第 八 章  

                「 想い 」



             
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 沈黙の時が二人を包む、小夜は声を掛ける事もできずに、話し終えた拓哉をただそっと見守る事しか出来なかった。
 沈黙を破り顔を伏せたまま、不意に拓哉が笑い出す、最初は小さく次第に大きくやがて小夜を嘲笑するかのような哄笑を
「どうしたんですか、突然笑い出してしっかりして下さい」
 小夜が、心配と不安の入り混じった声と顔で聞く(狂った?)小夜は一瞬その思いにとらわれた。しかし拓哉は笑いながら言う。
「本気にしたのですか? 今の話を大嘘の与太話を小夜さんは?」
「それじゃ、今まで言っていた事は嘘だと言うのですか?」
 小夜が聞き返す。
「ええ、口から出任せの真赤な嘘の話ですよ、まさか本気にするとは思いませんでした。やはり小夜さんは優しいんじゃなくて正真正銘の馬鹿……それも底なしの大馬鹿なんですね」
 笑い続ける拓哉を小夜は見る。不思議な事に笑われて馬鹿にされているのに拓哉を見ている小夜の目には変化はなく、見守るような優しいと言って良い目を向け続けている。
「ええ……そうです。私は大馬鹿です。だからもう、やめて下さい! それ以上無理をするのは……拓哉さん」
 小夜が拓哉の名を初めて呼ぶ、それにつられるかのように拓哉が顔を上げ小夜を見る。涙を溜め拓哉を見ている小夜の顔を……
「なんで、なんで泣くんですか小夜さんは、私は貴方を騙したんですよ、同情を引くような馬鹿な三文話しをして、貴女が泣いてもいいような……貴女に泣いてもらえるような人間ではないのですよ、私は……」
 拓哉は小夜から顔を背け狼狽したように言う。
「私はさっき泣いていた……私の胸で子供のように泣いていた拓哉さんを信じます……大馬鹿ですから……」
 小夜はそう言うと、再び拓哉の顔を胸に優しく包み込む、拓哉は小夜に導かれるままに胸に顔を埋める。
「私は何人もの女性に酷い事をし、その上に貴女をここに連れ込んで犯そうとした上、人殺しまでさせようとした、大嘘つきで最低で最悪な獣のような……」
 小夜は拓哉の言葉を自分の唇でさえぎる。そして拓哉の唇からそっと自分の唇を離すと拓哉の前に立ち浴衣の帯を解き始める……拓哉は、そんな小夜の姿を声もなく見守る。
 小夜は帯を解き、浴衣を脱ぎ、その白い肌をあます事無く拓哉の前にさらす。緊張と恥ずかしさのためか、肩が小さく震えているのが拓哉にもはっきりと解る。それを見て拓哉が言う。
「やめて下さい、下手な同情心やその場の感情で自分を不幸にしては駄目です。あの写真の大切な人の為にも自分を大切にして下さい、貴女にはまだこの先に未来があるのですから、ふふふ……私にこんな事を言える義理は、まるでありませんがね……」
 そんな拓哉の言葉に小夜が答える。静かに……しかし強い意志を持って。
「私は……私は、拓哉さんの妹さんではありません、それでも拓哉さんの事を憶えていてあげる事は出来ますよ、そして今だけは妹さんのかわりに拓哉さんを一人の男性として愛してあげる事も出来ます。だから恐いのに意地を張り強がり、泣きたいのに無理に我慢をして馬鹿な事をするのはもうやめて下さい、悲しすぎます」
 小夜の唇が再び拓哉の唇に重なる。おずおずと小夜の柔かい小さな舌が拓哉の口の中に入ってき、そして拓哉の舌とぎこちなく絡み合う。小夜の大胆とも言える行為に拓哉は呆気にとられる……やがて小夜は、唇を離すと涙を浮かべた目で拓哉を見つめる。
「小夜さん……」
 拓哉の胸に小夜は顔を埋める、そして囁くように言う。
「初めてなんです、優しくして下さい、お願い拓哉さん」
 拓哉はもう何も言わないし言えなくもなる、ただ小夜を抱き締めた。その抱き締めた自分の身体……爪先から頭の天辺までの全ての部分が、小夜の優しさに包まれていくのが解った。


