な、ぽぽぉぉん!と言う音と共に、ナイヤの姿へと戻った。
「信じてくれましたか」
 人の姿に戻った(いや正確に言えば、人の姿に変化したと言うべきか?)ナイヤが、少しだけ自慢げに俺の方を見て言うのだが、その姿は素っ裸だった。
「おい、お前……男だったのか」
 相変わらずに、素っ裸のまま立っているナイヤ……大きな狐耳とお尻の辺りから、ふわんと飛び出している尻尾、そして隠そうとせずにしている股間には、小さなオチンチンがちょこんとあり、それが妙に目に付いた末の問い掛けであった。
「そうですよ」
 グイッと、腰の辺りを自慢げに突き出してナイヤが、相変わらずに素っ裸のまま胸をそらし言う。
「ところで、何で裸のままなんだ?」
「えっ、あっ、それは……」
 今まで誇らしげに剃らしていた身体を、今度は逆に縮こませる……そして、両手をモジモジさせながら、俯きかげんになりながらナイヤは説明をしだす。
 本当なら人間に化けている時に身に着ける衣装などは、人に化けるのと同じ様に妖狐の力を使って、周囲の物体を服へと変化させるのだそうだが、まだまだ子狐あるナイヤは、そこまでの力は無く、結果として衣装は本物を使用していると言う事だそうだ。
「なあ、一つ聞くが……お前は、人に化ける意外に何が出来るんだ?」
「ご飯を作れます!」
 ズッ!と足元が少し滑る。
「お掃除も出来ます!」
 さらに足が滑る範囲が広がる。
「洗濯だって出来ますよ!」
 次の瞬間に俺は、完全にバランスを失い、その場にコケル。
「大丈夫ですか?」
 こけたままの俺の顔を、はだかん坊のままで覗きこむナイヤ……
「取り敢えずは、服を着とけや」
 俺は掴んだままだった着物を、素っ裸なままのナイヤの頭に被せた。


                          『 二人の生活 』


「ぶばぁぁぁ――――!」
「んきゃっ!」
味噌汁(正確には味噌汁状の液体だ)を、目の前に鎮座しているナイヤの顔へと思いっきり噴出すが、噴出される事を、すでに察知していたかのようにナイヤは、小さな悲鳴を上げて見事に避ける。
「んも、行儀が悪いですよ」
 味噌汁(正確には味噌汁の色をした液体)を見事に避け、元の位置へと顔を戻したナイヤの表情は、少し怒ったような感じであったが、噴出した味噌汁(何度も言うが味噌汁に類似した液体だ!)の残りを口の端から垂らしたままの俺は、まだ口の中に残っている味噌汁(既に可食可能な代物ではない!)を、椀へと吐き戻した末に叫ぶ!
「こりゃ何だ!」
「味噌汁ですよ」
 ナイヤの当然と言う言葉を聞いた瞬間に、俺はちゃぶ台に突っ伏して身体を震わせる。
「やだな、そんなに美味しかったですか」
 ちゃぶ台に突っ伏しながら、今日の献立に出た物体(決して料理などと言う物ではない!)を心の中で確かめる。
 芯が残っていると言うよりは、ほとんど生の米を水に浸しただけの御飯、ただカマボコ型に切っただけの大根(皮も剥いてない)、ぐちゃぐちゃに三分割に引裂かれている生の秋刀魚、何故か酒に味噌を溶いて長ネギが大量に浮いている味噌汁のような代物……
 ナイヤにとっては、これは立派な料理なのだろう……それが証拠に、自分の分として前に置いてある同様の代物を、実に美味しそうにパクパクと食べている。
(まあ考えれば、いくら妖狐とは言え野生の獣が、火とかを満足に使える筈も無い……ナイヤにとっては、その意味では立派な料理であり、美味しい料理なのだろう)
「美味しいでしょう!」
 褒めて貰うのを期待している表情で俺を見るナイヤ……口の中にまで競り上がってきた罵声が、喉の中へと戻っていく……
「あっ、ああぁ……美味しかったよ」
 俺はそう言うと、腕を伸ばしてナイヤの頭に手を伸ばす。
「あっ!」
 一瞬、ビクッとして身体を強張らせたナイヤであったが、ポンと頭にのせられた掌の感触に、何かを感じるのか顔を赤く染めながら、俺の方をチラチラと見ては、それに合わせるような感じで、おおきな狐耳をピクピクと動かす。そして、大きくふわふわとした尻尾も同時に上下させる。

