『 妖異伝 夜叉姫之説 外伝 』
紗江子と絵里
「紗江子みたいな悪い子は、鬼が山から降りて来て食べらちゃうぞ!」
ママが大切にしていたアクセサリーを壊してしまい、その事を誤魔化そうとした私に、ママがそう言いながら怒ったのは、ほんの1時間前の事……でも私はもう子供じゃないんだ!
そんな子供騙しの言葉に、私はかえって反発してしまう。
「知らない! 鬼なんか来たって平気だもん、そんな事を言うママなんか嫌いだ! わたし、絶対に謝らないから!」
そう言って私は部屋に引きこもった。
でも本当はとても後悔している……私が悪い事をしてしまったのは判っているから、でもママに素直に謝る事は出来ない、本当は『ごめんなさい』といって素直に謝りたい、でも謝るきっかけが出てこない、だから私は部屋の鍵をかけていない……もう少ししたら、ママが部屋のドアをノックしてくれるだろうと思って……それを待ち続けている。
ママがドアを優しくノックしてくれたら……それを切っ掛けにして『ごめんなさい』と言う事が出来ると思って。
コツン!
小さな音がした。
(ママ?)
ママが部屋に来てくれたのかと思ったけど、その音が聞こえたのはドアの方ではなくて、窓の方から聞こえてきた。
(なんだろ?)
何の音だろうと思って窓の方へと目を向けた先にあったのは……
「あひぃ!」
声が喉に引っかかり出てこない、逃げ出したいけど体が動かない……二階にある私の部屋の外、既に日が暮れて暗くなった窓の外、その窓ガラスに張り付いていたのは、大きな黒い影と恐ろしい顔だった。そしてその恐ろしい顔の頭には、大きな角が生えていた。
「最近は生意気になっちゃて……」
それでも――その生意気さ加減が、娘の成長の証明でもあり少々嬉しいと思ったりするのは、親の欲目だろうか?
考えれば、自分も小さな時分は母に……
『そんな我侭ばかり言っていると、山から鬼が降りて来て食べられちゃうわよ!』
などと、自分がさっき娘に言ったのと同じ事を言われていた様な気もする。
自分が住んでいるこの地方には、昔からの言い伝えというか、言われていた事がある。
御山には恐ろしい鬼が住んでいて、山の上から悪い子供を見つけると里へ降りてきて、その悪い子をさらって食べてしまうと……良くある子供騙しのお話で、自分が子供の頃は本気にしていたものだったが、最近の子供はさすがに騙される事もなくなったようだ。
手に持った湯飲み、ズズッ……と残っているお茶を飲み干し、椅子から立ち上がる。
「さてと……」
そろそろ頃合だろう。
二階の自室で拗ねている紗江子、自分の方が悪いと言う事は既に判っているはずだ。だけど私に謝る切っ掛けが無くて、二階で拗ね続けているのだろう……もう少しの間、ほっとくのも面白いかもしれないけど、そろそろ謝る切っ掛けを与えてやるのが、母親の役目というものだ。
そんな事を考えながら、二階にある紗江子の部屋へと、機嫌を取る為のお菓子とお茶を持って私は向かう。
そして紗江子の部屋の前まで来た時に、窓ガラスが割れる大きな音と紗江子の悲鳴を耳にした。
黒い影が、ガラス窓を壊して部屋の中に飛び込んでくる。
その時になって、私はようやくに悲鳴を出す事が出来た。
「きゃぁぁ――!」
黒い影が私を捕まえる。
「紗江子!」
部屋の中に飛び込んできたママの姿が、目の中に入る。
「ママぁ、たすけてぇ――!」
手を伸ばし、ママに助けを求める。
ママは、私の手を掴もうとしてくれたけど、黒い影が――ブンッ! と腕を振るうと、ママは壁を突き破って部屋の外へと弾き飛ばされてしまった。
「ママァ! ママァーー!」
部屋の外へと弾き飛ばされたママが心配で、私は大きな声でママを呼び続けるけど、ママは返事をしてくれない、そして私を捕まえた影は、部屋を跳び出して山の方へと向かって走り続ける。
「やぁだぁ、はなしてよぉ、ママ! ママァ、たすけてぇぇ――! ママァァ――!!」
闇の中に響く少女の叫び声――その声を聞き咎める者は、不思議な事に誰一人としておらず、黒い影は少女を抱えたまま、山の方へと消えて行った。
どれくらいの時間がたったのだろう……何時の間にか気を失っていたらしい、そして意識を取り戻した私の眼の前に、それは居た。
「ひぃ……ひぃぃ……」
私をさらって……ママを弾き飛ばした黒い影……ママが言っていた言葉を思い出す。
『良い子にしてないと、鬼がやってきて紗江子を食べらちゃうぞ!』
私の眼の前にいるのは……鬼としか言い様の無いものだった。
その鬼が、私の前に立ち、私を見ている……誰かを抱かかえて……抱きかかえられているのは、私と同じくらいの女の子……その女の子は裸にされていた。