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 拓哉の手が小夜の柔かな胸の上に置かれる、すっぽりと手で覆われた小夜の乳房が優しく揉み上げられる、やがてその手が少しずつ下に降りていく、そして空いた乳房の上でツンと膨らみ尖ってきている乳首を唇で噛む、そして口の中に含んだ乳首の先端を舌で転がすように愛撫する。
「あっ!」
 小夜が小さな声を上げる、小夜の身体の中から何かが湧きあがってくる、その熱い何かが小夜の頭の中でぐるぐると回る。
 胸から唇を離した拓哉が、小夜の顔に熱いくちづけの雨を降らせる、貪るように唇を重ね合わせながら、小さな口の中へ舌を差し込み絡ませ激しく吸う、小夜の口の中の唾液が拓哉の口に移る拓哉はそれを飲み込んだ後、ゆっくりと唇を離し囁く様に言う。
「小夜さん、とっても美味しいですよ」
 今度は、逆に小夜が拓哉の口の中に舌を絡ませて激しく吸い拓哉の唾液を啜る、そして拓哉がしたのと同じように嚥下し、同じ様に唇を離した後に囁く
「拓哉さんのも、美味しいですよ」
 小夜は目を潤ませながら言う、声に何か熱い物が含まれているのがはっきりと解る、小夜を抱き締めたまま拓哉の舌が首筋、胸、乳首、腕、指先、腹、背中、尻ありとあらゆる所を舐めまわし愛撫する、優しく時には荒々しく、愛しむように嬲るように、まるで舌が何枚もあるかのように、小夜の身体を飴のように嘗め尽くすとでも言うように……やがて拓哉の舌が、小夜の一番敏感な花園の中にある、小さな肉芽へと触れ、その部分を愛撫する。
「ひぃあっ!」
 小夜が声を上げる、拓哉の舌が小夜の敏感な部分を愛撫しながら、胎内にゆっくりと刺し込まれいく、そして小夜の内側で、まるで生き物のように蠢き小夜に切ない喘ぎ声をさらに上げさせる。
「愛して……ねえ愛して、お願い……あうっ!あっあぁぁーーんあぁぁ!」
 やがて小夜の肉壁の中から、透明なサラサラとした液体が零れるように溢れ出す、拓哉は舌でそれを受け止めると音を立てて飲む、まるでそれが聖なる物であるがごとく
「だめっ、拓哉さん……そんな事しないで、汚いから、恥ずかしいから、お願い!」
 小夜は自分が出した物をオシッコだと思い、それを飲む拓哉に止めるように哀願する、しかし拓哉は飲むのを止めずに小夜に言う。
「小夜さん、いま小夜さんが出しているのは、おしっこ何かではなくて愛液ですよ、女の人が感じた時に出す綺麗な、男を受け入れるための聖なる液体なんです、心配しないで」
「だって、わたし……んなっ!おんなのっこっですもん……あぁぁー!はぁ……やぁはぅうん!」
 拓哉の舌が、さらに小夜の肉芽を突つくように愛撫し小夜を溢れ出させる。
「大丈夫、私にまかせて、身を任せるんです。自分に素直に……」
「でも、恥ずか!ひゃうっぁ、あっ!ああぁぁ……あぁぁーぁー!」
 そして小夜の股間に顔を埋め、拓哉の顔が丹念に小夜の花園全体を愛撫した後、顔を持ちあげ小夜に言う。
「それと、私の事を拓哉さんではなく、拓哉と呼んで下さい、私も小夜さんを小夜と呼びますから、いいですね小夜、それと小夜の可愛い声をもっと聞かせて下さい、お願いします」
 小夜は切ない喘ぎ声を漏らし、それに恥ずかしさを覚えながらも頷き言う
「はっあうん、拓哉、拓哉……来て、お願い来て!」
 小夜の花園は、すっかり濡れそぼり拓哉の物を受け入れる準備は出来ていた、そして拓哉の方も充分に勃起した男根は、はちきれんばかりにそそり起ち小夜を求めていた。拓哉は小夜の両足の間に身体を割り込ませ、そのまま小夜の上に覆い被さる、そして小夜の花園に自分の物を添える。
「小夜……」
 同意を求めるかのような拓哉の声、そしてコクリと頷く小夜……拓哉の物が小夜の中に、ゆっくりと沈み込んでいく……小夜の花園は、充分に濡れており拓哉を受け入れる準備は出来ていたはずであった。しかし初めて男を受け入れる小夜の花園にとって、拓哉の男根は大きすぎた。まるで刃のないナイフが、身体の中で一番大切な場所を引き裂かれて行く、その様な激しい痛みが小夜を襲う。
「いっ、痛いぃ! お願い、もっと優しく、優しくして……お願い、拓哉さん、痛いの……恐いの」
 身体を引き裂かれる痛みと、未知なる事に対する恐怖に、小夜が呻くような声を出し拓哉に哀願する。そして拓哉の男根から逃れようとするかのように、無意識に小夜の身体が擦り上がり、先端部分だけ挿入されていた拓哉の男根が抜けてしまう。
「小夜、動かないで力を抜いて私に身を任せてください、大丈夫です。恐くなんかありませんよ、私にしがみついて下さい……小夜、愛していますよ」
 再び拓哉が小夜の花園に自分の物を添える。
「まっ、待って」
 小夜が思わず再挿入をしようとする拓哉に哀願する、嫌ではないただ先程の痛みと未知なる恐怖が小夜に躊躇いの言葉を口に出させる、拓哉はそんな小夜を優しく抱きしめ耳元に囁く
「小夜、痛いのが嫌なら止めますが、どうします?」
 小夜は、何かを決心したように拓哉にしがみついたまま頷く、そしてさらに拓哉に強くしがみつき目をつむる、拓哉はそんな小夜の両肩を押さえつけるようにしながら、一気に小夜の内へと自分の男根を突き入れる。
