柊三姉妹物語



                               
章乃参

                        
  【 椛〜其の弐 】


                                「 玩具 」


 その男は計算をしている、複雑な計算ではない至極単純な、それいて悪魔のような狡猾で残忍な計算をしていた…

 月に数回、その男は椛の肉体を貪るように犯していた。
 当初の頃こそ、偽りの愛を語りながら、労わりを見せる事もあったが、最近では如何様に椛の肉体を楽しむ事が出来るかを、探求する様に変化していた。
 そして、さらにここ数週間…椛の妹、由美子をも自分の欲望のとりこにした結果、一つの心境の変化が現れだしていた。
 由美子と言う新しい玩具を手に入れたと言う思い、ならば椛と言う名前の古い玩具をどうしようかと言う思い…
 新しい玩具を手に入れたのだから、古い玩具は捨てられる運命…しかし、ただ捨て去るには勿体無い玩具であり、まだまだ遊ぶ事の出来る…利用する事が出来る玩具だ。
 だから、男は考えて計算をめぐらしした…如何様にすれば、古い玩具を有効活用することができるかと言うことを…


                                 「 接待 」


「頼まれてくれないか、椛くん…」
 愛人であり、上司でもある男に、そう切り出されたのは、何回…いや、何十回目かの逢瀬の情事を済ませた直後であった。
 その男は、淡々と説明する…
 今度、商談(椛とその男が勤めているのは、商事会社である)を取りまとめる為に、相手会社の人間を接待しなければならない、その接待をする時に椛に、その接待をする人物の接待役をして貰えないかと言う話である…接待の内容は、横に座って酒の相手をしたり、話をしたりする程度…本来なら、専門のコンパニオンでも雇えば良いのだが、接待の相手が外人であり、少なくとも日本語以外に英語も堪能に話せるコンパニオンが必要となってくる、決められている予算では英語を話せるようなコンパニオンを雇い入れるほどの予算は組めない、経費節減と言う事で、英語に堪能な椛にコンパニオン役を頼めないかと言う話であった。
 会社の上司としての頼みと、愛人の彼としての頼み…椛は、その頼みを断る事が出来なかった。

 接待の場所として選ばれたのは、相手の希望(接待相手は外人であり、その人間が日本的な場所を希望したと言うことで)山奥のひなびた(と言うよりは、たんに古くて人気の無い)旅館であった。
 その場所に上司と椛、そして接待する男性が到着したのは、午後遅くであった。
 初めて接待する人物を見た時、椛は驚きに包まれた…身長は、二メートル以上、体重もそれに見合うだけの肉を纏った黒人の男性、それが本日接待をする相手であった。
その男性が、椛に挨拶をする。
「コニチワ、ワタシマイクイイマス、キョウハ、セタイニショウタイシテクレテ、アリガトゴザイマス」
 たどたどしい日本語で喋るマイクと名乗る黒人男性、くりくりした目と、おどけたような動作が笑いを誘う…なんとなくヌイグルミの熊の人形を思い起させ、椛は思わず笑みをこぼす…
「オー!!アナタ、トテモプリティ!デース!」
 両手を広げ、大げさな動作で椛を褒めるマイク…その動作は、確かに熊を思い起させた…ただし、凶悪な人食い熊にも見えた…

 まずは、風呂で汗を流したいと言うマイクの希望で、上司とマイクは露天風呂に向かう。
その間に君も風呂に入ってくると良いと言う、上司の進めにより椛も風呂へと向かった。


              


脱衣所で服を脱ぎ、風呂へと入る…白い肌が、眩しい…湯床に座り身体を洗う、若い張りのある肌が、泡に包まれ洗い清められていく…
 考えれば両親が死んで以来、温泉だとか、このような施設に来た事は無い…浴槽に浸かりながら、椛は考える。
「今度、由美子や亜衣を連れて来てあげても良いかもしれないわ…ああ…いい湯加減だわ…」
 湯船の中で伸びをする椛…椛は知らなかった…脱衣所に仕掛けられた隠しカメラが、服を脱いでいく椛の行動を記録していた事を、そして風呂に設置されている隠しカメラが、湯船でくつろぐ椛の姿の、すべてを記録しているなどと言うことを…


               


 風呂から上がり、用意されていた浴衣に着替えて(浴衣姿が、マイクの希望と言う事だそうだ)部屋に戻る。
 すでに座は作られており、各種の料理や酒類が並べられており、主賓たる接待相手の到着を待っている、椛は主賓の席の横に設えられた場所の座り待つ…やがて、主賓たる接待相手のマイクと上司が現れ、宴会が始まった。