「あっ……ああぁぁ……さえ……こちゃん……たす……けてぇぇ……」
切れ切れの声、そして私の方へと伸ばされた傷だらけの腕が、ブランと不自然に垂れ堕ちる。
「絵里ちゃん!」
鬼に抱きかかえられていたのは、近所に住んでいるお友達の絵里ちゃんだった……でも変だ? 私は絵里ちゃんの事を、今の今ままで忘れていたからだ。
鬼……それは人を喰らう存在、それは人の天敵、それは人に仇なす者達……だが、その存在は、伝説と伝承の中に紛れ込み続け、明らかに存在していると言うのに、その存在は人々の間に確たる物として認識されることはなかった。
何故なら人を喰らう存在としての鬼は、人の肉体だけではなく、同時に別の物も喰らうからであった……鬼が喰らう、もう一つの物……それは人の存在、鬼の虜となった人間は、稀有な例を除いて、その存在が希薄となって行き、やがてその存在自体が世界から忘れ去られ消去される……この世界に最初から存在しないとでも言うように……
どの様な理屈でそのような事が起きるのか、それを確かめる術は無いが、僅かな例外を除いて鬼の犠牲者は、その存在を忘れ去られる事となり、結果として鬼の存在は、何時の時代も伝説と伝承の中に埋没し続け、人に各個たる存在として認識されることは無かった。
紗江子が鬼にさらわれる以前に、絵里という名の少女も同様に鬼によってさらわれていたが、絵里という存在は既に世界から消去されており、友達であった紗江子の記憶の中からも消え去り、絵里がいなくなった事を認識する事が出来なくなっていたのだ……こうして同じ鬼にさらわれて、再び出会うまでは……
「あっ、あぁぁ……やだぁ……ひぎぃ!」
鬼に抱かかえられている絵里ちゃん……抱かかえられている絵里ちゃんの股間に、鬼の股から生えている、ゴツゴツとしたぼっこの様なモノが突き刺さっていた。
鬼が絵里ちゃんに突き刺している、ぼっこの様なモノが何のかを私は知っている。
少し前に学校で、保健の時間に女子だけが集められて教えられた事、その中で見せられたビデオの中にあった物……こんなに大きくなく、こんな形もしていなかったけど、それが男の人のオチンチンだと私は知っていた。
そして、そのオチンチンが、絵里ちゃんのアソコに突き込まれ出し入れされている。
「あぐぅ、ひぃぐぅ、はぎぃぃ……ぎぃはぁ!」
突き込まれる度に、大きく裂けた絵里ちゃんのアソコから血が飛び散り、入れられているオチンチンで、お腹がボコボコと膨らんでグニグニと動く……今にもお腹を突き破りそうなぐらいに……
「いぃぃぁぎゃぁぁーー!!」
一際大きな悲鳴が絵里ちゃんの口から吐き出される。
そして次の瞬間に、絵里ちゃんのお腹が破け、その破れたお腹から飛び出したぼっこの様なオチンチンが、絵里ちゃんの破れたお腹から飛び散った血と一緒に、大量の液を私の方へと吐き出した。
「ひぃぃ!」
ビチャビチャと降りかかってくる絵里ちゃんの血、そして濁ったように白い大量の液汁、それを頭から被った私は、ガクガクと震え続ける事しか出来なかった。
ベシャリ! 抱かかえていた絵里ちゃんを壊れた人形の様に放り出しや鬼が、私の方へと近寄ってくる……そして、絵里ちゃんの血に塗れたモノを、私の前に突き出す。
「やぁだぁ……やぁぁ……」
生温かいものが股間からあふれ出てきて股間を濡らしていく……
立ち上がって逃げようとしても、思うように体が動かない、ただ目の前に突き出された血塗れのオチンチンを前にして、イヤイヤと頭を振り続ける事しか出来ない
「グゥゥルルゥゥゥ……」
鬼の口から低い唸り声を出しながら、恐怖で震え頭を振り続ける私の頭を掴んで、口元へと血塗れのオリンリンを押し付けてくる。
血に塗れた鬼のオチンチン……ベチャリと唇に血が付着し、ムッ! とする吐気をもよおす様な、生臭い匂いと味が口の中に染み込んでくる。
私は……押し付けられたオチンチンを舐める。
「うぐぅ……」
ぬめりとした血の味と匂い、そして生臭く吐き出してしまいそうな味と匂い……それが混ざり合ったものを舌に感じながらも、私はオチンチンを泣き震えながら舐め続ける。
「んっ……ひぃんあぁ、あふぅ……くぅひぃんっあぁぁ……」
ペチャペチャと、臭いのを我慢し、怖いのを我慢し、私は鬼のオチンチンをひたすら舐め続ける。舐め続けていれば、それ以上の事をされないだろう……絵里ちゃんみたいな事をされないだろう……そう思いながら、一生懸命に鬼のオチンチンを舐め続ける。
「んあぁ、ぐぶぅぅ……あぐぁひぐぅふぅひゅちゅぐぅぅ……ひぃがぁふん!」