 ナイヤを抱いたのは、やって来た日の夜の事であった。
 恩返しなど迷惑なだけであり、そんな面倒を背負い込む気は無い、どうすればナイヤを追い出せるかと考えた末に思いついた方法は、酷く残酷な事であった。
 昼間のやり取りから考えれば、追い出したとしても、すぐに戻ってくるであろうと思われる……ならばナイヤの方から、ここに戻って来たくないと思わせればいいのだ。
 その戻って来たくなくなる方法として、どうしてその様な事を考え出したか……元々俺の性癖に、その様な要素があったせいもあるだろうが、昼間に見たナイヤの姿に、欲望を触発されたのも、理由の一つであった。

 取り敢えずは買い込んでいたキツネうどんのカップ麺(初めて食べたと言うキツネうどんのカップ麺に、ナイヤは夢中になっていた)で夕食をすませた後、俺は相変わらずにチョコンと正座をして、俺の方を見ているナイヤに、先程から何度も言った事を、もう一度言う。
「恩返しなんぞ、要らんから山に帰れ」
 そしてナイヤは、前と同じ返事を繰り返して言う。
「だめです。恩返ししないと、妖狐の名誉に関わります……と、長老様が言ってました。だから恩返しします」
 このパターンの繰り返しであり、意味の無い平行線を辿る問答でしない、俺は心の中で溜息をつく、そして俺は欲望に従う方法をとる事にした
「そうか、だったら恩返しを、さっさとして貰おうか……お前さんの身体でな」
「えっ?」
 きょとんとした表情を浮かべるナイヤを、俺はその場に強引に押し倒し、着ている着物の前を押し広げる……押し広げられた着物の下から、剥き出しとなった素肌、そして俺の目には、胸と小さな乳首が二つ焼き付く……
 突然の事に、どの様に反応したら良いのかも解らず、驚いた顔をしながら身体を硬直させているナイヤ……ここで悲鳴を上げるとか、抵抗をしたなら、逆に俺の欲望は燃え上がり、強引にナイヤの肉体を犯していたかも知れない、だが驚いたような表情で俺を見ているナイヤの無垢な瞳……それを見た瞬間に、沸きあがっていた筈の欲望の波が、急激に引き始めて行くのを感じ取ってしまう。
「冗談だ……」
 驚いた表情をしたまま、覆い被さっている俺を見上げている顔から目を逸らし、俺は苦笑いを浮かべて言う。
「冗談だったんですね」
 何処かほっとしたような、それでいて何処か残念そうな……そんな微妙な表情を浮かべたナイヤが問い返す。
 まだ身体は押さえ付けたままで、肌蹴た着物もそのままだ……視線を胸へと移せば、緩やかに上下運動をしている白い肌に滲み出している汗と、ほんのりと色付いている小さな乳首……再び湧き上がって来そうになる欲望を飲み込み、抑え付けていた両手を離し、覆い被さっていた身体をゆっくりと離す。
 すぐに起き上がるかと思ったナイヤは起き上がらず、俺に押さえ込まれた時のままの格好で、床に寝そべったまま顔を俺の方へと向け言う。
「いいんですよ」
 その言葉に俺は、ナイヤの方へと視線を向ける。
「えっと、長老様が言ってました。もしかしたら、求められるかも知れないって……意味が良く解らないんですけど、これがそうですよね?だからいいんですよ」
 幾百年も生きてきたと言う妖狐の長老……遠い先祖の恩返しにと、俺と言う存在を探し当て、ナイヤを送り込んで来た張本人……何もかも知っていたのかもしれない、俺と言う人間がどの様な性癖を持ち合わせているのかと言う事も、それを承知でナイヤを送り込んで来たとすれば、その作戦は成功したと言えるだろう。
「ナイヤ、嫌だったら言えよ、すぐにやめてやるからな」
「はい……でも我慢しますから、大丈夫です」
 俺は倒れこんだまま、こちらを見ているナイヤの顔に手を当て、俺の方を向かせる……無垢な表情と言うのが、まさしく当てはまるその顔、新たな欲望の炎が燃え上がり、俺はナイヤの唇へと口づけをした。
「あふっ」
 小さな声、なんと言おうとしたか、塞がれた唇は声を出さずに、小さな吐息が漏れ出すだけ……そして塞いだ唇を押し開き、その中へともぐりこむ舌……
「あくっ…うんんぁ」
 ペチャペチャと言う、しめった様な舌と舌が絡み合う音と、ナイヤの小さな声……それは既に、何かを感じる喘ぎ声へと代わつつあった。
 長く激しい口付け……引き離された唇を繋ぐ涎の絆……俺の手は、ナイヤの着ている着物を脱がしていく、そして表れた白い肌が紅潮して行くのを見る。
「えと……」
 何かを言おうとするが、言葉が上手く出て来ずに、口ごもってしまうナイヤ……顔は紅潮し真っ赤になっている。
 何を言おうというのか、それを聞くのが怖いくなり俺は、その唇を俺の唇で再び塞ぐ、そしてナイヤの素肌へと手を伸ばし、その柔らかな肌の感触を確かめ、小さな乳首を指の間に挟み込み、優しく刺激をする。
「んぐっ!」
 塞がれた唇は声を押し殺し、喘ぐような音だけが、塞がれた唇の隙間から漏れ出す。それと同時に硬直する体の動きが、胸へとあてがっている掌を伝わってくる。
 思わず唇を離し、緊張で強張るナイヤの身体を抱きしめ俺は言う。
「大丈夫……」
 何に対して大丈夫と言うのだろうか、言っている俺にすら解らない言葉……なのにナイヤは、小さな声で応える。
「うん」
 愛しさが湧き上がる……再びナイヤの唇へ奪い、そのまま舌を身体へと這わせて行く……
「あっ!うっっ……くうぅんぁ!」
微かに汗の味を舌先に感じつつ、舌を這わせる度に聞えてくるナイヤの喘ぎ声……その声に誘われるままに、更なる愛撫を加え続ける。

