『 ヒルダ…闇の中 』


                               【 人形 】


 最初のその少女を見た時に感じたのは…
『まるで人形のような少女だ…』
と言う事だった。
 当時、まだ7歳のヒルディガルド…ヒルダは、本当に人形のような少女だった。
 小柄で細く華奢な姿は、何となく現実離れした印象を与え、その長く伸ばされた金の髪は幻想的ですらあった。
 その少女が、隠れる様にしてしがみ付いていた母親の影から出てきて、オズオズとした小さな…だが、澄んだ鐘の様な声で挨拶をしてくれる。
「えと……おにいちゃん、なかよくしてくださいね」
 そう言って差し出された細くしなやかな手を、僕は一瞬の途惑い(その差し出された手が、あまりにも小さく華奢であったために、触れると壊れてしまうような気がしたのだ)の後に、出来るだけ優しく握り締めて言った。
「僕の方こそ、よろしくねヒルダちゃん」
 その瞬間にヒルダの顔は、可憐な花が開いたような笑顔になり、僕に抱きついてきて頬にキスをする、この瞬間から僕はヒルダの虜になってしまったのだ。


                                【 浴衣 】


「お兄ちゃん、この浴衣どうかな?」
 下ろしたばかりの浴衣に身を包んだヒルダが、椅子に座っている僕の目の前でくるりと回転する、それとともに二本のお下げに纏め上げられている長く綺麗な金髪も一緒にくるりとまわる、嬉しそうでどこか恥かしそうな表情のヒルダ、その白い肌や顔が少し紅潮しているのは風呂に入ったばかりではなく、初めて着た浴衣に興奮しているせいもあるだろう、丸く大きな眼鏡をかけたその蒼い瞳をキラキラとさせながら嬉しそうだ。
 そのヒルダが身に着けている浴衣は、蒼を基調にした涼しげ浴衣地に淡く染められている桔梗の花柄で、どちらかと言えば大人びた印象を与える落ち着いた代物である、地味な印象を与えかねない彩であるが着ている人間がヒルダであるとすれば、実に良く似合っているといえた。
「良く似合っているよ」
 僕は、ヒルダから少し視線を離して、少し面倒臭そうな口調をわざと入れて言う。
「お兄ちゃん!もっとしっかり見て言ってよ!」
 少しだけ不満そうな声でヒルダが言う。
 僕は椅子から立ち上がって、頬を少し膨らませているヒルダの頭に手を置き優しく撫でながら言う。
「うん、本当に良く似合っているよ」
 ヒルダがパフン!と僕に飛びついてくる、そして全身を使って甘えたような口調で
「それじゃ、早くお祭に行こうよ」
 そういいながら僕の腕を掴んで引っ張る、苦笑しながら僕は机の上に置いてあった薬とコップを差し出して言う。
「その前に薬をキチンと飲んで、そうしないと発作をまた起こしてしまうからな」
 ヒルダは身体少し弱い、それほど極端では無いが定期的に服用しなければいけない薬が何種類かある、これもそのうちの一つである。
「……うん」
 少しだけヒルダが哀しそうな表情になる、ヒルダは知っているのだ自分が病弱であり、そのため両親に多大な苦労をかけているという事を、だから必要な事ではあるが薬を飲むという行為に対して、少なからず抵抗感があった。
差し出された薬を、コップに注がれている水で飲むヒルダ、その姿を見ながら僕は考える、ヒルダは知らないんだ…今飲んでいるコップの水の中に、僕が利尿剤が混入させているという事を……
「…ぷはぁ〜!お兄ちゃん、早くお祭に行こう!」
 薬を飲んだヒルダが、再び僕の手を掴んで引っ張る、僕はヒルダに手を引かれてマンションから出て行く、近所の神社で行なわれている夏祭りの会場へと向かうために…

