迷宮暗夢
第二章
【 救出と覚悟 】
暗之壱
「 酒場 」
その酒場は喧騒に満ちていた。
今日と言う日を生き延びた事を喜び、死んで行った仲間を弔うために、そして明日とも知れぬ自分自身の命を謳歌するために、飲み喰らい仲間と騒ぎ今日と言う日を満喫していた。
その酒場の片隅、一つのテーブルを囲んだ集団が何かを話をしている、テーブルに集まっている面々は、その装備している姿から想像する事が出来た。
紫のローブを纏ったエルフの魔法使いらしいのが一人、漆黒の鎧に身を包んでるホビットの忍者、そして小柄な身体に無骨な甲冑を纏い剣を携えたエルフの…しかも女の侍、それらの冒険者を前にして必死に何事かを話しているのは、紅いローブに身を包んでいるエルフの娘
「御願いします、皆さんの助けが必要なんです…姉さんをシャリア姉さんを助けたいいです!」
長い銀髪を振り乱すようにしながら、そう叫ぶのは赤いローブに身を包んだエルフの娘、シャリス(銀髪)であった。
最近頻発する行方不明となる高レベルの冒険者パーティー、地下迷宮の中で全滅したパーティーが行方を断つのは珍しい事とは言えないが、それは地下迷宮に挑戦をし始めたばかりの未熟なパーティー、またはある程度のレベルに達した自惚れ始めたパーティーが大半である、何度も死線を乗り越え経験を積んだ高レベルのパーティーとなれば、生き残る術を充分に心得ており全滅してしまうという事は少ない、だが現実には高レベルのパーティーが次々に行方を絶っていた。
そして、その原因を冒険者達の知る事となる、地下迷宮の奥深くに幻の如く出現した玄室、そこに踏み込んだ冒険者達は、そこに出現する強大な力を持つ怪物により壊滅し全滅して行ったのであった。
全滅したパーティーの中に置いて唯一生き残り、逃走する事に成功した銀の髪を持つエルフの魔法使いシャリスが、その事実を冒険者達に伝えたのは、数時間前の事であり、その事実は冒険者達の間に素早く広まった。
「しかし…メンバーが足りませんね」
そう言ったのは、シャリスと同族であるエルフの魔法使い、紫のローブに身を包んだマスターレベルの魔法使いである。
「シヴァ!」
咎める様に、その魔法使いに声をかけたのは、同じエルフの女侍であった。
シヴァと呼ばれた魔法使いと、女侍の間で視線が交差し険悪な雰囲気が満ちる、そして互いに席をたち互いの顔がテーブルを挟みながらも近づいて行くが、それに割り込むようにホビットの忍者が口を入れる。
「セリアもシヴァも落ち着けよ、情報を整理して、もう一度最初から話をまとめてみようぜ」
睨みあっていたシヴァとセリアが、ホビットの忍者にたしなめられ、とりあえずは席に座りなおす。
「そうですね、助けに行く行かないは別として、現在のパーティーに不足している戦力の確認と、必要なメンバーを考えましょう…それで良いですね、セリア?スラッシュ?…それとシャリスさん?」
「わかったわ」
これはセリア
「了解!」
これはスラッシュ
「御願いします」
そしてシャリス
三人を見回してシヴァは話し出す。
「前衛のメンバーは、マスターレベルの侍であるセリアと、同じくマスターレベルの忍者であるスラッシュ、そして後衛のサポートは魔法使いの私と同じ魔法使いのシャリスさんで良いですね?」
頷く三人を見回してシヴァは話を続ける…
「そして不足しているのは、前衛の戦士クラスと後方のサポート…これは僧侶系のメンバーが必要ですね、それもセリアの属性が善なのを考慮しなければいけません、取り敢えずは僧侶系の冒険者については、当てがない事もありませんが、前衛の戦士については残念ながら、すぐに都合がつく者を確保するのは無理です」
「でも!たとえ五人でもマスターレベルの冒険者だったら、時間が無いんです!今なら姉さんはまだ!」