 既にナイヤが身に着けていた着物の全てが脱がされていた。その素肌の上、股間へと俺は顔を埋め、小さな性器を口に含む
「はあぁひぃ!」
 奇妙な声がナイヤの口から漏れだし、身体がビクンと反り返り、痙攣する様にその身体が震え出す。口の中に含んだ小さな肉の塊、それが膨らみ堅くなって行くのが解る。
「あっ!ああぁぁ!」
 初めて体験するであろう激しい快感、それに身を捕まれながら、悲鳴にも似た喘ぎ声を出し続けるナイヤ、口に含まれたままの性器が極限まで硬くなり、ビクビクと激しい動きをした後に、急激に小さくなって元へと戻って行く……射精はない、まだ子供(子狐と言うべきだろうか?)であるナイヤの男としての性は未発達であり、精液を含めて精子を作り出す事はまだ出来ない、結果として僅かな体液が滲み出した程度であったが、ナイヤに感覚としての強烈な射精感はあった。だが実際に何も吐き出す事無く、身体中を包み込み込むような快感だけが、吐き出される事無く肉体に押込められた……と言う所であろうか?
 初めて感じる強烈な快感……それによって、弛緩したナイヤの姿は虚ろであり、実際にナイヤ自身も何も考える事が出来なくなっていた。
 俺は、そんなナイヤの姿を見ながら、欲望をたぎらせる……そして硬く張り詰め、暴発しそうなまでに興奮しきっている自分のペニスを、ナイヤの前に曝して言う。
「今度は、俺のを頼む」
 惚けたままのナイヤの瞳に、微かな光が戻る。そして小さな声で返事をした。
「うん……」
と……
 眼前に突きつけられたペニス、その怪物じみた威容に一瞬、躊躇いを見せるナイヤであったが、おずおずと顔を近づけて、その完全に剥き出しとなっている亀頭部に、小さな舌先を触れさせる。
「うおっ!」
 痺れるような感覚が、亀頭部の先端から頭部まで一気に突き抜ける。それだけで吐き出されそうになる快感を必至に堪え、更なる行為をナイヤに請う。
「次は口に……」
 だが最後まで言う前に、ナイヤの小さな口が命一杯まで開け広げられ、俺のペニスを口の中に含む……無論全部が入りきる筈も無い、だが口一杯に頬張った俺のペニスを、ナイヤは必至になって舐めしゃぶり始める。俺がナイヤにしてあげた時のように……
「んっ!うんぐぅ!ふぁうっ……んふぅ…」
 漏れ出す息と声、そして聞えるペチャペチャとペニスを舐めしゃぶる音、ぎこちない口の動きと、おずおずとした口中のペニスに絡む舌……それは拙くも未熟なテクニックとも言えない動作、だが俺を喜ばせようとするナイヤの懸命な努力、詳しい意味も解らずに、自分がされた気持ちの良い事を、俺に対してしてあげようとしている姿……
 快感を貪る為だけに、ナイヤの頭を掴みあげ、強引に口を激しく凌辱してやりたいという気持ちがあった。だが、必至になって俺のモノを頬張る姿を見た時、頭へと伸ばしかけた手が止まり、ナイヤがする行為のままに身体を任せることにする。