 僕が住んでいるマンションの近所で、夏祭りが開かれるという事をヒルダに話したのは、数週間前の事だった。
 そして、その夏祭りを見物したいと滅多に我侭を言わないヒルダが、両親にせがんで僕の住むマンションに来たのは昨日の事だった。
 無論のこと事前に話は聞いている、仕事の忙しいヒルダの両親に頼まれて少しの間、僕はヒルダをマンションに泊める事になったのだ、小さな頃から僕を兄のように思って慕ってくれているヒルダ、両親たちも安心して預ける事が出来たのであろう。
 ただ、それは大いなる間違いである…ヒルダの両親が、もし僕がヒルダに対して抱いている感情を知り得ていたのなら、けして僕の下へヒルダを寄越す事はなったであろう、そしてヒルダも来ようなどと考える事はなかったであろう。

 何時の頃からであろうか?
 大切な存在であるヒルダを壊してしまいたいと考える様になったのは、最初は冗談にもならない考えだと気にも留めなかった、次には冗談でも性質が悪すぎると嫌悪した、そして次には沸き上がってくる感情を必死に否定し続けた。
一時僕はヒルダと合わないようにしていた時がある、ヒルダの傍にこのまま居たのなら、取り返しがつかないことを引き起こしてしまうと確信したからである、壊してしまいたい…その思いが膨らみだしながらも、同時ヒルダを壊したくなかったのだ、無防備に全身で飛び込んでくるヒルダ…その信頼を裏切り事は、死んでも出来ない、だから僕はヒルダから逃げ出した。
 だが、ヒルダは自分が僕に嫌われたと思い込み、その事から病気を悪化させてしまう…元々体が弱い娘である、精神が弱れば肉体も同様に弱って行ってしまう。
 ヒルダの両親の願いもあり、僕はヒルダの下に頻繁に通うようになり、再び顔を合わせる様になった、そして少しずつ元気を取り戻したヒルダは、以前にも増して僕を信頼して機会がある毎に、僕が住むマンションへやって来るようになった。
 僕は耐え続けた…可愛いヒルダ、優しいヒルダ、可憐なヒルダ…そのヒルダを自分の手で壊してしまいたいという欲望を……
 だが、すでに限界が来ている事も充分に知っている、だがヒルダにこの事を知られたくは無い、狂い出しそうな狂気の狭間の末に僕は一つの妥協をした。
 一度だけ……一度だけ、ヒルダを壊してしまおう…だが、それをヒルダに悟られない様にして、ヒルダにとって僕が何時までも優しく頼りになる兄であり続けようと…

 夏祭りは絶好の機会であった。
 事前に仕込んだ利尿剤、そして夏祭の会場ではジュースやカキ氷などをヒルダに与えるようにする、結果はすぐに現れた。
 尿意を覚えたヒルダ、だがそれを僕に言う事が恥かしいようである、僕は気がつかない振りをしてヒルダと夏祭りの会場を歩き回るが、やがてヒルダは耐え切れなくなり……
「あの、お兄ちゃん…ちょっとごめんなさい、あの用事思いだして…あの、友達に携帯しなくちゃいけなくて、すぐに戻ってくるから!少しだけ待っていて!」
 そう言うと、仮設トイレが設置されているであろう場所へと消えて行った。
 僕はその後姿を見送りながら、ゆっくりと歩き出した…

 仮設トイレは、夏祭りの会場に何箇所も設置されていたが、絶対的な数は少なかった。
 それでも10分も待てば何とか順番がまわってくるのだが、限界まで尿意を我慢していたヒルダにとってそれは、あまりにも絶望的な待ち時間といえた。
 焦りまくるヒルダの頭の中に、昨日の事が思い出させられる…昨日、夏祭りが開かれる会場の下見にと、お兄ちゃんと来た時に案内された場所、神社の裏手にある空地!
『ここは夜になったら、お化けがでるからと言う話で、人が誰も来なくなるんだ…肝試しに今度来るかい?』
 その時は、夜にこんな場所に来るなんて怖いから嫌だと思っていたが、背に腹は代えられない!
 まさか、この場所で失禁なんて事になったら恥かしくて死んでしまうかもしれない!
 ヒルダは、トイレの順番待ちの列から外れると、お兄ちゃんと一緒に行った神社の裏手にある空地へと小走りにかけて行く、自分の後ろから着けて来る人影があるなどと言う事も考えずに…