それまで大人しくと言うよりは、何か必死に耐えながら聞いていたシャリスが叫ぶように言う。
すでにシャリスが脱出して来てから半日と言う時間が経っている、自分を脱出させる為にその身を犠牲した姉のシャリア、明日ならば間に合うかも知れない…だが、さらに時間が経てば、姉の救出は絶望的と言える。
「無理です」
だが、シャリスの悲痛な叫びをシヴァは、あっさりと否定する。
「シャリスさんから聞いた話から想像すると、相手となる怪物はマスターレベルの冒険者が、フルメンバーで戦ったとしても勝ち目は低い、ましてや前衛を欠いたパーティーで戦ったとしても勝てる筈がありません」
シヴァの言葉に唇を噛み締めながら、下を向くシャリス…その姿を見ながらセリアがシヴァに言う。
「でも、闘いではなく救出を目的とするなら、五人編成のパーティーでも何とかなるのでは?」
「はぁぁ〜…」
深い溜息をつきながらシヴァが言う。
「何度同じ事を言わせるのですか、玄室に踏み込みながら闘いを避け、その上で行方不明となった人間を探し出して、救出する…そんな事が出来るはずがありません!」
「シヴァ!」
再びシヴァとセリアが睨み合いを開始する…シヴァの主張は、戦力の不完全なパーティーでの救出は無謀であり不可能なのだから、残念だがシャリスの救出の願いは受け入れられない、対してセリアの主張は、たとえ戦力的に不足があったとしても事態は急を要する、ここはシャリスの救出に向かうべきである!
この二人の主張の違いは、二人が属する戒律による違いとも言えた。
中立に属するシヴァ、善に属するセリア…同じパーティーであったとしても、その根底にある行動原理を支配するのは、属する戒律によってといえる。
「あの…前衛の戦士さえ、何とかなればシャリアを救出するパーティーを出していただけるのですか?」
対立する二人の間に分け入ったのは、シャリスであった。
少し驚いたような表所を浮べるシヴァ、同様に驚いているセリア、そして面白そうな笑みを浮べながらそれぞれを見ているスラッシュ…
「え、ええ…完全編成のパーティーならば、問題はありません…しかし、パーティーに入れるメンバーは、中立か善…それもマスタークラスでなければ駄目ですよ」
「誰か、メンバーに当てがあるんですか?」
少し躊躇うような表情を浮べた後でシャリスは頷く
「はい、明日の朝…迷宮に突入するまでには、間に合わせる事が出来ると思います」
その言葉を聞いたセリアが、勝ち誇ったような表情を浮かべシヴァに、ビシッ!と指先を向けて言う。
「これで問題は解決しましたね、それじゃ…明日の朝、迷宮の前で待ち合わせと言う事で、いいわよね?」
少しだけ不満そうな表情を浮べたシヴァだが、一息吐きながら言う。
「了解しました、それでは明日の朝、迷宮前に集合と言う事でよろしいでね、私はこれから先程話しました僧侶の所に行って話をつけてきます…皆さんは明日に備えて休息を取ってください」
そしてシヴァが席を立ち、酒場の雑踏の中へと消えて行く
「そうね、シャリスもお姉さんの事が心配でしょうけど、休息を取って明日に備えて置きなさい」
そう言ってセリアも席を立ち、酒場の外へと歩いて行く、後にはシャリスとスラッシュの二人がテーブルに残される。
「さて…俺は、もう少し飲んでから帰るとするが、お前さんは大変だな…嘘なんだろ?前衛の当てがあるなんて話」
驚いたようにスラッシュを見るシャリア
「忠告を一つだけするが、もしも明日の朝になっても前衛が見つからなかったら、俺は抜けさせてもらうぜ、冷たいようだがフルメンバーならともかく、不完全なパーティーで迷宮の最深部に向かうなんて自殺行為に付き合うつもりは無い」
そう言って席を立とうとした時に、シャリスが腕を掴んで引きとめる。
「御願いします…明日までには、前衛を見つけ出しますから、一緒に…姉さんを助けてください」
