『 迷宮暗夢 』



                            プロローグ

はたして、その玄室が何時の頃より現れ出でたのかを知る物は、誰もいなかった。
この地下迷宮の主にして支配者たる大魔道師のワードナーすらも、その存在に気がついたのは最近の事であった…

                              闇之壱
                             「 戦闘 」


それは完全な奇襲であった…充分に注意をしていたはずであったが、ハイマスターの一撃は、玄室に侵入した前衛の戦士の首を瞬時に跳ね飛ばす。
跳ね飛んだ首が、弧を描きながら通路に転がる、何が起こったのかも理解する間もなかっ生首は、驚愕に引きつった表情を貼り付けたまま迷宮の闇の中に転がり、残された身体が迷宮の床に崩れ落ちる。
それでも、すでにマスターレベルに達しようとしているパーティーである彼らは、混乱におちいることなく素早く体制を立て直すと、怪物達との戦闘に突入した。
そう…死んだものは、少なくともこの戦闘では戦力になり得ない、冷静な状況判断こそが迷宮の中で生き残る最大の条件であるのだから…
後衛に待機してる僧侶が沈黙(モンティノ)を唱え、敵の魔法を封じる、同時に魔法使いが爆炎(テェルトウエィト)を唱え、魔法力を解き放つ、鋼鉄すら溶ける熱量の中で、戦士の首を切断したハイマスターと配下のハイレベルニンジャが、消炭になり崩れ落ちて行く、そして前衛の生き残りの戦士達が、叩きつけるような爆炎の熱気を身体に感じつつ、戦闘態勢を解かずに炎が踊り狂っている前方の空間を見据えつづける、最下層に近いこの場所では、爆炎の一撃を耐え切るような体力を持つ怪物は無論、魔法に対して驚くほどの耐久力(レジスト)を示す怪物すらいるのだ、それらの怪物を警戒して、完全に敵を全滅させたと確認するまでは、けして戦闘態勢を解かない、無論これは後衛のパーティーメンバーにも言えることである。
はたして、それは正解であった。ブスブスと燃えくすぶるハイマスター達の屍を踏み崩し、一体の怪物が現れ出でた…見た目は、ハイマスター同様の人間型(ヒューマノイド・タイプ)の怪物である、いまだに燃え燻る炎の照り返しを受けて現れた姿は、東洋風の鎧装束に身を固め腰には長刀を挟み込んでいるのが見て取れた。
前衛の戦士たちは、何をするべきか熟知している、呼吸を合わせて二人の戦士が、同時に怪物に切りかかる!
それは、絶妙のタイミングと言えた、しかもマスターレベルに達しようと言う戦士の一撃である、それが同時に繰り出されたのだ、いかような怪物であったとしても避ける事の適わない攻撃と言える…事実、今までに遭遇したほとんどの地下迷宮の怪物たちは、戦士達の斬撃を身体に刻み込まれ絶命している。
しかし、繰り出された斬撃は虚空を切った。
空を切った斬撃!戦士は、素早く体を入れ替え次の斬撃を繰り出そうとしたが、視界が反転する、何が起こったのか?
「シン!カイン!」
後衛にいた盗賊が叫ぶ…シンとカイン…二人の戦士達が繰り出した斬撃が、怪物の身体を捕らえ切り伏せたと思った瞬間、逆にシンとカインの首が切り落とされたのである、二人の首を切断した鈍い音が聞こえる、そして首を切断した剣が鞘に戻る、チン…と言う、微かな音が聞こえた。
戦士の名を叫ぶ盗賊の横を強烈な魔法風を巻き起こしながら、解き放たれた攻撃呪文が突き進んで行く、前衛の戦士の首が切断された瞬間、後衛の魔法使いと僧侶は、唱えていた呪文を解放して怪物を攻撃する、二度目の爆炎が怪物を包みこむが、荒れ狂う炎の中より、再び無傷の姿で怪物は現れ出でる…その怪物に、僧侶が致死(マバディ)を唱えるがこれもなんの効果も見せない、呪文に対する恐るべき耐性と前衛の戦士を葬り去った凄まじい攻撃力、主戦力の戦士達を欠いた状態のパーティーでは勝てる見込みは、もはや無く残された手段は、ただ一つだけ…
魔法使いが、再び呪文の詠唱を始める、跳躍(マロール)の呪文を…そして、盗賊が援護の為に短弓を撃つ、僧侶も援護の為に新たに呪文を詠唱しはじめる、生き残りの三人は、それぞれがとり選る最善の方策を実行した…しかし…
「麻痺(マニフォ)!」
怪物の口から紡ぎ出された呪文が、解き放たれ三人を絡めとる…盗賊は短弓を取り落とし、魔法使いと僧侶は呪文を完成させる事なく、その場に崩れ落ちるように倒れこむ、そして、倒れこんだ三人に怪物が近づいていく…