                          【 欲望満たす手段 】


 神社の裏手へとかけて行くヒルダの後姿を見ながら、僕は溜息をついて独り言のように言う。
「失敗してくれた方が良かったのに…」
 それは、ある意味本音であった。
 全て自分が計算したとおりに進んでいる、昨日ヒルダを神社の裏手にある空地へと案内したのも、今日の計画の一部である、尿意を覚えたヒルダがトイレの順番を待ちきれずに、昨日の空地へ小便をするために赴くであろうと想定していたのだ。
 タイミング良く尿意を覚えなかったら、トイレの順番がすぐにまわって来たなら、あの場所を思い出さなかったなら、あの場所へ行く事を躊躇ったなら…自分が計画した、ヒルダを壊す…凌辱する計画は、穴だらけであり成功する可能性の方が遥かに少ない計画であったのに、計画は順調に進んでいっている、どこかで計画通りに行かなければ、その時点で諦める事ができる計画でもあったのだ、失敗すれば二つの思いに引き裂かれそうな日々がまた続く…それだけの話であった。
 だが、計画は順調に進んでいる、すでに引き返す事は出来ない、する気もなくなった!
 やがてヒルダが草叢の中に座り込む、僕は用意した品物を確認して身に着けはじめる、着ていたヒルダと揃いの浴衣を脱ぎ、用意してきたTシャツを着る(下半身はトランクス一枚のままだ)目隠し用のアイマスクと布、そして手足を縛り上げる為の紐も持つ、そしてヒルダが座り込んでいるであろう草叢へと近寄って行った。

「はぁ〜……」
 全身が安堵のために緩んでいくようであった。
 勢い良く出て行く自分のオシッコ、何かいくらでも出て行くような気がする…少し恥かしい?
 それでも、ようやくに全部出し切り、口に咥えていたテッシュで股間を拭取る、早くお祭の会場に戻らなければ、お兄ちゃんが待っているはずだ…大好きなお兄ちゃんが!
 立ち上がろうとしたヒルダであったが、背後に何かの気配のような物を感じ、立ち上がりながら背後を方を見ようとした瞬間に、何かに目の前を覆い隠される。
「えっ!なに、きゃっんぐっ!」
 隠される視界、かけていた眼鏡はその瞬間に何処かの吹き飛ぶ、悲鳴を出そうとしたが口を覆われてしまい悲鳴を出す事も出来なくなる。
 人は、その外部情報の9割以上を視覚によって収集している、すなわち資格さえ奪ってしまえば、何も判らなくなってしまうと言う事だ、もちろん声だとかは一切出さないように注意しなければならないが、僕はアイマスクと布で目隠しをしたヒルダをその場の押し倒す。
「んっ!んん――!んぅぅ――っ!」
 口を押えられたヒルダが呻く、それでも必死になり悲鳴を出そうと足掻くヒルダは、押さえつけている僕の手を噛んだ!
意外に強くヒルダは噛みついた手に歯を立てる、その痛みに僕は手を離してしまう。
「いやぁぁ――!誰か、お兄ちゃん!助けてぇお兄ちゃん!」
 自分を犯している僕に助けを求めるヒルダ、僕は用意してきた布切れを口に押し込んで、その叫びを中断させた。
 目隠しをされ、口を塞がれたヒルダであったが、抵抗は止まない、押さえつけられながらも必死に手足をばたつかせて抗う、顔を叩けば大人しくさせる事が出来るのかもしれないが、さすがにそれはしたくない、振り回す両腕を用意してきた紐で後手に縛り上げて、ようやくに大人しくさせる事に成功するのは、意外に時間が掛かった。
 目隠しをされ、口を塞がれ、両腕をを拘束されて草叢に横たわるヒルダ、暴れまわり必死に抵抗をしたせいで着ている浴衣の裾は捲りあがり、その素足が曝け出され泥に汚れている、また着ている浴衣も着崩れを引き起こし、その着崩れて肌蹴た浴衣から露出した白い肌も同様に泥に汚れていた。
「ふ〜…ふ〜…」
 荒い息をし、それでもまだ動かせる両足をばたつかせながら何とか逃げようとしているヒルダ、僕はそのヒルダの着ている浴衣を引き剥がし始めた。
「んっんーー!」
 眼が見えず、身体を縛められている状態であっても、自分の着ている浴衣が引き剥がされて行くのをヒルダは知る、そして自分がこの後どうなるのかを予想する事は簡単に出来てしまう。
 自分の身体に触れてくる手を、何とか振り解こうと身体を蠢かし抵抗するが、それは逆に着ている浴衣を脱がしやすくする行為であった。
 浴衣を留めている帯が解かれ抜き取られた結果、その襟を掴むだけで暴れるヒルダの身体から、簡単に浴衣は剥ぎ取られ白い肌を曝け出して行く、必死に頭を左右に振り何とかしようと足掻くヒルダであるが、ただその綺麗な金髪を振り乱すことにしかならなかった。
(助けて!助けて!お兄ちゃん)
 ヒルダは叫ぶ、声にならない声と心の中で、父でも母でもなく、ただ一人のお兄ちゃんに向けて……そのお兄ちゃんが、自分を犯している男である事も知らずに……