掴まれた腕を振り解き席を立とうとしたスラッシュであったが、シャリスの搾り出すような哀願の声を聞いた瞬間、ボリボリと頭をかきながら座り直し、シャリスの方を向いて言う。
「一つだけアドバイスをしてやる、お前さんが持っている最大の武器を使えば、何とかなるかも知れない」
「私の持っている…武器?」
戸惑うような表所を見せるシャリスの顎を掴んで持ち上げるスラッシュ、そして顔を近づけて言う。
「種族が違うホビットの俺から見ても、お前は美しい…その美しさを投げ出せば、あるいは仲間になる奴が現れるかも知れない…それを決めるのは、お前さんだがな」
そして、スラッシュも酒場の雑踏の中へと姿を消して行く、後に残されたのはシャリスのみ、そしてシャリスは言われた言葉を反芻し続ける…
「私を投げ出せば…姉さん…」
そして、シャリスは席を立ち酒場の雑踏の中へと踏み込んで行った。
暗之弐
「 覚悟 」
トレボーが支配する城塞都市、冒険者達が利用する各種施設以外にも様々な施設が用意され、利用されている、そんな施設群中にある一つ…一夜限りの情交を満足させる為だけに利用される部屋の中で、シャリスはその身体を薄汚いベッドの上の横たわらせていた。
そして部屋の中にはシャリス以外にもう一人、その男は巨体と言って差し支えの無い肉体を包み込んでいた甲冑を脱ぐ、そして下に着込んでいる衣服も乱暴に脱ぎ捨てる、その脱ぎ捨てた衣服の下から出て来たのは、その巨体に見合うだけの屈強な肉体、捻じり合わせたような筋肉の束、その下に存在するであろう極太の骨格、そして肉体に刻み込まれている無数の傷痕…それらが、この男が属している職業を証明している、前衛に属する戦士系である、実際にこの男はレベル14と言う中立のマスタークラス戦士である、彼は何年もの間、迷宮に潜り続けた歴戦の戦士であったが、すでに引退を決意した戦士でもあった。
生と死の狭間を綱渡りしながら生きる日々、それなりに生きがいのある日々とも言えたが、それが毎日のように続くとなると、精神は削り取られていき、自分が生きているのか死んでいるのかすら、迷宮の中にいなければ判らなくなってくる、それに耐えられなくなった人間は引退を決意する、大半の冒険者が最後を迷宮の闇の中で終える冒険者達の中に置いては、まだ幸福な事かも知れない…
引退を決意し、最後の夜を酒場の雑踏の中で過ごそうとしている彼の元に、エルフの少女が現れる、姉を救出するために自分達と一緒に、再び迷宮へ潜ってくれと言う願いを持って、だが引退を決意していた彼は、その願いを拒む…
すでに迷宮の奥底に出現した、新たな脅威の事は半日とたたない内に、全ての冒険者達の知る事となっていた。
わざわざそのような剣呑な場所へ行く気にならないのは当然の事であり、ましてや引退を決意した男にとって、いまさら何の益にもならない事であったからだ。
だが、少女は諦めずに震える口から、小さな消え入るような声で言った。
「ただとは言いません…代償は支払います」
代償…その言葉の中に、強烈な意思を感じ取った彼は聞き返す。
「ほ〜…その代償とは?」
少女は瞳を閉じる…そして、その少女は閉じた瞳を開く、決意をその瞳に宿し…
「代償は…私自身です」
男は立ち上がり、その少女に尋ねた。
「名前は?」
「シャリス…」
男は華奢なシャリスの身体を抱き上げる、そしてそのまま夜の闇の中へと消えていった。
そして、シャリスを抱き上げたまま、一夜の情交を重ねる宿へと男は入り、そのままシャリスをベッドに降ろし、自分が身に着けている甲冑を脱ぎ始める。
ベッドの上に横たわりながらシャリアは、男の鍛え上げられた肉体を見る、練り上げられた筋肉の束と、その下にあるだろう強靭な骨格でつくり上げられた巨体が、ランプの灯に映し出される、そしてその巨体が近づいてきた。