 商談なのか雑談なのか、上司とマイクは日本語と英語…その両方、チャンポン状態で話をしたり笑ったりしている、椛は会話の邪魔にならないように、差し出された器に酒を注ぎ、振られた話に相槌をうち(当然の事ながら、椛も外人の話す英語を理解し、話し返す程度の英語に対する理解力は持ち合わせている)接待をする。
 不意に携帯の着メロが鳴り響き、慌てて上司が席を立ち、廊下で携帯に向かって何かを話している…そして、私が呼ばれた。
 急用の会社に戻るように命じられたということであり、夜半までには戻るので、その間マイクさんの接待を続けてくれと言う話だった。
 何事かをマイクと話す上司…やがて上司が席から消え去り、椛とマイクだけが残される…さらに接待は続き、時刻は夜の10時を示していた。

 不意にマイクが立ち上がったかと思うと、椛に言う。
「ソロソロ、ハジメマショーカ?モミジサン?」
「えっ?」
 すでに、勧められるままに酒を飲まされ、酔いの回った状態の椛は、朦朧とした意識の下に問い返す。
 マイクは、ヒョイと椛を抱え上げると、隣の部屋に続いている襖を開け広げる…その部屋には、布団がすでに敷かれていた…枕が二つ枕に対して一つの布団が…


                             「 凌辱の宴 」


 抱かかえられたまま、椛は布団に押し倒される。
「ひやっ!ひゃめてください!わらし、そんにゃんじゃないれす!」
 酒が入っているせいか、やや呂律の回らない悲鳴…マイクは、その抗いの声を無視して、押し倒した椛の浴衣を剥ぎ取っていく…帯が解かれ、大きく浴衣の前が肌蹴られる、酒に酔いほんのりと染まった素肌が刺激的であり、男の欲望をそそる。
「ひぃやぁぁーーーー!!」
 這い蹲り、必死にその場から逃げ出そうと足掻く椛…しかし、大男と言えるマイクと比較的小柄な椛…大人と子供以上の対格差では、逃げ出すことなどできる筈が無かった。
 引き戻され、布団の上に放り出される椛の眼前に、マイクの威きり立ったペニスが突き出される…
「ひっ!」
 それは凶器としか言いようの無い代物であった…椛が知っている唯一の男性器は上司のモノだったが、それよりも遥かに太く!長く!節くれだち!真っ黒な!まるで別の生物様にビクビクと蠢きながら、先端部から半透明の液体を滴らせながら、椛に迫ってきた。
マイクの手が椛の頭を捕まえると、その凶器を椛の口中に捻じ込んだ…
「ハ〜イ…カンダラダメネ、カンダラアナタガタイヘンナコトニナルマスヨ…ソレニシゴトモパーニナルマス」
 その巨大なペニスが、椛の口の中に突き込まれる…邪悪な生物ごとくペニスは、喉の奥底へと侵入していく…大きく開け広げられた椛の口に、ジュゴジュゴと出し入れされる漆黒のペニス…やがて、マイクは椛の口の中に大量の精液を射精した。
 精液がペニスから吐き出される、半分は椛の喉を通過して胃にへと落ちていったが、残り半分精液は、口から溢れ出したり、逆流して鼻へと向かい、鼻汁のごとく鼻腔から噴出したりした。
「げふっ!ぐふっ…ぐぅぅ…」
 口中で溢れかえった精液に咽る椛…そんな椛にマイクは、さらに凌辱を続ける。
 椛の両足を背後から抱え上げる…ちょうど、幼児に小便をさせるような格好に似ている、曝け出される椛の股間…腸まで見せ付けるように、両足を大きく開かせながら股間を執拗なまでに嬲る…まるで、何かに見せ付けるかのようにしながら…


              


 ぼとり…と、マイクの手が椛を放が、すぐに倒れたままの椛の上にマイクが覆いかぶさる…身動きは完全に封じられている、その椛の上にマイクが圧し掛かる…椛の両足をまるで荷物かなにかのように両肩に担ぎ上げたまま椛の唇に舌を這わせる、首筋…鎖骨の窪み…乳房…舌が椛の身体を弄る、乳房に這わせた舌で乳首を苛む、勃起した乳首を舌先で嬲りながら強く噛む!
「イヒィ―――!」
 椛に甲高い悲鳴を上げさせながら、乳首から滴り零れた血を舌で舐めとる、舌は
さらに下腹部に降りていき淡い茂みが香る秘所の割れ目に差し込まれた、ビクン!と椛の身体が爆ぜる!、しかし押さえつけられた身体はビクリとも動かない、椛にできる抵抗は泣き叫ぶ事だけであった。
「いやぁぁ……もう…もう!やめて!だれか!誰か!助けて―――!」 
 巨大なマイクのペニスが椛の秘所の入口を探すかのように茂みに中を突つきまわす…ブルン!といきり立っている巨大なペニスの先端からこぼれ出した白濁した液がボタボタと椛の腹の上に落ちていく…椛は腰を必死に動かし、ペニスから逃れようとする…しかし、それは儚い抵抗でしかなかった。
 やがてペニスが椛の秘所の入口を探しあてる…秘所の入口に押し当てられたペニスが、椛の美肉を抉るかのようにズブズブと沈み込んでいく…
「うぎゃぁ―――――!」
 椛は叫ぶ、文字通り身体を引き裂かれる激痛!ブチブチ…と引き裂かれて行く秘部…膣一杯に捻じ込まれていく巨大なペニス…
「あ…がぁぁ…ぐぁ!…」
 あまりの激痛は椛の叫び声すら押し止める…見開かれた瞳が激痛に血走る…大きく開け広げられた口から舌がとびだす…ガクガクと身体が震えるように痙攣を引き起こす…
 両足を抱えこんだマイクが腰を乱暴に動かし、さらに股間を引裂いていく…
ぶじゅぶじゅと血が結合部から溢れ出す…その紅い血がやがて白く濁った液と混じり合いながら溢れ出す…マイクが打ち震えるように身体を身悶えさせる…自分の体内に注ぎこまれて行く、熱く…おぞましい感触…椛の意識は暗黒の中に飲みこまれていった……