 帯を解く事に成功するのと、必死に抵抗するヒルダから浴衣を引き剥がす事は、ほぼ同時であった。
 まだブラジャーは着けていないが、微かな膨らみを見せ始めているヒルダの白い胸…何年か前に、一緒にお風呂に入った時に見たヒルダの胸とは当然のように違っている、その柔らかさを秘めている胸へと手を伸ばし、僕は思いっきり胸を蹂躙した。
 ヒルダの身体が、ビクン!と跳ねるよう動く、成長し始めたばかりの乳房を容赦無い力で握られ痛かったのであろう、身体を揺すり胸に置かれた手を必死にどけようと身体を動かすが、無駄な事でしかない、僕は胸に置いた手を更に激しく動かして乳房を揉み上げ、その微かな膨らみを蹂躙し嬲る、指の間に挟みこまれた小さな乳首が抓られるように嬲られて引っ張る、その度にヒルダは身体を必死に蠢かし、何とかその胸を触っている手から逃れようとする行為が、とても楽しく思えてきたのだ。
 指に間で嬲っていた小さな乳首を、口に含んで舌で弄ぶ、激しく動くヒルダの身体を押さえつけながら乳房を噛む、歯に感じる柔らかな弾力……いっその事、このまま喰い千切ってしまいたくなるのを必死に堪え、歯形を付けるだけに止めておく…自分の中にある狂暴な何かが、首をもたげだして来るの感じ始める、その衝動に身を任し思う存分にヒルダを凌辱してしまいたいという気持ちが、身体の中に満ちてくるのを感じる。

 小さな赤いリボン、それが刺繍されているヒルダの下着を一気に足首まで引き摺り下ろす。
 激しく足をばたつかせて抗うヒルダの両足を、抱え込むようにして担ぎ上げをその股間へと僕のペニスを添える、そして一気に突き込んだ。
「がぁぁうぅっっあぁーーー!」
 ヒルダの身体が爆ぜるように反り返り、口に押し込めている布切れを吐き出しそうな勢いで、くぐもった叫び声が漏れ出した。
 僕はそれを無視して、更にペニスをヒルダの胎内奥深くに挿入させて行く、そして爆ぜ動く身体を押さえ込むようにして、両手をヒルダの胸の上に乗せ、乳房を揉み上げるようにしながら嬲る、首筋を舐め上げ顔を舐り上げる、耳を噛み髪を口に頬張り噛み千切る、挿入したペニスを締め上げるヒルダの狭く熱い胎内の感触を感じながら、挿入したペニスを突き動かし快感を貪った。
 痺れるような快感を貪った末に、僕はヒルダの胎内に全てを注ぎ込んだ…
 既にヒルダはグッタリとして動かなくなっている、股間から引き抜いたペニス…破瓜の血がこびり付いたそれを、広げられているヒルダの浴衣で拭取り後始末をした。
 力なく横たわる無防備なヒルダの裸体、再度犯したいという欲望が湧き上がってくるが、それを必死に我慢する。
(ただ一度だけだ…)
 それが僕にとっての、ギリギリの妥協である、この線を越えれば歯止めが無くなり、二度とヒルダの笑顔を見る事ができなくなるであろう。
 グッタリとしているヒルダの両腕を縛めている縄を切る、そして落ちていた眼鏡をまだ目隠しをしたままのヒルダの顔にかけて、僕はその場から立ち去った…