「乱暴にされるのと優しくされるのと、どちらの方が好きだ?」
ビクリ!と身体を硬直させながら、シャリスは喘ぐように言う。
「初めなんです…優しくしてください…御願いします」
男は奇妙なほど優しげな笑みを浮かべ言う。
「それじゃ、乱暴にしてやろう、文句は言わせないぞ!」
「ひっ!」
まだ紅いローブを身に纏ったままのシャリス、その紅いローブが乱暴に引き剥がされ、その下にまとって衣服へと手が掛かる。
「まって!御願い優しく、御願い!」
引き剥がされたローブ、その乱暴さに悲鳴を上げるシャリスを押さえ込んだ男は、更に乱暴にシャリスの身体を扱う。
「いやっ!いやぁぁーーー!」
悲鳴を上げるシャリス、その身体がしだいに剥かれて行き、その素肌を曝け出す。
透き通るような肌がランプの淡い灯に照らし出される、長くしなやかな銀髪が鈍く光る、引き脱がされた衣服が乱雑に床へと散らばり、空気を切り裂くような悲鳴が部屋の中に満ちて行く
「あっ!あうっ!」
持ち上げられ、ベッドに捻じ伏せられ、玩具の様に身体を男に嬲られて行く苦痛、悲鳴を上げ抗いながらもシャリスは耐える、もしも本当に男を拒絶するのならば、方法は幾つもある…習得した魔法を使えば逃げ出す事も可能であるし、男を殺す事すら可能であったかもしれない、だがシャリスはギリギリの位置で男の乱暴に耐え、その身を任せる…自分を逃がすために、その身を犠牲にした姉の為に…
「姉さん…」
姉さん…シャリスは知っている、双子の姉であるシャリアが、すでにこの世界に存在していないであろうと言う事を、だが…それ故にシャリスは、あの場所へと行かなければならない、そして一刻も早く姉の魂を、あの場所から解き放たねばならないと信じていた。
男の手が、シャリスの細くしなやかな身体を抱き締めて、その身を蹂躙して行く、細身の身体から想像も出来ない柔らかな感触と肌触り、それを味わう為に男はシャリスの身体を嬲る手の動き一層激しくして行く、振り乱れる髪がベッドに広がり銀の河となる、揉み上げられた乳房が歪みその形を、男の思うままに変化させ嬲られる、紅く勃起した小さな乳首は男の口の中で転がされ噛まれる。
「ひぃぐっ!」
時おりその口から漏らす悲鳴のような声、その声を聞きたいが為に男は更に激しく乱暴にシャリスの身体を嬲り続ける。
強靭な筋肉の束がしなやかで柔らかい肌に重ね合わさり、激しく絡み合いながら密着する、滲み出してくる互いの汗が肌を濡らし、それが潤滑剤となり密着した肌が濡れ動く、押し潰される乳房、激しく据われる唇、鎖骨の窪み舌が這い溜まった汗を舐め取る、汗で濡れた額に張りつくいく本もの銀の糸……それを視界の片隅に留めながら、男はその身体をかき抱き愛撫を繰り返す続ける、そして最後まで隠されている部分へと手を這わせて行く…
「くうっ!」
指先が鋭敏な部分に触れる、そしてその指先が身体の内部へと侵入して行く、内部にある微かな抵抗が指の侵入を防ごうと抗うが、それは意味を成さず抵抗を突き破る。
「いっ!くうぁっ!」
身体を傷つけられる苦痛に漏れだす声、その声を聞いた瞬間に男は侵入させていた指先を引き抜く、その代わりシャリスの両足首を掴み上げ、左右に大きく足を押し広げる、頭髪と同じ色の銀の茂み、その銀の茂みに微かに付けられている血の染み、その血の染みを目印にするかのように男は自分のペニスをその場所へ添える、そしてシャリスの身体を押さえ込みながら、ゆっくりと身体をシャリスの内部へと沈み込ませて行った。
「いひっ!ひぃぃぁ!」
身体を押さえ込まれているシャリスの身体が、男の腕の中で爆ぜるように動くが、がっしりと押さえ込まれた身体は微かに揺らぐだけであり、ただ男の腕の中でビクビクと苦痛に身体を震わせ、辛うじて自由になる頭を跳ね動かし、その銀の髪を振り乱しながら、食い縛っている唇から声を漏らすだけであった。