                              闇之弐
                             「 凌辱 」


迷宮内で怪物に敗北し、全滅状態になったパーティーの末路は、悲惨であり無残なものである…
それでも敵の攻撃を受け、パーティーのメンバーが全員死亡したと言うのは、まだましな方と言えるかもしれない、真に運の悪いパーティーとは、怪物の神経毒による麻痺や石化、あるいは僧侶系や魔法使い系の呪文を使いこなす怪物たちによって、マニフォやカティノにより、死することなく全滅状態となったパーティーではないであろうか?
そう、意識があるのに抵抗する術を失った冒険者達の末路ほど恐怖に彩られる事実はないと言える。
それでも、その冒険者が男であれば、生きながら怪物に食われていく恐怖やゾンビと化して迷宮の中で怪物に成果てるだけであり、冒険者として迷宮に足を踏み入れた者ならば、最初から覚悟していたことと言えるであろう。
あらゆる意味で運の悪い冒険者と言えるのは、女性の…特に若い女性の冒険者達が人型の怪物に生きたまま捕らわれた時と言えるのではないだろうか?

怪物が、倒れ伏している三人を見下ろし、足先でゴロリと仰向けにすると、さらにまじまじと三人を見比べる、僧侶…魔法使い…盗賊…三人の冒険者は、いずれも若く美しい女…いや、娘と呼んでいい女性達であった。
マニフォにより身動きの取れなくなった身の上では、微かなうめき声にも似た声を出す事くらいしかできない三人を見ている怪物は、その顔に装着している面覆いを外し、笑みを浮かべる…それは、紛れも無い人のみが浮かばせる事の出来る、邪悪であり、とてつもなく好色な笑みであった。

マニフォにより身動きはとれない状態から更に麻痺毒を注入され、完全に麻痺状態となった身体、それでも動かない頭部が向けられた方向は見ることは出来るし、耳には音が聞こえてくる…そして、僧侶のエルフは見て聞く事になる、薄暗い玄室の中で、年下の盗賊の娘が犯された末に惨殺される姿と、双子の魔法使いの姉が、無残に犯されていく姿を…

