『  マッハ少年SOS 』


数ある航空アクション漫画の中でも有名な『エリア88』ですとか、、あるいは完全に忘れ去れているであろう『影の戦闘機隊』ですとか、戦闘機を前面に押し立てた傑作漫画作品は、いろいろとあります。
そんな虚空アクション漫画の中で、今回紹介させて頂くのは『冒険王』に1977年4月号〜1979年6月号まで連載されておりました『マッハSOS』を熱くうっとしく語らせて頂きます。

さて原作者は、永井豪の門下生と言うかアシスタントで『冒険王』の誌上にて、マジンガーZ、グレートマジンガー、UFOロボグレンダイザー等の傑作ロボットアクションを描いていました桜多吾作先生でございます。
その桜多吾作先生が、UFOロボグレンダイザー連載終了後に『冒険王』で続けて描いたオリジナル作品が、今回紹介させていただく『マッハSOS』でございます。
当初のコンセプトは、最初の回で語られている……
『警察には荷が重すぎ、自衛隊には憲法という足かせが、あって手が出せぬ、そんな事件を、少年の純真な目とやさしい心とで判断し、解決するためにつくられた。世界少年航空パトロール隊日本支部!通称マッハ少年隊!!」
の活躍を描くスーパーアクション劇画でしたが、話が進むうちにその設定は当然の様に忘れ去られていきます!
(しかし、日本支部と言うからには他国にも同様の部隊が存在していたと予想されますが、漫画においては何も語れておりません…外国にも同様の組織はあったのでしょうか?)
物語の舞台は主に日本国内の問題〈子供にシージャックされた巨大空母の時とか国外で活躍する事もありますが、これも日本の領海内に入ってからの話ですから一応は国内?〉をメインにしています。

マッハ少年隊は大活躍をしていきます。たとえば…領空侵犯してきて自衛隊機を撃墜していく謎の戦闘機を拿捕する話とか、巨大飛行船乗っ取り犯との戦い無事に乗客を救出する話とか、ハイジャック犯人の陰謀を防いで乗客を助け犯人を逮捕する話とか…
ある意味定番の活躍するマッハ少年隊の隊員達なんですが、なにせ描いているのが桜多吾作先生…マジンガーZではみさとさん(半分オリジナルのヒロインで料理から何でもこなせるスーパー美少女)を敵であるヤヌス公爵の鈎爪で、身体を真っ二つに引き裂いて惨殺されるシーンを迫力満点に描いたり、グレートの最終話で主人公の剣鉄也をグレートごと敵陣に体当たり自爆させたり(普通なら都合良く主人公は助かるが、剣鉄也は見事に死亡しました)グレンダイザー最終話では、人類のほとんどを絶滅させて(しかも一部のレギュラメンバー以外はほとんど死亡…)終わりにするという凄まじい展開を持ってきた御仁です。
当然のように、まともにマッハ少年隊の隊員が、活躍するだけの話ばかりではありません…
たとえば、細菌に犯された過激派を細菌が蔓延するのを防ぐために全員殺して死体を完全に焼きつくす命令を受けた回では、命乞いする過激派を容赦無く射殺して火炎放射器でボォーー!!
日本の独裁を狙う悪党の原爆爆破を防げとか(ちなみにこの原爆、アメリカが日本に密かに持ち込んだのをマスコミにばれる前に、他に移動させる最中に奪われたと言う設定…)
ちなみにこの話には後日談があって、この悪党が証拠不十分で無罪になって再度、中性子爆弾で日本を壊滅させようとした時には、悪党が乗っている飛行機を問答無用で撃墜!……悪党は死んでもいいのですが、その飛行機を操縦していたパイロットの事を考えてやれよ…と思ってしまいました。
そんなこんなで…『少年の純真な目とやさしい心とで判断し』と言う建前とは、何か違うぞと言う感じの話が結構ありますが、それは私の勘違いでしょう。

ちなみに、その他に…暴走族を懲らしめるためにコブラ対戦車ヘリやハリヤー戦闘機で暴走族を爆撃したり、釣り客を助けるために孤島にセスナで着陸したり、昔の仲間を助けるために爆装したコブラでマフィアの屋敷を襲撃したり、孤島に潜んで沈没した船から金塊を引き上げようとしている犯罪組織を退治する〈この時にドサクサ紛れに大量の金塊を、マッハ少年隊の隊員がちょろまかしたりしている…〉と言う、どう考えても任務とは関係ないだろうという話もかなりありました。

ところでこのマッハ隊員達なのですが、死亡率が結構高い…さすが桜多吾作先生という所でしょうか?
しかもレギュラーと言うかヒロインの美少女でも容赦なく死ぬ!
それも、その死様が、なかなかに凄まじい…




普通、こんな無残な最期を遂げるヒロインています?

私は、改めて惚れなおしてしまいましたが…

さて、このマッハ少年隊双葉社から1〜6巻まで観光されており6巻目で「7巻目に続く」となっていましたが残念ながら、7巻以降は発売されておりません
しかし、本当に面白いのは7巻目以降に収録される筈であった物語なのです!
内容を簡単に説明すると…タイムマシンの発明したというか、タイムマシンを実用化させた旧日本軍の亡霊とも言える元自衛隊老幹部三人集〈こいつらは以前の話にも出てきた悪役で自衛隊の長老と言うか、旧軍の亡霊のような奴らです。しかし1979年当時…戦後34年しかたっていなかったという時代背景も重要ですね〉が、タイムマシンによって過去の世界に干渉して過去の自分達に、現在の兵器〈1979年当時の兵器…チーフテンとかレオパルドやトムキャット戦闘機が暴走族的な漢字で表記されてたりする〉を手渡して、第二次世界大戦の戦局を変え歴史の改変を試み、大日本帝国の復権と世界支配をたくらむいと言う、架空戦記的なSFドラマが展開されていくのですが、これが実に面白い!
それに気がついたマッハ少年隊のメンバーと勇気ある漢達(漁師のオッサンの活躍が特に感動的です)によって、タイムマシンは破壊され、元自衛隊老幹部三人集の野望は潰えたかに思えたが、過去は改変されてしまい、世界を征服する大日本帝国のイメージを主人公達は見ます。
(ちなみにその過去の中で、諸悪の根源たる元自衛隊老幹部は、過去の世界の自分達に疎まれて銃殺されてしまいますが…)
ただし、それは別次元の出来事…別の歴史の物語と言う感じになり、主人公達の住んでいる世界に変化はないと言うオチになり、不安を残しながらもまずは事件は終了します。
そして、この架空戦記編が終った後に、唐突に最終回が始まります…

これもまた凄まじい話…なんとマッハ少年隊がほとんど全滅してしまうと言う話で、日本に近寄る某国の大型爆撃機…乗員は全員死亡してしまって飛行機は、コンピューターにインプットされた攻撃目標(日本です)に向かっているのをマッハ少年隊の機が阻止しようとするが、奮戦むなしく次々に大空に散っていく仲間達…そして最後に残された主人公は…やはり桜多吾作先生ですね。

是非に7巻以降の発売を期待したい名作です。




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