大きく開け広げた口の中に、鬼のオチンチンがグリグリと捻じ込まれてくる。ゴツゴツと固く、ビクビクと動く気持ちの悪い塊、それが無理やりに口の中へと押し込められ、喉の奥へと捻じ込まれて行く
「んがぁふっ! がぁぐひぃぐぅぅぎぃあぁぁ……んばぁひぐぅふぅ!」
裂けそうになる位に押し広げられた口、そして喉の奥に押し当てられるオチンチンから、溢れ出すほどの熱くドロリとした物が、私の中に注ぎ込まれて行く
「ごぉうぅ、ふぅばぁうぅぅぐぅ! むぐぅあぁぁぶふぁぐぃぃああぁぁひぐぶぅぅ!」
注ぎ込まれる物によって、溺れそうになる私……そして口から引き抜かれたオチンチンノ先から溢れ出し続ける白濁した粘液が、私の顔にベチャリ! 浴びせられ続けた。
「ごぶぅ、ひぐぅぅ……ひぃ!」
口に吐き出された粘液を吐き出し続ける私の服が、絵里ちゃんの血に塗れた服が鬼の手で引き剥がされる。
ビリビリと引き剥がされる服、下着もその時に一緒に脱がされ、靴下だけが残される。
「やだぁ、たすけてぇ、ママ……良い子になるから、たすけてぇ……」
長く伸びた鬼の舌が、私の体を舐め回す。
「あひゃぁ!」
ペチャペチャと音をたてながら、体中を舐めまわす鬼の舌……髪が舐められ、顔が舐められ、口が舐められ、腋の下を舐められ、胸を舐められ、乳首を舐められ、腹を舐められ、臍を舐められ、足を舐められ……股間を舐められる……
執拗に股間を舐め、お尻の穴を舐める鬼の舌……散々に股間を舐めまわした鬼の舌が離れて行く、そして鬼の唾液でベチョベチョに濡れた場所へと、あてがわれる異物の感触……
「いやぁぁ……たすけてぇ、たすけてぇぇ……ママァ……」
呻くような声を出す私……そして次の瞬間に、焼けるような激痛が私を貫いた。
「あぅ、あがぃぃ――――!!」
激痛に喘ぎ、その激痛から逃れようと足掻く私……しかし鬼は私の体を押さえつけながら、激しく股間を貫き続ける。
「いあだぁい、いだぁぁーーいぃぃ!」
ビチビチと股が裂ける様な音が聞える。
その音を聞きながら、私は悲鳴を上げ続ける。
手足を暴れさせながら、貫かれ続ける股間を何とかしようと足掻き続けるが、逃れる事が出来る筈もなく……
「あぁ……ぐぅ、いだぁぁいぃぃ……まぁまぁぁ……ままぁ……たすけぇてぇぇ……」
やがて腹の中へと吐き出される鬼の欲望、それに満たされる紗江子の肉体、それで終わりではない……それは陵辱の始まりであり、延々と続く、終わる時など想像も出来ない責苦が紗江子の肉体を犯し続ける事となる……紗江子は犯され続ける……泣きながら、悲鳴を上げながら、そして辛うじて残った意識の下で、母に助けを求めながら……その助けを求め続ける母が、鬼の振るった一撃によって、既に死んでいる事など知り得る事無く、鬼に犯され続けた挙句、その死に勝る苦痛に満ちた陵辱から開放されるのは数日後……鬼が新たな玩具を手に入れた時であり、その陵辱からの解放の代償は、紗江子の死によってであった。
地方新聞の片隅に、このようなニュースが掲載された。
『住宅街に正体不明の獣? 〜H県の住宅地にて、民家に正体不明の獣が押し入り、住宅にいた家人を殺害し逃亡したと言う事件が発生した……熊などの大型獣が里の降りてくる時期にはまだ早く、また大型の獣が逃げ出したと言う報告もされておらず………』
本来なら、もっと大々的な重大ニュースとして報道されてもおかしくない惨事であったが、だが現実にニュースとして流れたのはそれだけであり、それ以上の報道は無論の事、何らかの続報がニュースとなって流れる事も無く、不思議な事にそのニュースは、それだけで終る事となった。更には、そのニュースが流されたという事すら人々の記憶(意識)から消え去り、興味を持つ人間すら現れず、また被害にあった住宅にいた筈の少女の事も、ましてや数日前に近所に住んでいる同年齢の少女が消え去った事も、話題にもニュースにもならなかった……まるで最初からその様な事件が発生しておらず、消え去った少女達が存在していなかったとでも言うように、人々の間からニュースと言うよりは、事件その物の存在が矛盾を感じる事無く綺麗に忘れ去られてしまった。
だが逆にこの矛盾に満ち溢れながら、逆に矛盾無く忘れ去れたニュースの存在によって、何かの存在を知る事となる者達もいた。
本来なら誰も気にも留める事無く消え去り忘れ去られる事件、消え去り忘れ去られると言う事によって、逆にその事件の奥に隠れる何かの存在を嗅ぎ取り、その現れ出でた何かに対処する者達――鬼頭流符術――それは数百年の昔より、鬼の存在を確信し、人の天敵たる鬼を討伐し封印し続けてきた集団であった。
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