倒れ伏している3人の冒険者の中から、最初に目を付けられたのは、人間の盗賊の娘であった。
パーティーの中では、一番年が若く少女と言ってよい年齢の娘であり、レベルもようやくにレベル9になったばかりである。
ロストしてしまった。ホビットの盗賊の代わりに数週間前パーティーに加わったばかりの娘である、短く切りそろえた赤毛と、くりくりとした瞳が魅力的で、細くしなやかな手足と膨らみ始めた乳房が、ギルガメッシュの酒場で人目を引く、元気な娘であった。
怪物の手が、倒れている盗賊の娘の赤毛をわしづかみにして頭を持ち上げる。
「ぐぅぅ…」
麻痺した肉体は、抵抗の動きを示すことも出来ずに、微かな呻き声を搾り出すことしか出来ない、しかしハッキリとした意識はある、怪物が娘の顔を覗き込むようにして見る…それは、同時に娘が怪物の顔を見ることでもあった。
覗き込まれた娘の瞳に怪物が映し出される…面覆いをが外された相貌に浮かんでいる鬼を思わせる恐ろしい顔、そして怪しく光る鬼火のような瞳…パーティーを全滅状態にさせた怪物の正体は、明らかに知性を持つ人型の…それも、飛切りに邪悪な意識を持つ者である事を意識させた。
怪物は、片腕で髪を掴まれ完全に身体を持ち上げられた盗賊の娘が身に着けている皮鎧に手をかける、そして乱暴に引き剥がしていく、身体を守っていた皮鎧が紙のように引き剥がさる、鎧として比較的軽装の部類に入る皮鎧であるが、並の力でどうこう出来る代物ではない、怪物の持つ恐ろしいまでの筋力を感じさせるのに充分な行為と言える。
皮鎧の下につけていた肌着も引き脱がされていき、盗賊の娘は全裸のされていく、下穿きすら引き裂かれ、微かに生え始めた淡い茂みすら剥き出しにされてしまう。
全裸に引き剥いた娘を片腕で掴み上げながら、もう片方の掌が、剥き出しになった乳房へと添えられ、その形と柔らかさを確かめるかのように動き、それに合わせて怪物の顔に笑みが浮かぶ…娘は、女としての本能で悟る、これから自分が、どのような目に合わされるのかということを、この怪物に犯されると言う状況を…
片腕で掴み揚げていた娘を、怪物は無造作に床に放り出すと、床に放り出された娘から、良く見える位置へと移動しながら、自分が身に着けている、鎧や冑を脱ぎ捨てるように外して行った。
脱ぎ捨てられていく甲冑、その甲冑の下からは、強靭な肉体が現れてくる、荒縄を捻り込み、それを乱雑に絡みつけたような体躯、その肉体に刻み込まれたさまざまな傷跡…それは紛れも無く、熟練の前衛冒険者のみが持ちうる肉体であった。
怪物は、下穿きの褌すら脱ぎ捨てて全裸になる、麻痺した身体で、それから顔を背ける事すら出来ないでいる娘に見せ付けるように、全裸になった怪物の股間に存在する逸物が、いきり立つように勃起し腹にぺたりと張り付くように持ち上がり、その先端からは半透明な汁が滲み出しているのも見せ付けるている。
怪物が、倒れ付している全裸に引き剥かれた娘の両腕を、再びつかみ上げて、宙にぶら下げながら何事か呪文を唱える…
「…ディアルコ…」
怪物が唱えた呪文は、僧侶系3レベルの呪文ディアルコであった…娘の肉体を麻痺させていた麻痺毒が一瞬で体内から消え去り、同時に娘の身体は自由を取り戻した…しかし、両腕を強靭な力で掴み上げられ、宙にぶら下げられた状態では逃げ出すことは不可能であり、持ち上げられたまま足をバタつかせる位しか出来ないでいる。
「くっ!放せ、放しなさいよ、この怪物!」
自由になった口で、自分を持ち上げている怪物に悪態をつく娘、さすがは冒険者であり、その負けん気は健在である、しかしその行為は、結果として怪物を喜ばせるだけであった。怪物は、鼠を弄ぶ猫であり、娘の生殺与奪件は怪物の掌にあるのだ、怪物は娘の両腕を強く握り締め、その細い腕をへし折った。
「うわぁぁーーーー!」
盗賊の娘は、へし折られた腕の激痛に叫び声を上げる、怪物は両腕をへし折った娘を、迷宮の床に投げ捨てる。
「ひぃぎぃっ!」
床に投げ捨てられた娘が、苦痛の悲鳴を上げて無様に床に転がる、そして転がった娘の上に、怪物が覆い被さり、その圧倒的な体躯と力で娘の肉体を蹂躙していく、両腕をへし折られた娘には、抵抗する術も無く、覆い被さる怪物から何とか逃れようと必死に抗うが、その抗いは何の抵抗にもならず、その蒼い肉体が怪物に蹂躙されていく…
ようやくに膨らみ始めた乳房がえぐられる様に揉みし抱かれて、怪物の爪で突き破られた薄く白い乳房の皮膚が破れ、血が滴り落ちていく、更に小さな乳房に減り込んだ指先が、突き破った皮膚から肉の奥へと捻じり込まれていった…
「いぃぃぃぃぎゃぃぎゃぁぁぁーーー!あぁぁーーーー!!」
娘が最初に見せた負けん気は、乳房をえぐられる激痛の前にして、一挙に吹き飛び壮絶な悲鳴が、それに取って代わる、乳房の肉の奥へと減り込んで来る指先の激痛が、娘に絶叫を上げさせる、乳房を抉る掌の動きは更に激しくなって行き、娘の両の乳房を血と肉の塊に変えながら、揉みしだいていった。
「はぎゃぁぁーー!いっぃいぃぃごぁぁぅぅーーーー!!」
血と肉の塊となった娘の乳房、その下にある肋骨へと指先は触れ、ゴキリと細い肋骨をへし折り、折れたその先端を肺へと突き刺す。
「うぎぃあぁぃぃーーーごぶっぅぅ!」
壮絶な悲鳴と共に口から、血が吐出されていく、それは悲鳴と言うよりは、絶命寸前の獣の叫びが娘の口から吐き出されるようであるが、怪物はそれを気にする風もなく、血に塗れた掌を乳房から放し、その代わり二娘の腰を抱き上げ、両足の間に自分の身体を入れ、大きく押し広げた娘の股間…まだ薄い茂みしか形作られていない、娘の股間へと狙いを定め、一気に自分の身体を捻じ込んだ。
ブチビチと肉が裂かれるて行く感触と減り込んだ性器が子宮を突き破っていく激痛…
「げうっ!うごぉぎぃぃゃぁぁがぁぁーーーーー!!」
娘の口から一際高く叫び声が漏れ、血がごぼごぼと吐出される…それは絶命の叫び声…巨大な怪物の性器は、娘の小さな性器に納まり切るはずもなく、子宮を突き破り胎内の臓物を掻き回し、暴れまりその内臓に大量の精液を吐き出した…
「う…あ……ぃ……」
ボテリ…と娘が投げ出される…まだ、かろうじて息はある、盗賊とは言えレベル9の冒険者である、冒険者として鍛えられた強靭な生命力は、娘をなかなか死なせようとしない…しかし、それも時間の問題であった。
ズタズタに犯され、凄惨な責めを加えられた肉体は、間違いなく死を迎えようとしていた…
そう…何もされなければ…
怪物が、何事か呪文を再び唱える…
「…マディ(完治)…」
僧侶系第6レベルの呪文…マディ…如何様な重傷を負ったとしても、一瞬で肉体の全てを完全に回復する脅威の治療呪文…怪物は、瀕死の娘にその呪文を唱えたのであった…
淡い光が娘を包み込む…そして、ズタズタの責め苛まれた肉体は、元に戻り娘は再び意識を取り戻した…
「なんで…」
マディを唱えた怪物の意図が、娘には理解できなかった…しかし、怪物は自分に向ける眼差しを見た瞬間に娘は理解した…理解してしまった…この怪物は、自分をもう一度最初から嬲り犯すために、自分にマディの呪文を唱えたのだと言うことを…
「いやぁぁーーー!!」
娘が、その場から逃げ出そうとする、すでに最初に見せた負けん気は完全に吹き飛び、恐怖のみが娘の中に存在している、しかし娘が逃げ出すよりも早く怪物の掌が、娘の腕を掴み引き寄せる。
「もうやだ!やだぁ!いやぁぁぁーーーー!!」
暴れ泣き叫ぶ娘を怪物は再び犯し始める、今度は先程よりも、時間をかけながら、ゆっくりと苦痛と恐怖を更に与えながら執拗に嬲り犯して行った…