自分の中の突き込まれ、その中で蠢く異物…苦痛しか与えてくれない異物の動きにシェリスは唇を噛み締め、吐き出してしまいそうになる悲鳴を必死に耐える。
男に蹂躙され犯されている自分、自らが望んだ事はいえ、その恥辱と苦痛は限界に近い状態と言える、見開かれた瞳は自分を見ているであろう男の姿を写していない、ただ迷宮の闇の中に消えた姉の姿を追い求め続ける…
「うっ!…姉さん…」
自分の中に何かが染み込んでくるのを感じながら、シャリスの意識は堕ちていった…
暗之参
「 情欲 」
目の前に立っているエルフの少女は美しかった。
外見は細見で華奢に見えるが、その魔法使いが着用する紅いローブの下に隠されているであろう肉体の素晴らしさは、何故か確信する事が出来た。
そして、そのエルフの少女は俺に地下迷宮の探索、自分の姉を救出する為の協力を申し込んできたのである、だが返答は最初から決まっていた…
すでに地下迷宮に出現した新たな脅威の事は、広く知れ渡っており俺も知っていた。
そのような場所へ出向くなどと言う剣呑な話に乗る奴は、よっぽどの物好きか御人好しでもない限り誰もいないであろう。
当然の如く拒否である、それに俺は冒険者を今日限りで隠退する事にしていたのだ、いまさら危険を犯す気にもならなかった。
それでもエルフの少女は、引き下がらずに条件を提示する…代償を支払うと、その代償が何のかと聞き返した俺に対して、エルフの少女は強張るような口調で言った。
「代償は…私自身です…」
その言葉を聞いた時、すでに引退を決心し最後の夜を酒場でのざわめきの中で過ごす事を決めていた俺は、その決心をあっさりと撤回した。
これがもしも、金であったり珍しいアイテムと言うような代物が代償に提示されたなら、引退を撤回する事は無かったであろう。
(なにせ金は、冒険者として過ごした年月に貯めた物が山ほどある上に、引退する身にとって今更珍しいアイテムなど興 味の外に位置するものであった)
その場で俺は、エルフの少女な名前を聞く…小さな脅えるような声で自分の名前を言うエルフの少女シャリス…俺はシャリスを抱きあげてと酒場の外へと連れ出す、近場にある一夜の情交を楽しむ宿屋へと行く為に…
シャリスをベッドの上に置き、身に着けている甲冑を脱ぐ、ボルタックの店屋で購入し長年の間愛用してきた代物だ、腰に手挟んでいる剣も放し下に着込んでいる衣服も脱ぐ、そしてベッドの上で震えているシャリスの元へと近寄って行き、俺は聞いた。
「乱暴にされるのと優しくされるのと、どちらの方が好きだ?」
俺の問いに身体を硬直させたシャリスが、喘ぐように言う。
「初めなんです…優しくしてください…御願いします」
乱暴にする気は無かった…だが、脅えるシャリスの姿と声を聞いた瞬間に、湧き上がってくる欲望を抑える事が出来なくなった。
「それじゃ、乱暴にしてやろう、文句は言わせないぞ!」
俺の口から残酷な言葉が飛び出す、そして俺はシャリスの紅いローブを乱暴に引き剥がした。
「ひっ!」
小さな悲鳴をあげるシャリス、さらに欲望が沸きあがり止らなくなってくる。
「まって!御願い優しく、御願い!」
哀願を繰り返すシャリスを無視して、俺はローブの下にある衣服を引き剥がし脱がして行く、抗いを押え込みながら乱暴に身体を扱う。
「いやっ!いやぁぁーーー!」
悲鳴が妙に気持ち酔い、そしてしだいに剥かれて行く、その素肌が俺の瞳に映し出されて行く、細く華奢に見えた肉体…だが、マスターレベルに達する冒険者でもあるシャリスの肉体は、充分な弾力と膨らみを併せ持つ肉体であった。
その透き通る様な肌も、銀の髪も…その全てが美しく魅力的であり、唇から吐き出される悲鳴すら官能的であった。
「あっ!あうっ!」