 身体中を弄ばれた末に、股間を貫いて行った激しい痛み…体がバラバラになるかと言うような衝撃であった。
 両腕が自由になったヒルダは、よろよろと起き上がると口に付けられた布切れを吐き出し、目隠しされていた布を取る、そして眼鏡をかけなおし自分の無残な姿を確認した。
 股間を中心にして、身体中が痛かった…胸に刻まれている歯型を触った瞬間に焼けるような痛みが走る。
「うっくっ!」
 そして、一番痛む股間を見る…自分の身体だと思えないほどに汚されている股間、出血はまだ続いており、股間から精液が垂れだしてきている。
「やだ…いやだよ…おにいちゃん…やだよぉぉ〜…」
 先程まで自分の口に押し込まれていた布切れで、その溢れ出して来ている精液を必死に拭取るが、次々に溢れ出てくる精液は止まらない、出血している破瓜の血と精液が染みこんだ布切れで、泣きながら必死に股間を拭取ろうとするヒルダ…
「ヒルダか?」
 不意に呼びかけられる、声のした方を振り向いたヒルダの眼に、あれ程までに助けを求めていた、優しいお兄ちゃんの姿が映し出された。
「いやっ!見ないで、お兄ちゃんお願いだから!」
 その場から立ち上がって、駆け出そうとしたヒルダであったが、立ち上がれる筈も無くその場に崩れるようにへたり込んでしまう。

 あらためて見たヒルダの姿、泣きながら股間を必死に拭取っている姿…自分の歪んだ欲望が招いた恐ろしい結果だ。
僕を見て、叫ぶヒルダ…僕はヒルダを抱き締める、自分がしでかした愚かな結果を悔やみながら…


                           【 崩壊と欲望 】


 何とか人目につかないように、ヒルダを自分のマンションへと連れてくる事に成功する、無論これも計画した通りである。
 湯船に湯を入れて、ヒルダの身体を洗い清めるようにして、泥と体液で汚れた身体を綺麗にしてから、ベッドへと運んで寝かしつける。
「お兄ちゃん…おにいちゃん…」
 ただ…ただ泣きじゃくり、しがみ付いて来るだけのヒルダ、その頭を撫で落ち着かせる、何が起こったかは聞かない、ヒルダ自身も話したくも無いようだ…

 抱えられるようにして、私はお兄ちゃんのマンションへ帰ってくる、そしてお風呂場で身体を洗ってくれるお兄ちゃん…気のせいだろうか、お兄ちゃんに触れられていると、身体が元の自分に戻っていくような気がしてくる、身体を洗う時に触れるお兄ちゃんの手は優しくて気持ちがいい…
 ベッドに優しく寝かしつけてくれるお兄ちゃん…お兄ちゃんは、何も聞かないでくれる、私も何も言いたくなかった。
 ただ、こうしてお兄ちゃんに頭を撫でられていたかった…ずっと…でも、不意に気がつく、私の頭を撫でてくれているお兄ちゃんの手に、小さな噛み傷がある事を!
 あの時の事を、次々に思い出す。私は口を塞がれた時に、その口を塞いだ手を思いっきり噛んだという事を!
「お兄ちゃん…その手の噛み傷…」
 聞きたくなかった、でも聞かずには置けなかったのだ、お兄ちゃんは驚いたような顔をしたかと思うと次の瞬間に、今まで見たことも無いような、恐ろしい顔になった。

「お兄ちゃん…その手の噛み傷…」
 そう聞かれた瞬間に、全てが終った事を僕は知る、考えれば迂闊であった、あの時にヒルダに噛まれた手の傷痕、ヒルダを犯した興奮によりすっかり失念していたのだ、ヒルダは利口な娘だ、すべての事に気がつくだろう…こうなれば毒を喰らわば皿までもだ。
 僕は、ヒルダに笑顔を向ける、多分ヒルダが初めて見るであろう、邪悪な欲望に満ちた笑顔を…


                                                       続く



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