盗賊の娘は、更に複数回マディを唱えられ、嬲り犯された末の瀕死の状態から回復させられ、何度も犯された続けた…殺されることを哀願した娘が、その願いを叶えて貰ったのは、四度目にマディを唱えられた後であった…
ヌラリと引き抜かれた怪物の長刀が、娘の股間…性器に添えられる…四度目のマディを唱えられ、肉体を完全に回復させられた娘は哀願する…
「おねがい…もういやぁぁ…殺してよ…楽にしてよぉぉ…お願いだから…」
性器にあてがわれた長刀が、ズブリと性器の中…膣に差し込まれていく…
「ぐぶぅ!」
呻き声を上げる娘…ズリズリと差し込まれていく、刃渡りが1メートル以上ある長刀である、刀身が身体を突き抜けて切っ先が喉の辺りから突き出す。
それでも娘はまだ死ぬ事が出来ないでいた…突き込まれた刀身は、絶妙に急所となる場所を避けて突き入れられているのだ。
ゴブゴブと口から溢れ出す血…娘は哀願する…
「ごろ…じ…てぇ…おね…ごぶぅぅ…」
突き入れられていた刀身の刃が、娘の体内で返る…そして、一気に娘の肉体を引裂きながら、引き抜かれた。
あふれ返る血と臓物の匂いの中、娘はようやくに望みを叶えられ絶命することが出来た…苦痛と恐怖…絶望を顔に刻みこみながら…
血塗れの刀身が、シュ〜シュ〜…と、刀身に纏わりついている血を吸収していく…怪物が握っている刀は、まさしく妖刀であった。