「あっ!」
 突然の強引とも言える拓哉の動き、それの動きに小夜は反応する暇もなく貫かれ、花園から流れ出た破瓜の鮮血が、拓哉の物を伝い零れシーツに鮮やかな色を着色した。小夜は拓哉にしがみつき身を裂かれるような痛みに必死に耐え喘ぎながら聞く
「うくぅ!ぐぅ……どうして、優しく、うっ! 優しくしてって言ったのに、痛いのに……」
 小夜の問いに拓哉は答えずに自分の腕を小夜の口に前に持っていき言う。
「噛んで、噛んでいて下さいそして小夜、貴方の痛みを少しでも私に伝えて下さい」
 拓哉は突き入れた男根をゆっくりと小夜の中で動かす。その度に身体を引き裂かれるような痛みが小夜を責めさいなむ、小夜の拓哉と繋がった花園から破瓜の血が、さらに滴り落ちシーツの染みを広げる、そして小夜は差し出された拓哉の腕に歯を立て、必死にその痛みに耐える、拓哉の腕からも血が滲み小夜の唇を紅く染める。
「くうっ、うっくううっ……」
 痛みに耐えながら、拓哉の腕へと歯を立てる小夜の中で何かが起こる、身体を引き裂かれる痛みは相変わらずある。しかしその奥の方に、何か痛みとは別の感覚が湧き上がってくるのが感じられる、それは肉体的な物だけではなく、心の奥底から湧きあがる暖かい安らぐような不思議な感覚であった。
「なんて温かいんだ……」
 拓哉は、挿入した男根を優しく包み込みながら密着してくる。小夜の肉襞の温かい感触に思わず声を漏らす。そして、その感触をもっと感じたいと思う。しかし身体の下で拓哉の腕に歯を立て、苦痛の呻き声を堪えている小夜の姿を見ると、肉体的な快感よりも、そんな小夜のいじらしさの方が愛しくなる。そして小夜の破瓜の苦痛を少しでも和らげるために、腰の動きを止める。
「どうしたんですか? 傷が痛むんですか? それとも強く噛みすぎましたか?」
 不意に止まった拓哉の腰の動きを気にして、噛んでる腕を離して小夜が尋ねる。拓哉はそんな小夜を優しく微笑みながら見る。
「何でもないですよ、小夜があんまり痛そうにしているから、私はこうして小夜を抱きしめて小夜の暖かさを感じられているだけで、充分に満足ですから」
「大丈夫、痛くなんかありません……少ししか、だからもっと動いても我慢できますから、でも……出来たら優しくして下さいねっ拓哉」
 小夜が恥ずかしそうに言う、拓哉は小夜のおでこにくちづけをした後、小夜に促がされるままに再び腰をゆっくりと動かし始める、小夜の中の男根も、それにつけ動き始め小夜の肉壁を刺激する。
「くっ!」
 小夜が小さな声を出す、刺激された肉壁に痛み以外の先程、心の奥底で感じられた感覚が確かな肉の実感を持って感じられた。
 拓哉はそんな小夜の微妙な変化を見逃さなかった。腰の動きが少しだけ荒々しくなる、そして小夜の表情と身体の変化を読み取ろうとするかのように、細心の注意を払いながら小夜の身体を刺激する、深く繋がったまま唇の届く場所の全てにキスの雨を降らせ、舌全体を使い小夜の身体を舐めまわす。そして乳房を手で覆い揉み上げながら、さらに乳首を刺激し執拗に愛撫を繰り返す。
「あんっ!」
 小夜の声に苦痛以外の甘い吐息が洩れる。小夜の内の男根が、微妙な動きをしながら小夜を内からさらに刺激する。小夜は身体が小さくなり身体の全てが、男根を包み込んでいる箇所となり、逆に身体が大きくなり自分の全てが、その箇所となったような気がした。そして突き込まれ、突き動かされている箇所を中心とした感覚が、小夜の全身を覆い尽くすかのように広がり、小夜を初めて感じる快感の中に包み込んで行く……何時しか小夜の全身に汗がしっとりと滲み出てくる、そして小夜の肉壁が拓哉の物をグイグイと締め付けながら蠢き始める。
「こ、これは……」
 今度は逆に拓哉に激しい快楽の波が押し寄せる、突然に締め付けるように蠢き出した小夜の内部、今までリードしていた筈の小夜に、今は逆に自分が良いように嬲られている、もはや熱いと言って良い小夜の中で蠢く肉襞の動きに翻弄されながら、拓哉は自分の男根を小夜の中から引き抜こうとする。
『中で出しては駄目だ』
 理性が命じる思いが、解き放されそうになる自分の精を押え込む、腰を引き小夜の熱くて甘い蜜壷から、男根を引き抜こうとしている拓哉に小夜がしがみつき、腰を密着させ引き抜かれまいとする。
「小夜、何をするですか、腰を離して早く、これ以上我慢が出来ないから」
 拓哉はうろたえ声を出す。しかし小夜はそんな拓哉を無視して、さらに腰と身体を密着させてくる
「拓哉さん……いいんです。膣に、膣で出しても、拓哉さんの事を憶えておいて上げたいから、私が一生憶えていてあげる為にも、だから拓哉さんをください、拓哉さんの熱い思い出を……」
 小夜の言葉に拓哉は激しい衝撃を受ける、そして小夜を見つめて言う。
「いいんですか?」
 小夜は目に透明な涙を溜めながら、拓哉をまっすぐに見つめ頷いて言う。
「もし男の子が出来たら拓哉と名づけるわ、女の子なら恵美と名づけます」
 拓哉は小夜を強く抱きしめたまま小夜の中に自分の熱い精を放つ、そして小夜は拓哉の精と思いを身体の奥深くに優しく受け止める。


