終わりの日
壱
守らなければいけない……それが、私が考える全てであった。
小さな頃からのお隣さん、何時も一緒の時を過ごしていた彼と、身も心も一つに結ばれたのは高校生の時、そして彼が大学に在学中している最中に学生結婚をし、こうしてささやかな平和を築き上げた……そう三ヶ月前のあの日まで!
突然に降りかかった屈辱の体験!
ただ家庭の平和を守りたくて、私は耐え続けていたが、医者に告げられた衝撃の話…… 夫に言える筈が無い、この子供が夫以外の男性の子供かも知れないと言う事は……
だから私は守らなければいけない!私と夫と子供……三人で、いままで築き上げて来た幸せと平和を……
玄関のチャイムが鳴る。
あいつが家にやって来たのだ。
一週間に2〜3度、家族が居ない時を見計らっては、家にやってきて私を犯す時もあれば、呼び出されホテルで犯される時もある。時には車の中で犯された事すらあった。
先にかかって来た電話で、今日は家の中で私を犯すと宣言をしている。だから私は前もって準備していた事を実行しようと決心したのだ。
弐
「あっ!」
乱暴にベッドの放り出される。
私と夫の寝室に置かれているWベッド、夜になればこの場所で親子三人が仲良く眠りに付く場所、そのベッドの上で私は犯される。
服を脱ごうとした私の手を掴み
『脱がす楽しみが減る、すぐに始めるぜ』
そう言うなり、私をベッドの上に放り出して覆い被さって来た。
着込んでいたブラウスのボタンが外されて行き、その下に着けているブラジャーが剥き出しにされてしまう。
羞恥心と屈辱、顔を背ける私の顔が男の手によって戻され、正面から私を見ている男の方へと向けられる。唾でも吐きかけたい衝動に襲われるが、それを実行する事は出来ない、ただ歯を喰いしばりながら顔を再び背け、男の方を見ない様にとするのが精一杯であった。
男の手が露出したブラジャーへとかかり、肌とブラの隙間に手を入れながら胸をも見上げる。押さえ込まれ揉まれる乳房の感触、嫌な筈なのに……悔しい筈なのに……その行為になれてしまい、その行為を快感を受け止め始めている自分の存在を感じてしまい、なお更の屈辱を感じずには居られない、そしてそれを知っている男は、焦らす様な手つきで乳房を揉みあげながら愛撫して行く……
「あふっ!」
思わず漏れ出す声、続いて出そうになる声を必死に飲み込み、抗いの声を出す。
「いやっ!やめて、もうやめてぇ!」
せめて言葉に出し抗わなければ、何も言わずに行為を受入れ、喘ぎ声を出すような事はしたくない、抵抗し続けなければと言う理性の声が、頭の中に響く!
「膨らんでるぜ、乳首はもう辛抱堪らないと、膨らんで俺を待っているぜ」
男の言葉に身体が羞恥で熱くなり、反射的に叫ぶ!