血と肉の塊と化した盗賊の娘の屍を、麻痺したまま横たわっている二人の方へ投げ捨てた後に、怪物は二人を改めて見る、果たしてどちらの方を先に弄ぶかを思案しているようであった。
倒れたままの二人…麻痺毒により身動きが出来ず、繰り広げられた惨劇を見続けるしかなかった二人のエルフの娘は、恐怖と絶望に震えることすら出来ず、投げ捨てられた盗賊の娘の屍の傍で、怪物を見ていた。
怪物は、暫し考えるようなポーズをとった後で、僧侶のエルフのほうを選び出す。
そして、盗賊の娘にしたのと同じ手順で全裸に引き剥き、凌辱を開始した。
僧侶…呪文を操る階級という事であろう、呪文を詠唱できないように口に呪文封じの魔法具が装着されている事を除けば、盗賊の娘と同様に装着していた防具を引き剥がされ、全裸にされて犯され始めた…
引き剥かれたエルフの娘は、華奢な娘だった…元来エルフは、人に比べると華奢な身体の造りと言えるが、それでもこのエルフの娘は、一層華奢な体つきであった。
レベル12の僧侶…冒険者として、それに見合うだけの体力を身に着けている筈なのに、華奢な身体は娘と言うよりも少女のそれである、その華奢な身体が怪物に蹂躙されて犯され始めた。
白い肌と、その皮膚の下を通る血管が透けて見えるような白い透明さ、美しさの代名詞に使われる種族として有名なエルフであるが、その中でも娘の美しさは、双子の妹である魔法使いの娘と共に城塞都市で有名であった。
文字通りに、透き通るような白い肌と端正な顔立ち、華奢でいながら程よい肉付きを想像させる肢体、その全てが、同属であるエルフはもちろん、人間など他の種族のもの達をも魅了している、元来エルフと言う種族に美的な感覚を持ち得ない、ドワーフ族の者達ですらその姿に見せられてしまっていた。
そのような、姿形がまったく同じな双子のエルフの娘達、唯一の違いは、その頭髪の色だけであった。
僧侶たる姉のエルフの頭髪は、太陽を連想させるような金髪を持つシャリアと言う名前であった。妹である魔法使いのエルフの頭髪の色は、月光を思い起こさせる銀髪を持つシャリスと言う名前であった……金と銀の髪、それだけがこの双子のエルフを見分ける術であった。
そして、今この場所で姉であるシャリアが、長い金髪を振り乱しながら、怪物に犯され続けている、白く傷の無かった肌には、無数の噛跡や抉られた傷痕が刻み込まれ血が滲み出している、両の乳房の先端にあるべき小さな、しかし形良く綺麗であった乳首は食い千切られ、一つは怪物の胃の淵に収まり、もう一つは怪物が口に含み、シャリアに口移しで飲み込ませ嚥下させている、両方の乳首を失った乳房から吹き零れる鮮血が乳房を紅く濡らしていく、口に装着されている魔法具により、叫び声を満足にあげることすら出来ないシャリア…それは、悲鳴と絶叫を出す事だけは、許されていた盗賊の娘以上に、無残であり悲惨な状況であった。
強引に犯されながら肉体と精神を壊されていくシャリア、乳首を噛み千切られ、乳房が噛み取られ咀嚼されて行く、噴出した血を怪物は喉を鳴らしながら飲み、膣に突き込まれた性器が、胎内を引裂き内臓を絡みつかせ、腹を突き破り飛び出してくる…そして、絶命する寸前にマディが唱えられ、シャリアは再び無傷な状態へと身体を元に戻される…
マディの作用には、身体の傷を完全に癒すだけではなく、精神を鎮める作用もあった…混乱しパニックになった精神を鎮め、正常な落ち着いた状態へと精神を導いていく作用…本来なら、狂う事が出来るはずの苦痛…絶望…恐怖すら、マディをかけられたことにより正常な状態へと精神を落ち着かせてしまい、結果として狂気に逃げ込むことすら不可能であった。