 それだけで充分だった……頬張られ、舐められ続けるペニスは、与えられる快感の前に欲望を吐き出す。
「んぶっ!」
 止め処もなく吐き出された精液が、口から溢れ出してナイヤの顔と身体を汚す。
 引き抜かれるペニス、更に溢れ出して来る精液、しかしナイヤはすぐに口を閉じて、こぼれ出してくる精液を口中へと溜め込む。
「我慢せずに……」

 吐き出してもいいぞ……と言おうとした瞬間に、ナイヤは口中の精液を嚥下する。コクリと動く喉の動きと、何か苦い薬でも飲み込むような表情から、それを知る。
「えっと、何か吐き出したら、悪いような気がして……ですよね?」
 俺が放った精液で汚れた顔、そしてニチャ付く口を少し気にしながらも、ナイヤは初めてみた時と同じ様な、邪気のないニコリとした笑みを浮かべ俺に言う。
 その瞬間に、烈しいまでに愛おしさが込み上げて来る。そして俺が放った精液で汚れたままのナイヤの唇に、口付けをする。
「あん」
 薄い声……重なり合う唇二つ、互いの唇を吸い合い、互いの汚れた顔を舐め合い、裸の身体を重ね合った……


                           『 今晩…… 』


 結局この時は、最後まではしなかった……この時に、ナイヤを強引に押し開いた末に犯す事は可能だったろうし、ナイヤ自身も拒絶はしなかっただろうが、初めての時を、そんな風にはしたくなっていたのだ。
 既にナイヤを追い出す気は無くなっており、何時まで続く事になるかは不明だが、これからの二人の共同生活をして行く上で、ナイヤの最初の時は、出来るだけ苦痛の少ない方法で結ばれたいと考え……その準備が完了したのは、先日の事であった。
 俺はナイヤの頭に置いた掌を優しく動かしながら、ナイヤの耳元に囁くように言う……
「今晩は、もっと凄いから楽しみに待っていろよ……ナイヤ」
 その言葉を聞いた瞬間、幸せそうな表情で、頭を撫でられるままニコニコしていたナイヤの頬が紅潮し、その瞳が一瞬にして潤む……
「うん」
 小さな声でナイヤは返事をする……そんなナイヤの唇に俺は、優しい口付けをするが、ナイヤ作って食べた自慢の料理の生臭い臭いが広がってきて、思わず苦笑してしまったのは仕方がない事だろう。



                                 第一話〜「ナイヤがやってきた!」…おわり了



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