その肌触りを知るために乱暴に身体を嬲り、その反応を知るために更に激しく身体を責め立てる、漏れ出す悲鳴と抗いの動き…それを堪能しながらも俺は、シャリスが必死になりギリギリで耐え忍んでいることを知る。
マスターレベルの魔法使い、その気になりさえすれば、甲冑は愚か武器すら持っていない俺から逃げ出す事や、俺を殺す事すら簡単に出来る筈だ、だがそれをせずに俺の乱暴な愛撫に身を任せながら、その行為を受け入れて耐え続けている。
「姉さん…」
時折漏らす声の中に、苦痛の悲鳴でもなく哀願でもなく、贖罪を求める罪人の様な言葉が混じる、それは自分が迷宮の奥に置き去りとしてしまった姉に対する償いの声…シャリスも既に知りえているであろう…姉が生きてなどいないと言う事は、それでも一縷の望みを持ってなのか、それとも姉を置き去りにして生き残った自分自身を許せないためなのか、まるで罪を償うかのように俺の責めに身を任せ続ける…
俺は、そんなシャリスの細くしなやかな身体を抱き締める、そしてその肉体を蹂躙して行く、細身の身体から想像も出来ない柔らかな感触と肌触り、それを味わう為に…
抱き締めれば、その身体は柔らかく心地好い、愛撫に反応し振り乱れる銀の髪が美しい、揉み上げた掌に残る柔らかな弾力、そして口に含んだ小さな乳首を舌先で転がす感触…噛み…嬲り…吸い…しゃぶり…頬張る…
「ひぃぐっ!」
唇から漏れ出す声を聞きたく俺はシャリスを更に責める、動きは激しさを増して行き、その身体を喰らうように犯す続ける、合わせている肌は汗で張り付き、押し潰すように乳房へと押し当てている掌は動きを強める、唇を吸い舌を差し入れ口の中を舐り、溢れ出して来る唾液を啜る、身体の上を動き回らせる舌は汗を舐め取り、それを味わい続ける…乱れる髪の動きさえ激しい情欲をそそり、俺はシャリスの身体をかき抱き愛撫を繰り返す続けながら、手を下半身へと伸ばして行った。
「くうっ!」
すでに湿り気を感じる股間へと指先が蠢く、もぞもぞと指先を動かしながら、あの部分を探り…探り当てた部分から、身体の内部へと指先を侵入させる、その指先に感じる微かな抵抗…微かな抵抗を指先で感じながらも、俺はその抵抗を突き破った。
「いっ!くうぁっ!」
唇から漏れ出す苦痛の声を聞いた瞬間にはじける、侵入させていた指先を引き抜き、俺はシャリスの両足首を掴み上げると、思いっきり左右に押し広げた。
大きく広げられ、俺の眼に晒されている股間…頭髪と同じ銀色の茂みに着いている血の染み、俺はそれを目印にして勃起しているペニスをその場所へ添え、シャリスの身体を押さえ込みながら、身体を沈み込ませて行った。
「いひっ!ひぃぃぁ!」
押さえ込んだ腕の中で暴れるシャリス、だがその縛める力を緩めずに自由を奪いながら、シャリスの内部へと深く突き込んで行く、痙攣するようにビクビクと腕の中で動く柔らかな感触と強張り、その身体を引き裂く痛みは激しいのであろう、唯一自由に動く頭部が激しく揺れ動き、銀の髪が激しく振り乱れる…だが、食い縛れている唇からは、微かな苦痛の声を漏らすだけであった。
シャリスの身体を抱き締めながら、俺は突き込んだペニスを激しく動かす…俺自身の快感を貪る為に…
「うっ!…姉さん…」
必死に苦痛に耐え忍んでいるシャリスの唇から漏れ出す声…それを聞いた瞬間に、俺は欲望の全てをシャリスの胎内に吐き出す。
そして、次の瞬間にシャリスの身体から力が抜け落ちる、犯されると言う緊張感も、肉体に加えられた苦痛の強張りも、必死に耐え忍んでいた表情すら無くなる…
「おい!」
突然に消え去った反応に驚き、覚醒を促そうとしたが…それはやめた。
弛緩したシャリスの身体の上から降り、突き込んだままのペニスを引き抜く、ややだらしない格好で横たわったままのシャリスの姿を、少しの間見ていたが、姿勢を正した上で床に落ちていた毛布を、全裸となっている身体の上に覆い被せる。