「違う!ちがうの、いやっ、いやなのよぉぉーー!」
理性に反して反応していく肉体、腕を突っ張り男の身体を……愛撫の手を跳ね除けようと足掻くが、力が出て来ない……逆に、乳房を揉み男の手が染み込むように快感となって来る。その快感は夫とのSEXで味わった事無い種類の快感であり、それを上回る物であった。
大きく前を開け広げられたブラウスが、完全に脱がされ放り出される。そしてブラジャーも毟られる様に剥ぎ取られ、乳房が完全に露出し、その露出した乳房へと男の口が近寄ってくる。
「いやっ!」
抗う声を出すのと同時に、乳房を口の中へと含まれてしまう。生暖かく滑る様な感触が乳房に覆い被さり、膨らんでいる乳首が男の舌先でなぶられる。
「あくっ!ひぅっ!」
痺れる様な快感、乳首の先端から流れ出る電流が頭の中を焼き、その感覚に声を上げ身体をのけぞらせる。
チラリと見える男の表情、薄笑いを浮かべながら私の反応を楽しんでいる表情……湧き上がる屈辱感が、このまま流されそうになる私の心を繋ぎ止めるが、繰り返し加えられる愛撫の動きに肉体は容赦なく反応し、身体濡れだしていくのを止める事が出来ない
「助けて…あなた、たすけてぇぇ……」
頭の中に夫の姿を思い浮かべ耐えるが、すぐにその姿は掻き消え、波の様な快感が次々に流れ込んで来る。
男は、律子の反応を楽しんでいた……肉体に加えられる快感に翻弄されながらも、残された理性によって必死に耐える姿、その抗いが無上の喜びを男に与え続ける。
最初に喫茶店の中から見た姿、清楚であり、優しい姿……そして調べてわかった幸せな家庭……遠くから覗き見た幸福そうな笑顔……それは、自分が得る事が出来なかった、幸福の縮図でもあった。
だから男は満足して律子を犯し続ける。律子が己の欲望に完全に飲み込まれ、自分から尻を振り俺に縋って来るときの事を想像し……同時に、その日が来ない事を微かに望みながら……
乳房を嬲る口の動きを止め、手探りでスカートの方へと手を動かし、スカートのホックを外す。そしてパンストとショーツの縁に手を引っ掛け、すかーと、パンスト、ショーツを同時に抜き取り、律子を全裸に引き剥く!
「いやぁ!」
抜き取られた瞬間に律子の口から漏れる声……いい声だ。もっと抗いの声を出し、抵抗してくれ……そうしてくれたのなら、もっと厭らしく隠微に犯してやろう。お前が満足し、俺が満足するまで延々と……
全裸となった身体が嬲られて行く、すでに濡れている股間へと手が伸び、湿り具合を確かめるように撫で摩り、割目へと指先を侵入させる。
「あっ、ああぁぁ!」
肉に触れる指先の感触、身体が痙攣するようにビクビクと蠢き、口から声が漏れだす。耐えなければと思いながら、すでに肉体は待ち侘びている。
「うっ!ううぅぅ……いやっ、いやよぉぉ……」
疼く様に湧き上がってくる快感、それを否定し抗う理性……限界は、すぐに来た。言いたくない言葉を言えと命令され、欲望に従い声を張りあげる。
「入れてぇ!もう入れてぇ!……お願い、あっあぁぁーー!」
突き入れられ捏ねられる満足感、充足していく満ちた感覚、肉の欲望に従ってしまう自分を情けなく、哀しくなるが、それも一瞬でしかない、せり上がる快感が身体を貫きながら満ちて行く、それに身を任せながら私は狂いだし、欲望を貪る……もっと感じたい、犯されたい!男の身体を抱きしめながら声を張りあげ続ける。そして胎内に満ちて行く男の欲望を感じながら、私は白い光に包まれていった。
参
奇妙な習慣……と言えるのか不明だが、この家で事が済んだ後に男は、律子にコーヒーを入れさせるのが習慣となっていた。
最初は男に命じられるままに、裸にされた姿のままコーヒーを入れさせられていたが、今では律子の方から、命じられる前にコーヒーを入れる様になった事もあり、身繕いを終えた後に出すようになっていた。
コーヒーの到着を待つ男を横目に見ながら、キッチンでコーヒーを入れている律子は、隠し持っていた薬の袋を取り出す。
取り出された薬の中身は睡眠薬であった。正面から男を如何にかしようとするのは、体力的な差から行っても不可能である。そして考え出したのが、睡眠薬を使う事……この薬を使用すれば、男は眠り込んでしまい抵抗しなくなる。
律子は、男を殺そうと考えていた……家庭の幸福を守るための、言うならば正当防衛……だが、愚かと言うべきか殺した後の事は、殆ど何も考えていなかった。
取り合えず殺しさえすれば、家庭の幸せを守る事が出来る……その考えに支配され、とろうとしている行為であった。
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薬をコーヒーに入れる。
薬をコーヒーに入れない。