しかし、犯され…嬲られ…甚振られ…瀕死の目にあわせられながらも、シャリアはチャンスを狙っていた。

                               闇之参
                              「 脱出 」


この玄室に突入した時に、ハイマスターの奇襲により首を切り飛ばされた戦士が装着していた冑…その冑は『転移の冑』と呼ばれる代物であった。
その冑に秘められている魔法力を解放すればマロール(転移の呪文)と同様の効果を引き出す事が出来る、その冑を着けたままの戦士の生首が、犯され続けるエルフの娘の、目の前に転がっているのだ。
少しでも怪物の気をそらせる事が出来れば、転移の冑の魔法力を解放してこの場所から脱出する事が出来るかもしれない…シャリアはチャンスを待つ…犯され…嬲られ…甚振られ…瀕死の目に晒されながらも、マスターレベルになろうかと言う冒険者の強靭な精神力で、その極僅かなチャンスを待つ…そして、チャンスは訪れた。
三度目のマディが唱えられる、再び瀕死のシャリアに活力が注ぎ込まれ、傷ついた肉体が再生して行く最中、次の獲物として考えている妹の魔法使いシャリスへと、怪物の視線は向かっており、一瞬のチャンスが生まれる…シャリアは、まだ圧し折られた骨がくっつきかけていると言う、肉体が再生されている途中で跳ね上がるように起き上がると、戦士の生首が装着している転移の冑へとダッシュする、それに気がついた怪物がシャリアを捕らえようとしたが、間一髪のでかわす事に成功してシャリアは、戦士の生首へと辿り着き、装着されていた転移の冑へ地上へと向かう座標を素早くセットする、そして倒れたままの妹…シャリスのもとへ向かおうとした動きが停止する、彼女と妹の間には、すでに怪物が立ち塞がっていたのである。
自分だけが助かるのなら、この場で魔法力を開放すればよかった…しかし、倒れたままの妹を見捨てることなど…

仲間である盗賊の娘と姉のシャリアが、怪物に何度も犯されては、マディで再生され、再び犯される様を見せ付けられていた。
姉の番が終われば、今度は私の番である、いっそのこと狂いたかった。せめて死んでしまいたかった…すでに絶望しか考えられずにいた私の目の前で、何度目かのマディをかけられた姉が、突然に行動を起こした…そして、私も気がついた…戦士が身に着けていた、転移の冑の存在に…
助かるかもしれない、その思いが心の片隅に芽生える、姉の姿が見えた、腕には転移の冑がある!助かる!
そう思った瞬間に視界を遮る影が現れた…怪物である…転移の冑を持った姉が私の所にくることは不可能になった…姉だけなら、転移の冑を使用して、この場から逃れることが出来るだろう…
私は、姉が転移のかぶとを使い、自分だけ逃れるだろうと思った…私が同じ立場になったら、姉を見捨てて逃げるだろうと思ったからだ、それでも、必死に姉へと視線を向けて、心の中で叫ぶ!
助けて!見捨てないで!助けて姉さん!お願い!お願いだから!一人で逃げないで!一緒に連れて行って!お願い!もしも自分だけ逃げたら恨んでやる!罵ってやる!憎んでやる!だから助けて!助けてよ!!姉さん!!お願い!!
心の中で、姉に叫びながら、それでも確信していた…姉は自分一人で逃げ出すだろうと…

シャリアは、自分と妹の間に立ち塞がる怪物を見る…そして、素早く行動を起こした。
シャリアは正面から怪物に向かって走る、そして怪物にぶつかりながら、その意外な行動に虚を衝かれた怪物が怯む隙に、転移の冑を倒れている妹……シャリスの方へと投げ転がしたのである。
シャリアを捕まえた怪物の後ろを転がっていく転移の冑…ガラガラと音を立てながら、倒れているシャリスのもとへと辿り着くと同時に、予めセットされていた魔法力が解放された。

私のもとに転がってくる転移の冑…姉は自分の身を犠牲にして、転移の冑を私の方へと投げよこしたのだ…発動した魔法力により、その場から身体が転移する…怪物に捕まった姉が、安心したように笑っている…麻痺して声は出ない…しかし叫ぶ!
姉さん!姉さん!…私を見捨てて逃げ出すと思ってた!私ならそうしていた!なのに、姉さんは私を逃がすために…
姉さん!姉さん!姉さん!姉さん!姉さん!姉さん!姉さん!姉さん!姉さん!姉さん!


* *************************************


壊滅状態に陥ったパーティーが、ワードナーが支配する地下迷宮の入口に出現した。
それ自体は、それほどに珍しい出来事では無いが、出現したのは全身を麻痺状態にしている魔法使いと、惨殺されている盗賊の二名で他のメンバーは居ない、入口を警備していた衛兵により二人はカント寺院に運び込まれ、治療と復活が試みられた。
結果は、その生命力の全てを抜き取られていた、盗賊の娘は復活できず消滅し、辛うじて治療されたエルフの魔法使いから、地下迷宮の奥底で遭遇した出来事が語られる。
そして最近、迷宮探査に向かったまま、消息を絶つパーティーが増加した原因が解明されたのであった。

                                   ウィザードリー〜異伝〜『 迷宮暗無 』
                               
                                                          続く







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