そして、俺は床へゴロリと寝転がった…睡魔は、すぐにやってきて俺を眠りへと誘ってくれた…
暗之四
「 迷宮へ 」
チチチチッッ……
「んっ…」
鳥の声で起こされる、そしてシャリスは思い出す…昨夜の事を…
「あっ!」
ベッドの上で起き上がったシャリスが、まだ薄暗い室内を見渡すが、室内には誰も居なかった。
「まさか!」
ベッドから飛び出すシャリス、だがすぐにその場に屈み込んでしまう。
「うぐっ!」
何も身に着けていない身体、その剥きだしとなっている下半身を中心に広がる鈍痛、それは処女を喪失した証でもあった。
痛みを堪えながら、再度室内を見回す…誰も居ない、昨夜の情交をすら夢のとでも言う様に静かな室内、自分の身体と引き換えに助勢を頼んだ戦士の姿は痕跡すら残さず消えていた。
「そんな…」
シャリスは昨夜の戦士が、逃げ出したと思った…今から新たなメンバーを探し出すことは不可能であった。
昨夜、酒場でスラッシュが言った言葉を思い出す…
『…もしも明日の朝になっても前衛が見つからなかったら、俺は抜けさせてもらうぜ…』
もう間に合わない…姉さんを助けられない…絶望だけがシャリスを飲み込んで行く…
「いや…いやぁ!…」
その絶望に叫び声を張り上げようとした瞬間に、部屋のドアが開き、甲冑に身を包んだ大男が部屋の中へ入ってきて、座り込んでいるシャリスを見て言った。
「よお、もう起きたのか…MPは回復できたんだろうな?」
部屋に入ってきた甲冑姿の大男…その男は、紛れも無く昨夜シャリスと一夜の契りを交わした男であった。
「あっ…」
叫びだす半歩手前…そんな表情をしているシャリスに向かって、小瓶が投げ渡すとクルリと背を向ける。
「回復の水薬だ、ディオスと同じ効果があるから使え」
投げ渡された水薬の小瓶と、男を戸惑ったような表情で交互に見るシャリスであったが、ようやくに口を開く
「これは…」
背を向けたまま男は言う。
「昨夜は多少乱暴だったからな…まあ、迷宮に突入する仲間が、怪我したままと言うのもまずいんでな、とりあえず買ってきた、気にしないで使え」
シャリスは男の行動をようやくに理解する、逃げ出したのではなく、この回復の水薬を買い求めるために部屋を抜け出したのだという事を…
「ありがとうございます」
封を切り、シャリスは水薬を飲む…下半身に残っていた鈍い痛みが消えて行くのが分かる…
「よし!行くぞ、早く着替えをしろ!」
この時点でシャリスはようやくに自分が、どの様な格好でいるかを思い出す。
「えっ?…きゃぁぁーーー!!」
慌てて床に散らばったままの衣服を拾い集め、放り出されたままの紅いローブを身に付けるシャリスであった。
ようやくに身繕いを済ませたシャリスが、甲冑を着込んだ大男に質問をする…
「すいません、昨日は急な事で、忘れていたのですが…お名前は何と言うのでしょうか?」
男の方もこの時点で、初めて気がつく…自分が、まだシャリスに対して名を名乗っていなかった事を
「俺の名か…俺の名は…」
途中まで口を開きかけた男であったが、その口は閉じられる
「あ、あの…」
戸惑うような表情を見せるシャリスに向かって、ニヤッとした笑みを浮べた男は、室内を見渡し…床をゴソゴソと這っていたゴキブリを摘まみあげると、再び口を開き名を名乗った。
「俺の名はな、ゴキブリさ…」
それは、あからさまに偽名だと言うような行動であった…はたして、どのような意図の下に、この様な偽名を名乗ったのか、シャリスは理解できなかったが、その名前を受け入れる事にした。
「それでは…え〜と…ゴキブリさん、御願い致します…」
ゴキブリと呼ばれた男は、大きく頷く、そしてシャリスと一緒に部屋から出て行く…地下迷宮へと向かう為に……
つづく…?
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