                              「 愛情 」


 次に椛が気がついたのは、布団の中であった…自分を見ている課長の顔が真上に見えた…
「あっ…」
 何か言おうとする椛を課長は押しとどめ、涙を流しながら課長は言う。
「すまん…謝罪して済む事ではないが…すまん!」
 何が起こったのか…すべてを理解した気がする…涙が滲み出すのがわかる…
「わたし…わたし…」
 そんな私の顔を抱かかえ課長が、咽ぶように泣きながら言う…
「契約は破棄した!君に迷惑をかけて、すまない…私の責任だ…すまない!」
 この人は、たんに私の肉体だけが目的だと思っていた…でも違う…この人は、私を愛してくれていたのだ…そう椛は思った…

 私と課長の関係を公にすることになるであろう、この出来事を事件にする事は出来なかった…そして、この商談がどうなったのかも、詳しい事は知る事が出来なかった。
 数日の休みを与えられて、私は傷を癒す…(表向きは、風邪が悪化しての休み…と言う事になっている)
 そして、傷が癒え…会社に出るようになり…彼との関係が続く…ただ、以前とは違う。
私は彼に愛されているのだと言う実感があった…


                             「 次回作 」


 会社の近くの喫茶店で彼…椛の会社の上司であり、椛と愛人関係にある男が、話をしていた。
「それじゃ、約束の金だ…」
 手渡された封筒を背広の内ポケットに入れ、その男が言う。
「売り上げはどうだったんだ?」
 封筒を手渡した男が、ニヤリ…と笑って応える。
「久々の大ヒット!だな【美人ОL温泉湯煙レイプ!】は…」
「ベタなタイトルだな…」
「な〜に、裏モノは、これくらいベタなタイトルの方が売り上げがいいもんだ…ところでだ…次回作の予定が決まったぞ」
「次回作か…んで、タイトルは?」
「ズバリ!【美人ОL絶叫!輪姦!輪姦!輪姦!】だ!」
 これまたベタなタイトルであったが、タイトルだけで内容を容易に想像できるタイトルであった。
 苦笑いしながら、男が立ち上がる。
「了解した…詳しい手順が決まったら、前回同様に椛を連れ出す…それで、いいな?」
「ОKだ…しかし、お前も悪党だな…おまえの愛人なんだろ?あの娘は…」
 意外な事を聞かれた…そんな表情を見せ、男は言う。
「な〜に、新しい玩具を手に入れたかな、古い玩具はせいぜい利用しつくしてから処分しようと思ってね」
 そして、そのまま男は喫茶店を出て行く…

 全てが仕組まれた事であった…商談…接待…その様な事実は無かった。
 全ては、椛を温泉旅館に連れ出し、その温泉旅館で椛をレイプし、その一部始終を撮影して、裏物として売り出す…
 全てが、最初から計画されていた事であった…
 そして、いま次回作の製作が決定された…はたして、椛にどのような運命が待ち受けているのか…それは、当人すら知りえない事であった。

 会社へと向かう道を歩きながら、男は考える…
(今日は、新しい方も玩具で遊ぼうか…)
 ポケットから携帯を取り出す…数回の呼び出し音…
『はい…由美子…です』
 携帯に出た由美子に用件だけを言う…
『もう…勘弁してください…お願いします…』
 携帯の向こう…半分泣き声の由美子に容赦の無い言葉で、男は言う。
「お姉さんに、嫌われたいのか?」
 それだけで、由美子は拒否する事が出来なくなる…待ち合わせ場所を言いつけて、男は携帯を一方的に切る…次の瞬間、男は背後から声をかけられた。
「課長、今からお帰りですか?」
 椛であった。
「ああ、そうだ…体の具合は、もう良いのかい?」
「はい…もう、ほとんど…その節は…」
「それじゃ…また近いうちに…いいかな?」
「はい…」
 そうして、二人は並んで会社への道を歩き出した…




                       章乃参・・・『 椛〜其の弐 』 おわり

                       章乃四・・・『 由美子〜其の弐 』へ つづく


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