                          V


 自分の胸の上で、安心したように寝息を立てている小夜を見ながら拓哉は思う。深い充実感とそれと同じくらいの後悔を
「小夜……」
 小夜の名前を呼ぶが返事は無い、先ほど飲ませたビールに混ぜた睡眠薬が良く効いているようだ。すべてが終り余韻に漂っている時に、小夜に口移しで飲ませて上げたビールの中には、医師から貰っていた睡眠薬を入れて置いたのだ。
「小夜……」
 もう一度名を呼び、髪の毛を優しく撫でる。そして思う小夜を殺そうか? と……そっと小夜の首に手をあて力をこめる……小夜の細い首は柔かく暖かった。
「んっ……」
 小夜が苦しいのか小さな声をだす。拓哉は少し迷ったすえ首から手を離した。
「冗談……そう、これは冗談です」
 誰に言うとなく拓哉は呟く、ただ拓哉には解っていた、冗談ではなく本気で小夜の首を絞め、殺そうとしていたのを……
 今度は、両手で小夜の口と鼻を手で押さえる、拓哉は思う。いまここで小夜を殺せば、小夜の全てが、小夜という存在の全てが永久に自分の物になるのではと、勿論そんな事はないと言うのは、理性では性解っている。しかし小夜に触れ消えた筈の狂気が再び首を擡げるのが解る。
「くっ……んっ、ふぅ」
 苦しそうな小夜の声が漏れ聞こえる。拓哉は口と鼻を押さえている手に、さらに力をこめ小夜を見る。空気を求めるかのような小夜の呻き声が大きくなる……両手にこめられた力は緩まない、小夜の顔色が白く、青褪めていく……後もう少し、数十秒もこうしてれば小夜は窒息死する。
「小夜……」
 小夜を見つける拓哉の顔に狂気の色が浮き出てくる……そして狂気の表情を浮かべながら、拓哉は苦しそうな小夜の顔を見下ろす。ふと拓哉の目に自分の腕に巻かれた包帯が映る。それは小夜が巻いてくれた包帯であった。
「あっ! あっ……うああぁぁ――あぁ―――!」
 拓哉は悲鳴のような叫び声を上げ小夜から飛び退る。
「私は……」
 自分の両手を呆然と見ていた拓哉が、ベッドの上の小夜を泣き出しそうな顔で見る。ベッドの上で眠る小夜の呼吸は、すでに平常に戻っており、スースーと可愛い寝息を再び立て始めている……拓哉はそんな小夜の寝顔を見続ける。
「……」
 無言で小夜を見続けていた拓哉は、やがて小夜が寝ているベッドの近寄ると、裸で寝ている小夜をベッドから優しく抱き上げ部屋から出ていく、そして二十分ほどして部屋に戻ってくると、すっかり身体を洗われて身奇麗になった小夜に、たぶん妹のであろう下着を着せた上、浴衣を着せ直した上で小夜を抱き上げ、再び部屋から出ていく……やがて車の音が聞こえ屋敷から遠ざかっていった。






     余章 「終……または始まり 」へ     第 七 章 「 告白 」

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